ブライダル司会奮闘記③
ブライダルの司会を始めてから8年で320件くらい担当した。このあたりまでは数えていたものの、現在までに何件担当したか把握していない。でもざっと計算すると、少なくとも1,000件は超えているはずだ。
1件1件心を込めて司会しているけれど、正直なところ覚えている新郎新婦や結婚式は、多くはない。それは相手も同じ事。ただ、稀に偶然会って「私、ほんださんに結婚式の司会してもらったんです」と言われる事がある。そういう方に限って、こちらは全く記憶に無く…とても申し訳ない気持ちになる。
でもそんな中でも印象深い新郎新婦や結婚式は、ある。今回はそんな話をしてみよう。
①ハプニング編
私がブライダル司会を始めた頃は、媒酌人がいた。ある披露宴の最中、私が目をやった瞬間…高砂席で媒酌人が座っていた椅子から突然ずり落ちた!一瞬でスタッフに緊張が走る。「何かハプニングが起きたら、司会は安易にコメントせず、見ない振りできる事は見ない振り。担当者に指示を仰いでコメント対応する」と教わっていたけれど、新郎新婦やゲストも気付き見ない振りなんて到底できない。すぐに会場がざわめき、スタッフを始めゲストも媒酌人に駆け寄った。私は何をどう話して良いか分からず、ゲストと同じように驚きハラハラしながら見守った。
司会を始めて最初の大きなハプニング。
ようするに、何もできなかった。ただ、見守る事しかできなかった。
とても長い時間に感じたけれど、今になって思えば、そんなに長い時間ではなかったと思う。媒酌人は気分が悪くなり、我慢できずに椅子からずり落ちた(倒れた)が意識はあり、退席する事になった。自分で立ち上がりスタッフと媒酌人夫人に付き添われて会場を出て行った。
「ご媒酌人様は体調不良によりご夫人と共に退席させて頂きます。重篤な状況ではございませんので、ご安心ください」という主旨のコメントをするよう指示された。その後は媒酌人夫妻不在で披露宴は進み、お開きとなった。救急車を呼んだか定かではないが、後から媒酌人は大事には至らなかったと聞いた。でも、椅子からずり落ちた瞬間の映像は、20年以上経った今でも覚えている。
それから数年後に担当した披露宴では、ゲストの1人が倒れた。ふと気付くと会場の一部がざわついていて、スタッフから状況を知らされる。状況把握せずに安易なコメントをするのは危険だ。広い会場なので新郎新婦はまだ気付いていない。会場の別室で休めば良い状況なのか救急車を呼ぶ状況なのかも分からない。歓談中だったので、そのテーブルの近くに様子を見に行ったら、近くにいたゲストから「なに一緒になって見てるんだ。司会のあんたが状況を説明しろ」と、お叱りを受けた。
結果的に会場スタッフも私と同じ判断で、安易にコメントせずゲストを会場から連れ出し休ませる対応をした。新郎新婦は友人と談笑していて気付かない。けれどこんな時、ご丁寧に新郎新婦に状況を知らせるゲストがいる。何も知らなかった新婦の顔色が曇る。自分達の披露宴での出来事とはいえ、いま知らせる必要があるのか!?判断が難しいところではある。
その他のハプニングで印象に残っているのは、会場の停電だ。中学生くらいの女の子が祝舞を披露している途中、いきなり真っ暗になった。非常灯はついたが当然マイクも使えない。幸い地域の停電ではなく会場のブレーカーが落ちた事が原因だったので復旧したが、突然音が止まり暗くなった瞬間も鮮明に覚えている。奇しくも媒酌人が倒れた時と同じ会場だ。
結婚式も、実はハプニングがつきもの。私が担当した披露宴ではあまり起きなかったけれど、先輩方から聞いた話では新婦のカツラ(和装用の高島田)が外れた事もあったらしい!
司会者として、どんなコメントを出すかケースによって異なるけれど、ハプニングが終わった後はとにかく雰囲気を変えるのが私達の仕事だ。いかに祝福ムードに持っていくか。たとえ歯が浮きそうなコメントでも、司会者が恥ずかしがってはダメ。堂々と語るのである!
堂々と語る…で思い出した事が。披露宴の結びは、キャンドルサービスから新婦の手紙、花束贈呈だった頃。いよいよ新郎新婦のブライダルキャンドル点火が近付いたタイミングで、両親に贈呈する花束が会場に無い!届いていない!という事も数回あった。
もちろん司会者は何事も無いかのように、自然に雰囲気を創りながら「のばす」笑
花束が届くまでの間、もはや自分の世界かと思うぐらいにコメントで繋いだなぁ…。花束が届くのか(用意できるのか)状況が分からない。コメントし続けているので確認もできない。でも繋いでいれば、スタッフがなんとかしてくれる!そんな思いだった。無事に花束が会場に届いた時はホッとしたものだ。
そう言えば、新郎さんが新郎父の挨拶中にどうしても我慢できずにトイレに駆け込み、次が新郎さんの挨拶なので戻るまで繋いだ事もあった。
これから結婚式をする新郎さん、花束贈呈前にトイレに行っておくのがおすすめです笑
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