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【10分で解説】生き方〜人間として一番大切なこと〜

はじめに

「人間は何のために生きているのか」いきなりちょっと重たい話ですが、みなさんはこの問いにすぐ答えることができるでしょうか。
京セラの創業者、そして経営の神様としても知られている稲盛和夫さんが、本書でこの問いに対するご自身の考えを述べています。
豊かなはずなのに、心はどこか満たされない、そんな現代を生きる私たちにとって、稲盛さんの言葉は改めて、自分の人生を見つめ直すきっかけとなるかもしれません。

生きる目的について稲盛さんは「心を高めること、魂を磨くこと」と言っています。
どうしても私たちは、”偉くなりたい””お金がほしい”といったように、地位や名誉、財産を得ることを、生きる目的としてしまいがちですが、稲盛さんは、そのようなものはあの世に持ち越すことができない、あの世にもっていけるのは魂だけだ、と言っています。つまり、生まれた時よりも高い次元の魂を持ってこの世を去ること、それこそが生きる目的だと言っているのです。高い次元の魂というとイメージしにくいかもしれませんが、”正しい生き方をした人生”と言い換えてもいいと思います。

そんな人生を正しく生きるための稲盛さん考え方について、いくつかご紹介いたします。


どのような哲学に基づいて生きていくかで人格が決まる

人の人格は、生まれながらに持っている「性格」と、人生の過程で身につける「哲学」の二つから作られていると稲盛さんは考えています。つまり、哲学という後天性のものを人生の中でどう身につけていくかが、人格を作るのにとても大きく影響するということです。ここでいう哲学とは、自分が人生を生きていく上での指針やポリシーみたいなものだと考えればいいと思います。

稲盛さんの哲学はどのようなものかと言うと、「人間として正しいかどうか」だそうです。具体的には、”嘘をつくな””正直であれ””欲張るな””自分のことばかり考えるな”といったようなもので、子供のころ親や先生から教わったような極めてシンプルなものです。

え?そんなこと?と思った方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、冒頭でも触れたように、私たちはついこのことを忘れ、地位や名誉や財産のために行動をしてしまいがちです。稲盛さんは人生を通じてこの哲学を必死に守ろうと努めてきたそうです。つまり、この誰もが知っている極めてシンプルな行動の積み重ねこそが、自分の人格を作り上げていくというわけです。

素晴らしい人格を持った人は素晴らしい人生に、逆に、人憎み自分だけ得をしようとする人はどんどん悪い人生に向かいます。心の持ちようが、その人の人生そのものになるというわけですね。


考え方のベクトルが人生すべての方向を決める

本書で繰り返し稲盛さんが述べているのが、「人生の方程式」です。
これは、人生や仕事の結果は、考え方×能力×熱意で決まるというものです。
例えば、すごく能力の高い人でも、熱意が足りなければ大きな成果は出ませんし、逆に、能力がそれほどでもなくても、強い熱意があれば大きな成果が出る可能性があるということを表しています。
そして、この「考え方」「能力」「熱意」の中で最も重要なのは「考え方」の部分です。
なぜなら、「能力」や「熱意」は、0からプラス方向に積み上げていくものなのに対して、「考え方」はマイナス方向にも働くからです。
そしてこの方程式はかけ算です。つまり、悪い「考え方」を持っていると、それだけで、結果はマイナスになってしまうのです。まずは「考え方」が正しい方向に向いていること、そうでなければ、どれほど優れた能力や強い熱意を持っていようとも、宝の持ち腐れどころか、大袈裟に言うと犯罪のようにかえって社会に害を成すことにもなりかねないのです。


強い思いが現実になる

人生や仕事で大きな成果を得るにはまず、その土台となる「大きな夢」を描くことが肝心なのだそうです。
自分の人生を、自分の力でしっかりと創造していける人は、かならずその基盤として、大きすぎるくらいの夢、身の丈を超えるような願望を抱いているものです。

もちろんこれは、精神論を説いているのではありません。ああしたい、こうしたいということを強く思い、それを実現させるために、頭の中でシュミレーションを繰り返す。将棋の指し手を何万通りも考えるように、何度も何度もプランを練り直すのです。
そしてそれが習慣になると、夢へ近づくためのヒントが何気ない日常から得られるようになってきます。例えば街を歩いているとき、ぼんやり考えているとき、いつもなら見逃してしまうような出来事でも、強い夢をいつもイメージしている状態だと、そこから重要な情報を抽出できるようになるのです。
木からリンゴが落ちるのを見た時のニュートンのような話ですね。万有引力は強烈な問題意識を常に持っていたニュートンだからこそ発見できたと言えるでしょう。強い夢を持ち続けるのはそれと同じようなことだと言っているのです。

稲盛さんのエピソードとして、何ヶ月もの試行錯誤の末、出来上がってきた製品を見て、そっけなく「これではダメだ」と突き返したことがあるそうです。ユーザが求める仕様を満たしてはいたものの、それまで稲盛さんの頭の中で見えていたものと明らかに違う製品だったからです。結果的にその後何度も試行錯誤を繰り返し、理想の製品を完成させ、大成功させたそうです。

理想を実現するまで努力を惜しまない、それが物事を創造する上で非常に重要であり、義務ですらあると稲盛さんは言い切っています。そして、こうありたいとリアルにイメージできること自体、それを現実にする力が潜在的に備わっているという証拠で、それが実現できないのはまだ試行錯誤が足りないという指標になるわけですね。


人生ドラマを自分でどうプロデュースするか

最後に、本書を読んだ私自身もここは強く意識しなければならないことなのですが、稲盛さんは「知識よりも体得を重視する」と言っています。つまり「知っている」ことと「できる」ことは必ずしもイコールではないということです。行動力の重要性については、近年のビジネス書でも多く書かれていますが、稲盛さんは当時からこのことについて訴えていたのです。

私が個人的に面白い視点だなと思ったのは、人生とはドラマであり、その主人公、監督、脚本の全てを自分自身がこなしているという考え方です。自分の人生ドラマをどうプロデュースするかという視点で考えると、困難な壁にぶつかった時、主人公がカンタンに逃げ出し、そこから何も起こらない平坦なドラマよりも、困難に正面からぶつかり、苦労しながらも最終的には大きな成功を手にする、そんなドラマの方が面白いに決まっていますよね。人生をそういうふうに考えると、自分の人生ドラマのシナリオはもっとおもしろいものでありたいと思いませんか。

この動画では本書の内容のごく一部しか紹介できませんでしたが、一貫して奇を衒ったような内容ではなく、素晴らしい人格を持ち、大きな夢に向かって行動する、そして強い意志でそれを貫き通すことがいかに重要かについて、本人のエピソードを交えながら書かれています。
本書を読んでいると、稲盛さんの目の前に座り、ゆっくり優しい声でご本人から語りかけられているような感覚になりました。ご興味がある方は是非、本書を手に取ってみてください。


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