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【11分で解説】生きている会社、死んでいる会社―「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則

はじめに


最近の日本には「稼ぐ力」を持つ企業は確かに増えているかもしれませんが、いわゆる「GAFA (ガーファ)」のような世界がアッと驚くようなイノベーション企業が日本から生まれているかと言われると、すぐには思いつきませんよね。

本のタイトルが「生きている会社、死んでいる会社」とあるように、この本の著者である遠藤さんは、一貫して会社を生き物として捉えています。会社を私たち人間と同じように老いる生き物だと捉えています。ただ、実際の生命と違って、会社はその老いを食い止めることができ、永遠に生き続けることができるとも言っています。
「生きている会社」とは、会社全体が熱を帯び、新たな創造に向かって社員の心が奮い立っている、そんな会社のことをいいます。
そういう意味では確かにGAFAは、世界のどの会社よりも挑戦をしつづけ新たな価値を創造していますよね。

これを見ているあなたが、もし会社の経営をされている方であれば、自分の会社がイノベーションを起こせるような体質の企業にどうやったらなれるのかが本書によって明らかになります。また、経営者の方でなくとも自分の部署やチームといった単位でもこの考え方は十分使える知識だと思いますので、どうぞ最後までお付き合いください。

会社のあるべき姿


経済学の教科書を読めば、会社の目的は利益の最大化だと書かれているかもしれません。しかし実際に利益の追求は目的ではなく会社の大前提です。会社は、社会に必要とされることが重要で、それを実現するために「価値の創造をし続けること」が求められます。つまり、「創造」こそが会社の真の目的と言うことです。

ドラッガーの「企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である。」も、それと同じことを言っているわけですね。

もしあなたが会社の創業者であれば、「デーワン」つまり、創業1日目のことを思い出してみてください。目を輝かせ、挑戦することに燃え、力がみなぎり、とてつもなく創造的な状態ではなかったですか?それこそ、生きている企業にとって、とても大事な状態です。

しかし、それを維持し続けるのはとても難しいことです。なぜなら会社は老化するからです。会社が誕生するときの活気は、時とともに失われていき、「安住」と「傲慢」という老廃物がたまっていきます。”現状維持でいい”、”リスクに挑戦しなくてもなんとかなる”、”自分がやらなくても誰かがやってくれる”、そんな状態です。それによって、創造よりも徐々に管理に軸足を移さざるを得なくなり、創造どころか、管理-抑制-停滞-閉塞というネガティブサイクルに陥ってしまうのです。これが死んでいる会社の特徴です。

一方、生きている会社は、挑戦-実践-創造-代謝というポジティブサイクルが回っています。代謝というのはあまりイメージが湧かないかもしれませんが、著者が強く語っているのが、この新陳代謝の部分です。
経営における新陳代謝とは、「捨てる」「やめる」「入れ替える」を実行することです。
事業そのものもそうですし、組織や業務であっても、さらにはリーダーであっても、価値のないものを残しておかず、思い切って見限ること、それこそが経営における新陳代謝です。もちろん、古いから全てが悪いわけでも、赤字だから全てがダメなわけでもなく、古いからこそ価値のあるものも、未来を予感させる健全な赤字もあります。問題なのは凡庸なものです。それを戦略的に手放すことができるかどうか。それが生きている会社でありつづけるための鍵になります。


「生きている会社」になるために必要なもの


生きている会社でありつづけるためには、ポジティブサイクルが回っている必要があると言いましたが、そもそも「生きている会社」になるための条件とはなんでしょうか。

それは、熱、理、情、この3つの条件が整うことです。この3つの条件が重なり合うことで、会社は活性化し、生きている状態になります。その結果生まれるのが利、つまり利益です。会社は利益を最大化させなければいけないというのなら、まずはこの3つの条件を整え、生きている会社にすることが先だということです。

「熱」とは、ほとばしる情熱のことです。何かを創造するときには大きな活力やエネルギーが必要で、そのためには情熱がなければ何もはじまりません。「理」とは、理詰めのことです。いくら熱が大きく、やる気に満ち溢れていても、気持ちだけでは仕事はできません。常に理性的で、考え抜くことが必要です。3つ目の「情」とは、情緒のことです。社長1人で情熱をもち、考え抜いたところで、誰もついてこなければ大きな力にはなりません。社員の情に働きかけ、心を奮い立たせ、やりがいや生きがいを感じさせることができれば、とてつもなく大きな力になります。このように、熱を帯び、理を探究し、情に満ち溢れている、これが生きている会社の条件なのです。


「生きている会社」をつくる基本原則


ここまでで、生きている会社とはどういうものか、なんとなくわかりましたか。では、最後に、生きている会社を作るために具体的にどうすればいいのかを説明します。本書ではそのための実践すべき10の基本原則が書かれていますが、ここではその中から、3つをピックアップしてご紹介します。

一つ目は、「ありたい姿をぶち上げる」です。
生きている会社に代謝が必要ということはさっきも言った通りですが、そこから創造へと繋がらなければ意味がありません。創造の第一歩は理想を語ることです。経営者やリーダーがありたい姿を熱く語り、理想を掲げることから全ては始まります。今できるか、できないかは関係がなく、どうしたらできるかを真剣に考え行動し続けること。その姿が徐々に社員に伝搬し、気持ちがひとつになっていきます。そこから創造が始まるのです。まずは、理想を高々と掲げましょう。

二つ目は、「管理を最小化する」です。
経営にとって管理は必要なものですが、本部からあれ出せこれ出せと言われ、疲弊している現場を見たことがありませんか。管理業務は放っておくと肥大化し、現場を圧迫します。管理は一銭の利益も生み出しませんから、管理コストに投資するくらいなら、社員へ投資し、自主性、自発性の高い社員を育て、自主管理を基本とするべきなのです。そして、管理に従事してきた社員を価値創造の担い手である現場を支援する役割にシフトさせることで、さらに価値創造が加速するという好循環を生むことができます。何でもかんでも管理しなければ気がすまないという体質から卒業しましょう。

三つ目は「リスペクトを忘れない」です。
働き方改革関連法の同一労働同一賃金制度がスタートしていますが、こうした動きを、単なる制度変更と捉えてはいけません。根底にあるのは、人に対する考え方の変化です。お金ではなく人を会社の中心に据え直そうとしているのです。つまり、人はコストではなく、価値を生み出すバリューだと捉えるのです。そこで働くすべての人が主役であり、その現場が元気でなければなりません。その根底に必要なのがリスペクトです。価値を生み出す人たちに対する、会社からのリスペクトこそが社員にプライドを生み、それを胸にイキイキとした仕事ができるのです。「生きている会社」になろうと心の底から思うのであれば、リスペクトを忘れてはいけません。

さて、ここでは3つ挙げましたが、共通することは、経営トップやリーダーだけは生きている会社は作れないということです。働く全ての人たちが能動的、積極的に関与し、当事者として機能しなければなりません。「生きている会社」はみんなで作り上げるものなのです。


最後に生き残るのは人を大事にする心豊かな会社


これまで多くのビジネス書を読んできましたが、どちらかというと経済的な側面から、どのように利益を上げていくのかという視点で書かれているものが多いのに対して、本書は、「会社は生き物」という独自の視点から会社を捉えているところが非常に興味深かったです。最終的には人間臭くて泥臭さが残る、ある意味アナログな部分が残っている会社の方が、輝くことができるというのが著者の考えです。

最近の会社はシステム化が急速に進み、合理的かどうかが判断の基準となっているように思っていましたし、気合と根性はもう古いというのは一般的な認識にもなっていると思います。しかしそんな今だからこそ、一度立ち止まって、会社の中心である「人」の心を再認識し、それを充足させることが、最終的に目的を達成する最も合理的な道であるという点に気づかされました。

確かに、多くのビジネス書では人の重要性について書かれていますが、その資産をうまく活用できている事例が少ないというのが実態ではないでしょうか。本書ではこの動画で紹介しきれなかった、それらを実現するための具体的な方法論がもっと多く書かれていますので、是非本書を手にとってみてください。
それでは。

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