人の顔が覚えられない人の世界

こんなことがあった。

家に帰ると、母が図書館戦争の映画を見ていた。画面の中にはちょっと気難しそうなイケメンがいて、ツンツンした演技をしていた。

「この人誰?」

母は驚いて言った。

「あんたうそやろ。ひらパー兄さんやで」

母がなぜ驚いたかと言うと、私はつい先日、「岡田准一はジャニーズなのにひらパー兄さんやってくれてえらいなあ」と言っていたところだったのだ。

「岡田准一」という名前と、何をやっているかは覚えていても、顔はほとんど覚えていないのである。自分でもびっくりした。

このように、私は人の顔をほとんど覚えていない。親しい人はギリギリ覚えているのだが、芸能人になると「なんとなくこんな顔だったような」という領域である。


そんな私が最近うれしいのは、スタッフに名札を付ける会社が増えていることだ。

知らないオフィスに行くと、その場で名前と顔を一致させなければならない。これが至難の業で、どうしても相手の名前を呼べず、「あの」とか「すみません」と前置きしてごまかしてしまう。

しかし名札があると、そういう心配をせずに済む。別に発達障害の人に配慮したからというわけではなさそうだが、この風潮は続いてほしいと思っている。

面接に行って最高だなと思ったのは、似顔絵つきの名刺をくれたところだった。これなら名刺にいちいち特徴をメモする手間が省ける。最高に親切な会社だと思った。ここなら上手くやっていけるに違いない。

その会社、落ちたけど。