わら人形の話
私は、指先潔癖症。
指先が濡れるのが大嫌い。
理由は分からない。
もしかしたら幼少期に私の身に何かが起きたのかも知れない。
だからフライドチキンを手で掴んで食べるCMなどは、ちと考えられない。
あんなギトギトするものを手で掴むなんて。
ただの水でも嫌だ。
ちょっといいレストランに行くとフィンガーボールがありますでしょ。
そんないいレストランに行ったことないけど。
マナー本に載ってた。
私みたいな人間からすれば、そのフィンガーボール...…
ダメなんだ...… 指を濡らしたくないんだ...…
もしかしたら潔癖症なのかな。
そう思った事もあったけど、その疑問は秒で消えた。
なぜなら、公園の地べたに仰向けに寝転ぶのは平気だから。
あんな、何がうじゃうじゃいるか分からない所に潔癖症の人は寝転べないと思う。
仕事だと平気だし。
清掃のアルバイトをしていた頃、さすがにトイレ掃除では手袋を付けるけれども、ヌメヌメオゲェ~な排水口に素手を突っ込んでたからね。害虫駆除も平気だったし。
だから、決して潔癖症ではないんだな。
妙なのは、手全体が濡れるのは平気だという事。
あくまで「指先だけ」濡れるのがNGなのだ。
ヘンでしょ?
そういえば、♪おさ~るさ~んだよ~♪のアイアイ。
彼らはかなり特徴的な手を持っており、中指だけが異常に細くて長い。
理由は多々あり、細い指を木の隙間に突っ込んでエサを獲るほかに、鼻をほじるためであったりする。
さらにその細い指を瞼の中に差し込んで眼球の掃除までするそうだ。たぶん目に良くない。やめた方が良いと思う...…
彼らにとって指先はとてつもなく重要な役割を果たしているのだ。
私にとっても人並みに指先は大切な物であるが、ちょっと過敏かなと思う。
きっと幼少期ではなく前世に何かがあったのだと察する。
私がまだサラリーマンだった頃、新橋のガード下で占いをしてもらった事がある。
同僚と二人で飲んだ帰りの事。
当時から私はたいして飲めず、同僚だけがベロンベロンに酔っぱらっていた。
占いやろ~ぜぇ~ と同僚。
それまで占いなるものに興味が全くなかったが、まぁいいかと頼む事にした。
確か手相占いだったと思う。(ちょっと記憶が曖昧)
他に客がいなかったからかどうかは分からないけれども、結構長くかかったと思う。色んな話をした。
同僚が先に診て貰い、あなたの前世は〇〇。と言われた。
ちょっと待て。手相占いって前世を診るやつだっけ?という疑問はさておき、そんな流れになった。
ネタにしておきながら誠に申し訳ないが、同僚の前世が何だったか覚えていない。
きっと大した事なかったんだと思う。
私も多少酔っていた事もあったし、なによりも結論が面白くとも何ともなかったから全く記憶に残っていないのだろう。
それともうひとつ、〇〇の部分の記憶が飛んだのには大きな理由がある。
続いて診て貰った私にその占い師はこう言い放ったのだ。
あなたの前世は「わら人形」です と。
今思えば占い師は、私の手相を診る前から(こいつはわら人形でいいや。冗談通じそうだし。)と結論を決めていたのだと思う。そうに違いない。
世界人口がまだ60億人だった当時、前世がわら人形なのは絶対に世界で私ひとりだと思った。
そんな事を言い放った占い師の顔を、私は30年を経た今もはっきりと覚えている。冗談は通じないぞ。3~4000円は払ったと思うぞ。
変な帽子を被っていたから髪型は分からないが、高精度のモンタージュを作成できる次元で詳細に覚えている。
あまりに衝撃過ぎる私の前世に、同僚の結果など忘れてしまったのだ。
次の日の朝礼で話をした事も覚えている。
みんなバカうけしていたが、半分は愛想笑いだったはずだ。
一緒に診てもらった同僚も初めて聞いた風な顔をしてバカうけしており、(お前は昨夜、一緒にいただろ。)と思いながら話していた。
で、何の話だっけ?
あぁ、そうだ指先潔癖症の原因についてだった。
わからぬ。そんな事は。
ともかく、私の指先は濡れたくないのだ。
ちなみにエレベーターのボタンを押した時に、色々な人の混合手油でにゅるっ。と滑るのなんかは失神レベルで嫌だ。
すかさず自分のズボンで拭いちゃう。
ズボンが汚染されるのは平気なのだ。
なお、指先潔癖症なる症状はないそうです。
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