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「人類を裏切った男~THE REAL ANTHONY FAUCI(上巻) 」⑦ ポイント抜き出し 7/7~公衆衛生より優先される製薬業界の利益

 2021年11月9日に米国で発売された本書は、書店に置かれず、様々な妨害を受けながらもミリオンセラーとなり、この日本語版も販売妨害を避けるためか、当初はAmazonでは流通させず、経営科学出版からの直売のみになっているようだが、現在はAmazonで買うことができるようになっている。

 日本語版は1000ページを超えるために3巻に分けられた。

 本書はその上巻「巨大製薬会社の共謀と医療の終焉」だ。

 極めて重要な情報が満載で、要旨を紹介して終わりでは余りにも勿体ないので、お伝えしたい内容を列記する。

 今回は最後の「第2章 公衆衛生より優先される製薬業界の利益」。

 いかにして製薬業界とアンソニー・ファウチが利益を共有する関係を構築したか?

 非常に短い章だが、内容が濃いのでかなりの割合をご紹介する。

第2章 公衆衛生より優先される製薬業界の利益

・アンソニー・ファウチは博士は50年間、絶大な権力を行使して、製薬業界の爆発的な成長を実現させ、規制当局および公衆衛生政策をじわじわと蝕むような影響力を強化してきた。50年間のキャリアの中で、ファウチ博士は製薬会社と国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とその職員の間の複雑な金銭面の絡み合いを育み、NIAIDは製薬業界と一体化した子会社になった。

・NIAIDでの優位な立場を利用して、ファウチ博士は60億ドルの年間予算を使用し、多数の公的機関や影響力の大きい民間の団体を支配し、管理するところとなった。そうした機関や団体を以下に挙げておこう。米国疾病対策センター(CCD)、食品医薬品局(FDA)、保健福祉省HHS)、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、米国国防総省、ホワイトハウス、世界保健機関(WHO)、国際連合(UN)、私服を肥やしたクリントン財団やゲイツ財団、そして英国のウェルカム・トラスト。

・巨大な助成金予算により、ファウチ博士には様々なことが可能になった。キャリアを築くことも壊すことも、大学の研究センターを充実させることも懲罰することも、科学雑誌を操作することも、研究の主題やプロトコルだけでなく、世界中の科学的研究の成果に手心を加えることもできた。

・2005年以来、国防高等研究計画局(DARPA)は、ファウチ博士が自由に使える年間予算にさらに17億ドルを注ぎ込み、不審な資金を洗浄して、合法性が疑われるような生物兵器を開発しようとしている。

・ファウチ博士は、製薬会社や大規模な助成金供与者(もちろん、世界最大のワクチン資金の提供者ビル・ゲイツも含まれる)と緊密に協力しながら、一貫して彼の恐るべき力を行使してきた。製薬業界のパラダイムを脅かすような研究をしている科学者には資金供与せず、嫌がらせをし、黙らせ、免許を取り消し、破滅させた。そして、彼を支持する科学者に報酬を与えてきた。

・ファウチ博士は、特許で保護される新薬やワクチンの開発や振興には好意的だが、ジェネリック薬、栄養、ビタミン、自然薬、機能性医学、統合医療に対しては妨害したり信用を失墜させたりするように行動する。

・アメリカの健康問題を扱う帝王としてファウチ博士は50年間、アメリカ国民に高額な医薬品を購入させてきた。
アメリカはどの富裕国と比較しても不健康な人が多い。薬の副作用は、がんや心臓発作に次いで、アメリカでの死因のトップ4に入る。

NIAIDー製薬業界の手下

・ファウチ博士の管理下で、NIAIDは製薬業界と腐敗した金銭関係を結んだ。ファウチ博士の支配するNIAIDは、科学を推進させる機関ではなく、まるで製薬会社のようだ。

・アンソニー・ファウチは、なれ合いのシステムと取引の文化を興し、NIAIDはビッグファーマと分かちがたく結合した付属物になった。NIAIDと製薬会社の間には光さえ入り込めない。製薬会社がどこで終わり、NIAIDがどこから始まるかを示せないのだ。

・NIAIDの研究室にいる職員は、謝礼金で収入を補っている。製薬会社のセミナーに参加したり、製薬会社の担当者に新薬の研究の進捗状況に関する内部情報をNIAIDのパイプラインを通じて説明したり謝礼金をもらう。ファウチ博士の手下たちの定常業務は、NIAIDの研究室で製薬会社のために新薬開発プロジェクトを遂行することと、新薬の臨床試験を実施する契約を取ってくることだ。

・ファウチ博士の医薬品開発官民複合体は、数々の腐敗した矛盾に満ちている。ほとんどのアメリカ国民は、例えば、製薬会社がファウチ博士と彼の従業員、およびNIAID自体に非常に高額な特許権使用料を日常的に支払っていると知って驚くであろう。

・ここで、なぜ特許権使用料システムが彼らに利するのかについて説明しよう。
 米国の納税者は、続々と発生するアレルギー性疾患や自己免疫疾患の原因を調査するものと期待して、彼らに給与を払う。だが、そうした、研究の代わりに、ファウチ博士は60億ドルの予算の大部分を、新薬の研究開発に注ぎ込んでいる。彼はしばしばNIAID独自の研究室で、有望な化合物の構造研究といった初期の研究に資金提供することからプロセスを開始し、その後、臨床試験を展開する。このとき、約1300人の学術的な「研究を統括」する同窓生を優先的に活用する。彼らは、海外の研究所の他、大学付属の研究センターや研修病院でヒトを対象とした試験を実施する。NIAIDの資金提供を受けた研究者らが見込みのありそうな新薬を開発した後、NIAIDはHHSの技術移転局(OTT)を通じて、知的財産の一部または全部を民間製薬会社に譲渡する。 大学とその研究統括者は、特許権の共有と特許権使用料の分配を要求できる。つまり、ファウチ博士には確実に学術界から特許権使用料が入るというわけだ。
 製品が市販されれば、製薬会社は特許権使用料を支払う。 特許権使用料は、医薬品販売からの利益をNIAIDおよびその製品に携わったNIAID職員に注ぎ込まれる非公式のスキーム(合法化されたキックバックの形式)を通じて支払われる。 公表されていないHHSの方針の下で秘密裏に、ファウチ博士と彼のNIAIDの部下らは、納税者の金で開発を支援した薬から、個人のポケットに年間最大15万ドルも入っていると見られている。

 HHSは、少なくとも4400件の特許権者だ。

・2020年10月22日、米国政府説明責任局(GAO) は、 「生物医学研究―NIHはその知的財産のライセンスに関する詳細情報を公開する必要がある」というタイトルの報告書を公開した。 この報告書の作成者は、NIHが「1991年以来、特許権使用料からの収入で最大20億ドルを受け取った。3つのライセンスから、FDAとNIHそれぞれに1億ドル以上がもたらされた」としている。
 しかし、デビッド・マーティン博士の報告では、 NIHがGAOの調査員に開示したOTTのライセンス記録は透明性が欠けている疑いがあるという。 NIHの特許には数十億ドルの収益み出すような活性化合物が130以上あるはずだが、GAOのレポートでは欠失の多さが目立っていた。

・NIAIDの助成金により、2655件の特許取得と出願がなされ、そのうちHHSが特許権者となっているものは95件のみだ。ファウチ博士は、特許のほとんどを大学に割り当てた。そのため、アメリカの医大や医学部、そして米国で最も影響力のある医師たちにとって極めて有益な特許権使用料と、ファウチ博士と彼の政策との結びつきまではたどれるのだが、最終的な商業的受益者が誰なのかは完全に不透明になっている。

・胡散臭い話なのだが、NIAIDが生んだ特許の最大の権者はシガ・テクノロジーズ (NASDAQでの銘柄名: SIGA)という企業だ。世間では、NIAIDと緊密な提携関係にあると認識されているものの、GAOはレポート中でSIGAには一切言及していない。
 SIGAのCEOフィリップ・L・ゴメス博士は、NIAIDでファウチ博士のために9年間仕事をした。その仕事はファウチ博士が承認したもので、HIV、 SARS、エボラウイルス病、ウエストナイル熱、およびインフルエンザと戦うワクチンプログラムを展開した後、市販するというベンチャー事業だ。NIAIDは明らかにSIGAの技術開発に寄与しており、同社はNIAIDからの収益を報告しているが、NIHへの特許権使用料やそのプログラムへの商業的支払いは報告していない。

・アンソニー・ファウチ博士は、米国内の8件の特許に発明者として記載されている。 ところが、ファウチ博士がインターロイキン2の「発明」に関する特許権使用料の徴収を認めてきた事実があるにもかかわらず、 NIAID、NIH、 およびGAOは、レポートに特許が有効な医薬品のいずれも記載していない。

・さらにGAOは、ギリアド・サイエンシズ社とヤンセンファーマ (ジョンソン・エンド・ジョンソンの一部門)の事例があるにもかかわらず、NIAIDの特許を1件も報告していない。両社は、NIAIDが資金提供した技術によって直接もたらされた売上から、年間200億ドル以上を得ているという明確な証拠があるのだ。 GAOのレポートには、ヤンセンのベルケイドに関する2つの特許が含まれていない。これらは長年にわたり年間2億8000万ドルを超える売上を誇った。

・GAOレポートでは合衆国法典第3編第410条10および合衆国法典第35編第202条に違反するエスカータルモキシティ、ケピバンスの特許に関する言及も省略されている。 GAOレポートにはファウチ博士が関与したモデルナ製ワクチンをはじめ、24件の特許のうち少なくとも13件は、出自がNIHであることに議論の余地がないにもかかわらず、政府の利益を開示しない違法行為を犯している。

10ドルの薬を5000ドルで売る

・ギリアド社は、新型コロナウイルス感染症の大流行の際に、レムデシビルを1回の投与あたり3300~5000ドルで販売した。 ギリアド社がレムデシビルを作るための原材料は10ドルもかからないのに。

・メディケイドは、法律により、FDAが承認したすべての薬を保険の対象としなければならず、納税者はまたしても費用を負担することになる。
連邦保健機関が認める新型コロナウイルス感染症の治療において、異質な特許薬と安価なジェネリック薬で扱いが異なるのは、ファウチ博士が昔から高額な特許薬に偏執してきたことの表れだ。公衆衛生よりも製薬業界の多額の利益を優先してきたのである。

・HHSの元職員で、権利擁護団体 Public Citizen (パブリック・シチズン)のディレクターであるマイケル・カローム博士によれば、「規制当局と規制される業界という構図の代わりに、今はパートナーシップが結ばれている。(中略)その関係のせいで、HHSの視点は公衆衛生から、 業界寄りに傾いた」という。 ファウチ博士は、この腐敗を強力に推し進めた立役者なのである。

・ファウチ博士のリーダーシップの下で、こうしたパートナーシップが商業面に特化したために、科学を発展させるというNIAIDの使命は二の次になった。NIAIDでは、公衆衛生を裏切った者に製薬会社が尻尾を振っている。NIAIDの中核をなす責務は、壊滅的に広がっている慢性アレルギー疾患や自己免疫疾患の原因究明だが、ファウチ博士はこれをほとんど行っていない。
これらの疾患に苦しむ子どもたちの割合は、1984年に彼がNIAIDを担当した当時は12・8%だったが、彼の任期中に50%にまで急増した。

医療詐欺師ファウチ博士

・NIHでの過去50年間、ファウチ博士は、国民の健康とアメリカの民主主義をビッグファーマが計画的に解体するうえで、主導権を握ってきた。 製薬会社と手を携えて連邦規制の障壁を乗り越え、NIHとNIAIDをワクチンとそれに類する製品などの特許医薬品の開発、販促活動、マーケティングのためだけを目的とする機関に変容させた。

・ファウチ博士は、公衆衛生ではなく、ビッグファーマの利益になるように、国民に診察と治療法を受けさせることしか考えていないようで、自分の痕跡を策略で隠そうとしている。

・最近では、ファウチ博士の半生記を綴ったチャールズ・オルトレブが、 ファウチ博士の経歴と病的な虚言癖を反社会的詐欺師のバーニー・マドフやチャールズ・ポンジになぞらえている。 また、作家のJ・B・ハンドリーは、ファウチ博士を「インチキ薬売り」、「ラスプーチンの上を行く医療詐欺師」と呼んだ。経済学者で作家のピーター・ナバロ前国家通商会議(現・通商製造業政策局)委員長は、2021年4月に全米ネットワークのテレビのインタビューで「ファウチはソシオパス(訳注・精神障害が反社会的なふるまいとして表出する人)で嘘つきだ」と評している。

・白衣、社会的な肩書き、そして医療カルテルの協力者たちからの賞が所狭しと並ぶ書棚のおかげで、ファウチ博士は中立で、私欲のない科学者で、 そして公衆衛生へのあくなき献身に駆り立てられた無私の公僕としての仮面をかぶっていられる。
だが、ファウチ博士は実際には公衆衛生に携わっていない。 あらゆる指標から見て、彼の50年の執権はアメリカ国民の健康にとって破滅的であった。しかし、ビジネスマンとしての成功は限りないものだった。

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