【漫才】最強の矛

A はいどーもー○○でーす。

B どーもー。

A よろしくお願いしまーす。

B お願いしまーす。

A お願いしますはいいんだよ!

B なんだ、なにいきなりキレてるんですか?

A いや腹立つんだよ。腹立ってんだよ。

B 何かあったんですか。

A いやこないだウーバーイーツ頼んだんだよ。

B ああ、それで頼んだ奴が来なかったと。

A いやちげーよ早まるな。

B え?

A 最後まで聞けよ。

B いや聞くよ。なにがあったの。

A そんで、まぁ待ってたんだよ。

B ウーバーイーツをね。

A そしたらまあ、我慢できなくなって。

B 何を?

A 空腹。

B は?

A そんで袋ラーメンがあったからそれ作って。

B いやちょっと待て何やってんの。

A まあ今日は贅沢に卵も入れちゃおうかなとか言って。

B いやウーバーイーツ頼んだんだろ?

A 刻んだネギも入れようとか言って。

B 勝手に盛り上がってるけど。ウーバーイーツくるよ?

A で、出来上がり〜ようやく食べれる〜、はぁ〜お腹すいたーってなって。

B 作り終わっちゃった。

A そしたら「ピンポーン」で。

B 来た。

A 「ウーバーイーツでーす」はぁぁぁぁ!!!!????

B はぁぁじゃねえだろ!!

A いやどういうこと??ご飯が、2つ...。

B お前、頭おかしいのか?

A どうすればいいの?こういう時?

B ちなみに何頼んだんだよ。

A タピオカミルクティー。

B じゃあなんとかなるだろ!!どっちも食えよ!!

A どっちもいける!?

B 行けるわ!ていうか腹減ってタピオカミルクティー頼んでたの!?タピオカミルクティーを過信し過ぎじゃない?

A どっちも食べればよかったのか。

B 結局どうしたのそれは。

A いや、だからマジで腹立ってさ。

B はぁ?

A こんなタイミングで持ってくんじゃねえって言って追い返したよ。

B やばー。こいつマジでやばい。

A いや、金は払いましたよ。

B むしろ怖いよ。

A まあ、そんなことがあって腹立ってんだよ。このままじゃ虫の居所が悪くて気が済まないからさ、なんかストレス解消する方法ない?

B なんでまだ治ってないんだよ。怖いなぁ。でも丁度いいわ。俺、丁度いい物持ってるから、お前に売ってあげるわ。

A は?金取るの?くれよ。

B いやいや。これはタダであげられるほど安いもんじゃないよ。

A え?なに?気になること言うじゃねーか。

B 俺ね、「なんでも貫く矛」を手に入れたのよ。

A 「なんでも貫く矛」?え、それってアレじゃない?「矛盾」って言葉の元になった話に出てくる奴じゃない?

B そうそう。昔「なんでも貫く矛」と、「どんな攻撃も防ぐ盾」を売ってる商人がいて、その「なんでも貫く矛」で「どんな攻撃も防ぐ盾」を突いたらどうなるんだ?って聞かれて、売り文句が破綻しちゃうっていう話の奴だよ。

A 韓非子の奴ね。

B え?缶ジュース?

A 韓非子だよチープな聞き間違いしてんじゃねえよ。韓非子っていう本の中に出てくる話なんだよ。

B うん、それは本当にどうでもいいんだけど。

A 知識を否定するね〜。まいいや、続けて。

B で、その「なんでも貫く矛」を持ってるから、それを五万で売ってあげるよって話。

A いやいやいや。え?五万で買えるの?...っていうツッコミもできるんだけど、まず嘘じゃん。

B え?

A いや、だからその「なんでも貫く矛」ってのは元ネタの時点で存在が否定されてるわけよ。それをお前が持ってるわけないじゃん。

B いやいや。元の話はたしかに破綻してたよ。でも俺、「どんな攻撃も防ぐ盾」は持ってないから。

A え?

B だから、「どんな攻撃も防ぐ盾」は多分無いよ。でも、ていうことは、「なんでも貫く矛」は存在するってことでしょ?

A ……うー...ん!?いやいやちょっと待って。

B だからお前は、俺が「なんでも貫く矛」を持ってることを否定できないんだよ。

A え、じゃあ取り敢えず現物を見せてよ。

B ここにはないよ。

A え?

B 家にある。

A は?セコ。ズルじゃん。

B ズルじゃないよ家にあるって言ってるじゃん。

A いや確かめようがないからそれは。

B ウチくればいいじゃん。

A 行きたいよ漫才中でなければな!!

B …

A 漫才中でなければ真っ先に行くわ!コンビニも寄らずに!真っ直ぐ!!

B まぁ、漫才中だったのが運の尽きってことだな。

A 何が言いたいの?

B だから取り敢えず五万払ってよ。そしたらあげるから。

A あーそう。でも本当になんでも貫くんだな?だったらストレス解消になりそうだから買うわ。

B マジで?

A ストレス解消どころの騒ぎじゃないけどね本来なら。

B OK。じゃあ取り敢えず使い方を説明するね。

A 使い方?そんなの突くだけだろ。

B まあ基本的にはね。

A 基本以外があるの?

B あるよ。

A なに。

B まずね、こう、両手でもつじゃん。

A うん。

B で、こうやって前に向かって「うんっ!!」ってやると、なんでも貫けます。

A あー、全く想像通りの使い方ですけど?これ基本じゃない?

B これは基本。

A 基本だったの?てっきり基本以外の使い方の話するのかと思ってた。

B いやまずは基本でしょ。しっかり基本を提示してから、そこからズラすのがお笑いじゃない。

A え、お笑い論語ってる?やめた方がいいよ今は特に。

B お笑いはフリとオチだから。まず基本形を見せてフッとかないと。

A いややめてー。今は仕組みをバラさないで。

B で、さっきと違って、まず両手でもつじゃん。

A はいはい。

B それで、前に向かって「んっ」。

A あ、さっきより全然弱い!腰が入ってない!これは威力無さそうだぞ。

B これでなんでも貫けるから。

A これも!?さっきよりパワーダウンしてるようにしか見えなかったけど??

B パワーとかじゃないから。

A え、パワーとかじゃない?

B パワーいらない。とにかくもう、片手でほら。

A あーもう適当だ。

B これでもなんでも貫ける。

A マジで!?本当に!?

B 別名、初志貫徹だから。

A 貫くの意味が違くない?物体を貫いて欲しいんだけど。

B 物体を初志貫徹。

A いや意味不明だから。いやいや、でもそれが本当ならめっちゃいいじゃん。力いらないんでしょ?疲れてる時も適当にフッてやればなんでも貫けちゃうんだ。

B そう。だから仕事から帰ってきて家のドア開けるのも面倒臭いなーってとき、これ使えば余裕でぶっ壊せるから。

A あーまぁ絶対そんなことしないけど極論そうだね。

B どう?買う?

A うーん。まあでもよくよく考えたら五万で買うほど使わないかもな。

B え、なにが?

A いや、よく考えたらストレス解消に矛持っててもしょうがないというか。

B え?じゃあどうすんの。

A うん。まあとりあえず、お前はその矛で自分の喉元貫いて死ね!!

B ひどすぎるだろ!

A どうもありがとうございましたー!


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