1/3の純情な本条 2019-2
今年の「未来」5月号~8月号までの掲載歌を、まとめてちょこっとずつご紹介してみます。それと、他のところに投稿したものも。
水しぶきを池の悲鳴と気づかずに僕らは小石を投げてはしゃいだ/本条恵
「未来」2019年5月号
歌会のお題が「池」だったのだけど、もうちょっと作れそうだな……って増産して、月詠に。
この作り方、楽しいし一気にガッと進むので、ときどきやります。(そして4首くらいで打ち止めになってふりだしに戻ったりします。)
言うなれば陸をゆけないものが船それでいて陸を目指すのが船/本条恵
「未来」2019年6月号
そして翌月は「船」。なんかこのへん水っぽい歌が続きます。
5・6月号は、題詠で1首ずつバラバラの歌(ストーリーとしてつながってるわけじゃない歌)を並べたつもり……だけど、やはり「似たようなテーマの歌が10首」あると「なんらかの物語」っぽくなってしまって、「3首目と4首目のつながりがわからない」みたいなことを言われたりもします。そのあたり、どうすれば読者を迷わせずにすむんだろう、と最近少し考えています。
試しに、5月号には「十の池」というタイトルをつけてみたのだけど、機能しているかどうかは謎。
手すさびに繰る時刻表に「復旧の目処は立たない」路線いくつか/本条恵
「未来」2019年7月号
春休みに、青春18きっぷを使って子供たちと日帰り旅行をしたときの歌。今回、子供たちは直接的には歌に登場しません。
2011年の東日本大震災で被害を受けた一部路線がまだ復旧していなかったので、仙台まではいけませんでした。牛たん……ずんだシェイク……。
東北以外でも、私の、実家……ではないのですが、夏休みに立ち寄る級の縁をもつ土地が、芸備線(2018年の豪雨以降、一部運休)沿線だったり、日高本線(2015年の豪雨以降、一部運休)沿線だったりして、そのあたりのことを、もっと踏み込んで歌うこともできるのかもしれません。
三女は花を四女は頰を五女は眉を六女は腕を持たぬマトリョシカ/本条恵
「未来」2019年8月号
8月は「あるマトリョシカの物語」。今回はストーリー仕立てというか、一続きの連作です。
移動中の車内で、あいみょんの「マトリョーシカ」が流れてて、そういえばハチ(米津玄師)にも「マトリョシカ」って曲があったなぁ、NICO Touches the Wallsの曲にも「マトリョーシカ」ってあったし……などと考えているうちに、自分でも作ってみたくなったので作りました。安易!
Twitterに報は駆けめぐる「『珈琲館くすの樹』、この春閉まるんだって」/本条恵
「未来」2019年8月号
もいっちょ「未来」8月号。「今月の一人」というコーナーを担当させていただきました。「ありがとう「くすの樹」」、というタイトルで9首。
育児中、「子供たちが園&学校に通うようになったら、俺、ここに通うんだ……」って心の支えにしていたお店のひとつ。通えたのは一年くらいだったし、おぜぜの都合で「今日はちょっと贅沢しちゃうぞ、優雅に歌集よんじゃうぞ」または「作業マジ終わらんのでブースターを!」ってときだけだったけど、感謝しかない。
「ジンギスカンうメェ~」と叫ぶ看板の羊よ羊、旅に出ようか/本条恵
小冊子「フワクタンカ79」
1979年生まれ(40歳=不惑!)のひとたちでつくる小冊子「フワクタンカ79」に参加させていただきました。5月の「文学フリマ東京」が初出かな。たぶんまた在庫があると思うので、ご興味をもたれた方はお早めに!
通販や、取り扱い店舗の詳細については、山本夏子さんのツイートをご覧ください。
https://twitter.com/yamamotonatsuko/status/1173023302161334273
ということで、「春の羊はどこまでも」というタイトルで7首。未年だからね。
憧れの歌人さんたちとご一緒できたり、後日「日々のクオリア」に取り上げていただいたり、ひゃーって感じです。
ユニクロはなかっただろうもし蛇がイヴに林檎を勧めなければ
/本条恵
「短歌研究」詠草 2019年5月号
アダムとイヴをテーマに5首送って、4首掲載。「短歌研究」に3首以上載ったのは初めてなので感慨深いです。
せっかくなので、普段とはちがうテイストのをいろいろ作ってみてごりごり選歌してもらおう!と開き直ったあたりの歌です。開き直り、大事かもしれない。
五月町は日本のどこかにあるらしい五月の沼は温くて深い
/本条恵
「短歌研究」詠草 2019年6月号
「五」で5首送って、2首掲載。この一首は、『3月のライオン』(羽海野チカ)を意識して作りました(三月町と六月町が舞台の漫画です)。
バス路には赤白交互の花水木おしまいだけが赤白白白/本条恵
「短歌研究」詠草 2019年7月号
バスに乗ったときの諸々を5首送って、5首掲載(準特選)。うれしい。
蚊を殺す煙と死を悼む煙が墓場の空にとけあってゆく/本条恵
「短歌研究」詠草 2019年8月号
いつもは避けている「死」をテーマに5首送って、1首掲載。うん、やっぱ「死」は避けよう(余程のことがない限り)。あと、「蚊を殺す」と「死を悼む」は逆にした方が良いな、と送ったあとに思いました。
そのような感じです。