明治通り

店仕舞いされることのなかった騒々しさ
当時と同じ、目を伏せて池袋を振り切っても
鼻腔に届く光にもう無邪気さは感じない
15年前の関係性のままのスタバと無印
キルギスの1500年に値する勲章

雑司が谷の胸のざわつきは皺を増やして
勢いを減らしていない古本屋に戸惑う
時間は北と南、どちらへ走っているのか

学習院下を踏切がおりたうちにすれ違う
若い外国の男の子がぶら下げているのは炊飯器
待っている間横に並ぶ彼女に見えたおばさんは他人

神田川の黒い艶が昔の親友のように現れて
あなたの15年の間にわたしが150年の航海をして
キブラを向きつつ中国に滞在した話をしようと思いながら
着いてしまった西早稲田はより一層よそよそしい

ぶっきらぼうに、朴訥に東新宿のあとで
軟らかい大ぶりの点滅に迎え入れられる
媚薬にかきあつめられた群衆は憩いの錯覚

なんの意味も持たない長さの人生が
ここに無残に散りばめられた米粒の身体
それでも今宵の銀河は夜空にヤスリを持たせて
わたしの数ミリを削りとった

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