WCSC31二次予選 1回戦 vsQugiy

簡単な自戦記形式でWCSC31二次予選の将棋を振り返っていきます。

HoneyWaffleは第29回の選手権の結果により一次予選はシード、二次予選は9位での登場でした。

Qugiyは今年が初出場で、一次予選を6勝2敗の3位で突破しました。なお、二次予選は5勝3敗1分けの8位と、初出場ながら決勝リーグに進出し、決勝リーグでは3勝3敗1分けで4位でした。将棋ソフトの根幹にあたる思考エンジン部分を独自に実装し、それによって独創賞も受賞され、すごいとしか言えないです。

※大会後、アピール文書の差し替えがあるかもしれないのでチーム一覧のリンクを貼っておきます。

ツイート内のリンクから棋譜を開いて、動かしながらご覧いただければ。

ダイレクト向かい飛車

将棋の内容に入りますが、先手がQugiy、後手がHoneyWaffleです。

26歩34歩76歩に88角成と、一手損角換わりの出だしで、10手目に22飛と回り、ダイレクト向かい飛車にしました。HoneyWaffleは以前からダイレクト向かい飛車の研究を定跡にしており、46手目の83銀までノータイムです。

今回優勝したelmoの滝澤さんは休みの日とかずっと定跡をやっていたという話でしたが、定跡作りなら私もずっとやってきていたので、優勝おめでとうという気持ちではありますが複雑な心境です。

ダイレクト向かい飛車については過去に少しだけ書いていました。

コンピュータ将棋的に、まず初形の先手番での評価値がざっくり50~100ですが、一手損角換わり(4手目88角成)をすると先手から見て100~200になります。そこから飛車を振ると先手から見て200~300になります。つまりダイレクト向かい飛車には、二重に(居飛車から見た評価値上の)マイナスの補正がかかっています。

しかし穏便に進めていると、本譜のようにお互いに様子見をして手出しができないような状態になります。先手の評価値が高いにも関わらず、です。コンピュータの相居飛車の将棋であれば、プラス150もあれば優勢、200もあれば必勝という感覚がありますが、120手目くらいまでそういった膠着状態となっています。

この定跡の狙いとしては、その評価値300くらいは本当なんですか?打開できますか?こっちは千日手でもいいですけど?という態度で、早い段階で雑に打開してこようものなら、練り上げた定跡手順で討ち取ろうという罠をいくつか仕掛けています。

この将棋の場合、後手だけ一方的に定跡によるノータイム指しで時間を稼いでおり、46手目の時点で持ち時間に4分40秒の差を作りました。持ち時間は15分の1手5秒フィッシャーなので結構効いているはずです。

ここまでは作戦通りですが、お互いに陣形の組み換えをしているうちに、70手台に入ってHoneyWaffleの持ち時間の方が少なくなってきてしまいました。定跡を抜けた後というのは相手が想定外の手を指してきたということなので、そこでは時間を多く使う必要があります。そのため時間は早めに使い切るような設定にしているわけですが、その影響が悪い方に出てしまいました。

3筋の歩交換を何度もやっているうちはよかったのですが、125手目の85歩でとうとう戦いが始まりました。この時点で、HoneyWaffleは逆に持ち時間が2分40秒少ない状況になってしまっています。

今日、水匠2で1手30秒(2億ノード程度)の棋譜解析をかけたところ、156手目の45歩が敗着(本当なのか怪しい評価値250→本当の評価値600)のようで、27香成としておけばよかったようです。(本譜では169手目45飛とその歩を取られていますが、替えて27香成であれば取れない)

今大会は320手ルール(320手以内に詰まさないと、どんなに必勝でも引き分け)ですが、惜しくもあと1手逃げ切ればという319手目の頭金で詰み、HoneyWaffleの負けとなりました。

この将棋については遠山六段に解説いただいています。

この動画で見ると、逃げ切れるかどうかのスリルが味わえます。あと私も少しだけしゃべっています。Qugiyの森さんのお話もあります。

正直もう少し軽く振り返るつもりでしたが異様に長くなりました。まだまだ書き足りないところもありますが。2回戦以降の将棋(特に勝った将棋)を早くやりたいので、このあたりで失礼します。

長文におつきあいいただき、ありがとうございました。


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