WCSC29 2次予選 自戦記その1 やねうら王戦

将棋の内容を、現場のエピソードを交えて紹介していきます。

1回戦 やねうら王戦

無敗で1次予選を勝ち抜いてきた、期待の新人チームですね。最終的にはご存知のとおり優勝するわけですが。前年の8位チームが、1次予選の1位チームに初戦で当たるのは事前に決まっていたはずで、もう少し1次予選のうちに偵察しておけよというのはありました。

2日目の2次予選はコンピュータ将棋協会(CSA)によるニコニコ実験放送が行われましたが、さすが期待の新人の注目局ということか、解説していただいています。(0:57:30あたりから20分くらい、実験放送ということで現場で試行錯誤しつつなので音質等が普段のニコ生よりちょっと粗いようです)

HoneyWaffleの先手番で初手56歩からの中飛車となりました。定跡作りでは角道を閉じた三間飛車と四間飛車がメインで、中飛車にはあまり時間をかけられなかった印象です。5手目まで定跡で、7手目55歩は17秒の考慮です。中飛車相手に62銀を上がらない、85歩まで決めてしまう、角道をあっさり開ける、あたりが逆に珍しかったのかもしれません。いきなり角交換して馬を作られる順などは定跡を作っていた記憶があります。

今大会、AWS EC2インスタンスを使う陣営では、m5.24xlargeという種類のものが比較的人気でしたが、やねうら王は違うものを使っていて、NPS性能(Nodes Per Second、1秒あたりに読む局面数)はこちらが少し上でした。

やねうら王は2次予選の途中から種類を変えたそうで、つまりはやねうら王の優勝は私のおかげと言っても過言ではないでしょう。(まあ実際のところ、黙っていてもやねさんならそのうちすぐに対応したでしょうが)

後日、上記の解説を見たわけですが、将棋の内容のおもしろさが倍増していました。現場では、開始してしばらくは特に動きがないので、上記の数字の話をしたり、他の将棋を見て回ったりしていました。

水色のグラフのところ、上向きが先手よし、下向きが後手よしです。急降下する前まではバランスが取れたまま進んでいることがわかります。評価値的には89手目の52竜あたりからマイナスになっていました。部分部分は鮮やかな攻防の応酬なのですが、解説のとおり丁寧に受けられて悪くなっています。

今大会から、以前の256手から、320手で決着がつかない場合に引き分けになるよう変更されました。とてもそこまでは粘れず、172手で後手のやねうら王の勝ちとなりました。棋譜はこちらから見ることができます。


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