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日曜日。親と子の昼下がり

ある風景を見たときに感じたこと。ちょっとした日常のお話です。

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日曜日の昼過ぎ。
用事が終わってぽかんと時間が空いたので、ちょっと顔を出しに実家に行った。
リビングのドアを開けると、父と母と珍獣(弟)がいた。

実家にはいつも何かしらのおやつを持っていくところ、この日は道中にピンとくるおやつが見つからなかったので、手ぶらで帰った。
最近またちょっと大きくなった(体重的な意味で)珍獣は、私が帰ってきたのに気づくと、笑顔で近づいてきたので

「お、珍しくお出迎えか?」
と、ちょっと嬉しさを感じていた私の横を通り過ぎ、リュックを物色。特に何もないことがわかるとスッと定位置のソファーに戻っていった。
手ぶらでごめん。

日曜日は父がお昼ごはんを作るので、出来上がるのを待っている間に、しばし母とお茶タイム。
芋けんぴを出してくれた。このあとすぐお昼ご飯食べるんだけどなあ。

芋けんぴをボリボリしながら最近買った健康食品の話とか、掃除機が壊れた話とか、日常の出来事を喋っていると、出かけていた妹が帰ってきた。片手にはマックの袋。
妹は自分のお昼ごはんは自分で調達するスタイルなので、ひと足お先にチキンフィレを食べ始めた。なんて自由なんだろう。

横にあるマックのポテトに手を出したくなるのを堪えているところに、待望の父チャーハンがやってきた。

チャーハンは直接父の定番料理の一つで、玉ねぎと人参と豚肉と卵がいい感じに入っている。私が作るチャーハンより断然美味い。
そのチャーハンをこれでもかというくらい自分のお皿に盛る珍獣を制しながら、自らの食べる分を確保する父母私。

テレビのニュースについてやんややんや言いながら、チャーハンとビールをいただく。
父は生粋の江戸っ子なのでたまになんて言ったのか聞き取れないことがある。
カタカナがあまり得意ではないので、GOTOトラベルのことを、ずっと「ゴッツートラベル」と言っている。

食べ終わってからは家族5人、各々の時間。
母はお皿を片付け、妹は翌日のお弁当のおかずを作り始め、父はマッサージチェアに座って大学ラグビーを観ている。
私はスマホで調べ物をし、珍獣はソファーに横たわりiPad片手にYoutubeのカバの映像に夢中。

お皿洗いを終えた母が、ソファーに腰掛けた。
なにやらスマホを操作している。
どうやら晩ごはんのおかずを考えているらしい。

隣でYoutubeを見ている珍獣に向かって
「これ煮込みハンバーグだって。あ、こっちの肉団子も美味しそう、ね!」
と、ずーっと喋っている。
知的障害のある珍獣は、スムーズに会話をすることができないので、母の問いかけに文章で答えることはなく、スマートフォンの画面を見て
「ハンバーグ」
と、料理名をポツリと呼応する。

私は何気なくその姿を後ろから見ていた。

なんでもない日常なのだけど、なんだか無性に愛おしく見えて、不思議な気持ちになった。

私が両親と話すときのような、問いかけたり答えたりの断続的な言葉のやりとりはなくても、ちゃんと「親子の会話」だった。

自力でできることは少ない29歳の弟だけど、ちゃんと家族の中で元気に生きている「息子」なんだなあと、変なタイミングで、勝手にしみじみとしてしまった。

西日が入り始めた昼下がりのリビング。

なんだかいいなあと、思わず写真に収めた。

夕方私は帰宅し、母が晩ごはんのおかずを何に決めたのかはわからないけれど、今日も夕食時には、勢いよくご飯を頬張る珍獣と、家族が食卓を囲んでいる。

久しぶりに賑やかな食卓で、夕飯を一緒に食べたくなったので、また近々、ひょこっと実家に顔を出そうと思う。

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