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「町田くんの世界」感想 他者への愛情はひとり残らず

色々なジュニアの舞台に行っているが、個人的に川﨑が関東ジュニアで最も良い芝居をする存在のひとりだと思っている。そんな彼が東宝ミュージカル主演、演出はウォーリー木下、脚本はピンク地底人3号、音楽は和田俊輔。こんなに嬉しい話はない。

運動と勉強は苦手だが、人たらしの町田くんと孤独を抱えた猪原さんとの関係性の変化を描いている今作。前半2/3は人を愛する町田くんが人々に影響を与え、町田くんの思いやりが連鎖している様子が描かれている。モデルの氷室くんがバレンタインにもらったチョコレートを捨てた時、町田くんは「人の気持ちがわからないから自分の気持ちが分からないんだ」と話し、疲れたサラリーマンも自分を大切にしてくれないことを嘆いているが、他人を大切にしていないことを電車の中で会った町田くんを見て気づく。他人を愛することは自分を愛することで、自分を愛することは他人を愛することなのだろう。

町田くんは優しいが、優しいだけで根本的な問題は解決していない。猪原さんの両親は不仲なままだし、西野くんに彼女はできないし、叔母さんに子供はできないし、先生も結婚相手が見つかるわけではない。優しさは問題の特効薬になり得ないのだ。それでも優しさがもたらす「この人と一緒にいると嬉しい気持ちになる」という精神的な和らぎは誰にでも与えられるものである。西野くんに女の子を紹介したり、叔母さんに不妊治療の支援をすることなど、直接問題解決の支援をすることもできるが、それは全員に与えることはできない。しかし、全員に優しくすることはできるし、その優しさは連鎖していく。そんな町田くんの持つ優しさを観劇しているこちらも受け取ることができる、思いやりに満ちた作品になっていた。

現実世界では優しさが人を傷付けることもある。町田くんが実際に存在して、あそこまで人に好かれるような人間になっていたかは分からない。それでも舞台上にいる町田くんが嫌味を帯びていないのは演じていた川﨑皇輝の力量が大きいだろう。それは彼が普段から21人という前代未聞の大所帯をまとめている(こう言われたくないと知った上であえて表現するが)“プロアイドル”だからではない。アイドルとして彼が放つ善性とは全く異なる、町田くんとしての善性を纏っていたように感じる。少年忍者のリーダーとしての川﨑皇輝ではなく町田一というフィクションの存在として人に優しくするから町田くんが持つ眩しいまでの善性に嫌悪を抱かないのだと思った。
今作は町田くんはずっと町田くんのままで、彼をめぐって周りの人が変化していく様子をずっと描いているが、最後のシーンで猪原さんへの気持ちに気づいた時に初めて町田くんの心境が変化する。その時、これまで一定のペースで演じていた川﨑が、セットを駆け巡りながら町田くんの心境をドラマチックに描写する姿は観客の心を強く動かすし、この「町田くんの世界」が映像作品ではなく舞台作品である意味を強く示しているように感じる。久しぶりにここまで“舞台演劇が好きだ”と思える作品に出会えた。

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ぼちぼち舞台演劇を見ているが、多分私は緩急の着いた芝居が好きなんだと思う。役の心境に応じて観客の集中を掴んだり離したりできる人が好みだ。私が一番好きなアイドルの今野大輝はこれがかなり得意な人だと認識しているが、川﨑皇輝もそのタイプのような気がする。言われてみればDREAM BOYSの川﨑も兄と一緒に楽しげなシーンから病院のシーンにかけてはかなり熱量の傾斜がついているような気がする。まぁ、ドリボの今野さんの役は特になにも心境の変化がないのでずっとフワフワしていますが。そういえば大東もけっこうこういうタイプだ。大東はもう少し激情形と言える気がするが。実は今野と川﨑は同期であるが正反対のアイドルなので、意外な共通点にホクホクしたりした。

劇伴が本当にめちゃくちゃ良かったな、、、当たり前だけど、、、、出ているキャストも歌が本当にうまくて良かった。

私的に川﨑皇輝は“リア恋枠”なので、最初は川﨑皇輝萌え萌え劇場だったが、作品が良すぎると萌えるような余裕がない。作品が良すぎて萌えられない舞台、最近だと中島裕翔の「ひげよ、さらば」くらいしか経験していないな。あれもめっちゃ良かったな、、、

自分の周りを見ていると今野大輝のオタクで川﨑皇輝が刺さる人が一定いるように感じる、おそらく逆は全く存在しないのを含めてかなり面白いと思った。それだけ川﨑皇輝の魅力が普遍的とも言えるが、見た目から性格まで全てが真逆の存在のアイドルのオタクをしている人にまで良いと思われるのはすごいなと思う。

え〜〜〜〜〜〜〜〜本当にめっちゃ良かった〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!ひ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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