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NIKEが進めるWeb3の旅。「.Swoosh」の現在地を探る

生成AIの盛り上がりや、AppleによるVision Proの発表などこの3ヶ月も非常に様々なトピックが連日メディアを騒がせてきました。その一方で、以前より人々の話題から遠ざかってしまっている雰囲気のNFT界隈において、着々と取り組みを進めているのが“NIKE”が手掛ける.Swooshです。

まだbeta版としてその登録を制限している.Swoosh ID(メンバーシップNFT)の発行数は37万に迫る規模になっていました。3月末時点では32万ほどだったので3ヶ月で5万アカウントほどが増えているようです。(90日で5万人 ≒ 1日あたり555人が新規登録!)

.Swooshの発行数(6/21時点)

今回は、この4月から6月にかけてNIKEが発表した以下の二点についてお届けしたいと思います。本日の内容を理解する上では、立ち上げから4月までの動きをまとめたこちらの記事をぜひご覧ください。

  1. Our Force 1 (OF1)プロジェクトの最新動向

  2. 新たなパートナーシップ(EAスポーツ、FORTNITE)

共創プロジェクト:Our Force1の最新動向

OF1は、.Swooshコミュニティに参加するメンバーが過去のAir Force1シリーズの中から選んだもの、また、コンテストで選ばれたコミュニティメンバー4名によって新たに作成された作品(厳密にはYour Force 1という取り組みですがややこしいので割愛)を加えた、コミュニティによるAir Force1コレクションのキュレーションに取り組むプロジェクトです。

早速、4月から現在までの動きを時系列で見ていきたいと思います。

4月19日:デジタルポスターのエアドロップ

この日、NIKEは、一部の.Swooshユーザーに「デジタルポスター」のエアドロップを開始しました。

この「デジタルポスター」を受け取ったユーザーは、他のユーザーよりも少し早く、2日ほど早く、先行アクセスできると発表され、誰が受け取るのかザワつきました。

結果的に、Twitterでの発表では106,453アカウント、およそ.Swooshメンバーの1/3に対してOF1のデジタルポスターをエアドロップしたようです。

また、この時点で、後日販売されるNFTはホルダーが「新しい方法で自分を表現する」ために使用できる3Dデータも提供され、将来的には特別なフィジカルアイテムや体験などのユーティリティが追加される可能性があると伝えられました。

4月20日:特定店舗でOF1の物理ポスターの提供を発表

2022年、.Swooshリリース直後に開催した最初の.Swooshセッションに協力してくれた12の地域・店舗で、.Swoosh IDを見せると、OF1の物理的なポスターを配布することを発表

NIKEは近年、メンバーシッププログラムを強化しており、熱狂的なファンがどのエリアに多いのかも把握し、それに応じてメンバー限定の店舗「NIKE LIVE」など、新たな店舗フォーマットの展開なども行っています。
推測になりますが、これらの地域・店舗も、こうしたNIKEの熱狂的なファンが多いエリアを中心に選ばれているのではないでしょうか。

また、.Swooshは「スニーカー」にまつわる取り組みが中心のため、NIKEが2015年にリリースしたスニーカーに特化したアプリ”SNKRS”との連動も非常に強いです。実際に、.Swooshの取り組みを紹介する.Swoosh SessionもSNKRSアプリ上で実施されています。

4月25日:リリース日やOF1コレクションの公開

具体的な発売日や金額、OF1コレクションの画像などが続々と発表されました。(一部情報はそれ以前からも発表されていましたが)

5月8日:発売!のはずが・・・

エアドロップからおよそ3週間経った5月8日、ついに発売日を迎えます。
ですが、何かしらのトラブルがあったようで発売開始が1週間ほど延期されることが発表されました。

そして翌日には、インスタライブで今後のタイムラインについての説明が行われました。

5月13日:二次流通のためのマーケットプレイスの存在

延期された販売日に向けて追加のOF1コレクションの情報などを公開する傍ら、ユーザーからの問いかけに答える形で、今後数ヶ月ほどの間に独自のマ
ーケットプレイスをリリース予定であることを発表しました。


現状はだいぶ厳選して.Swooshメンバーを登録している印象があるので、どれぐらい二次流通に回るのか、転売ヤーがいるのか、気になるところです。

5月15日:いざ発売!

ついに2度目のチャレンジ。予定通り販売は開始されましたが、アクセスが殺到したせいか、一部のユーザーは 「Bad Gateway」とページにアクセスできないというトラブルが。
そして、テクニカルイシューはなかなか解決することができず、結果的にデジタルポスターを保有するメンバーのみが購入できるファーストアクセスの期間を1日延長し、5月17日までとすることを発表しました。(当然、玉突き的に一般販売も後ろ倒しへ)

2度目のドラブルということもあり、今回はすぐにTwitter上でスペースを開催し、ユーザーと直接対話する姿勢を示しました。NFTに限らないですが、コミュニティメンバーとの対話を疎かにすることで大きな批判や離反が起きやすい中で、即座にこの対応を取ったのは大きかったのではないかと。

結果的に、ファーストアクセスの期間は5月19日まで、当初2日間の予定だったものが5日間に延長されました。

5月24日:ついに一般販売へ

ファーストアクセスから遅れること5日、5月24日に他の.Swooshメンバーも購入が可能になりました。この日も、ミントプロセスが予想よりも長く時間がかかるといった声が上がりましたが、ファーストアクセスに比べると大きなトラブルもなく進んだようです。

ちなみに、一人当たり何セット買ったと思いますか?

気になる答えを、アンケートで公開しています。
その結果はなんと、4割近くのメンバーが上限となる4セットを購入した、というものでした。3セット買った人は極端に少ないので試しに1〜2個買うか、思い切って目一杯買うか、そのどちらかが多い印象です。

そして、初日の結果を見ると、5.5万以上のセットが、3万人以上のメンバーによって購入されました。ファーストアクセスの対象外だったメンバーが約20万人と考えると、15%程度のメンバーが購入したという感じでしょうか。

最終的には5.3万人のメンバーが、9.7万セットを購入したことが報告されています。1セットが19.82ドルなので、およそ192万ドル≒2.7億円ほどの売り上げとなりました。

その後の発表で、売れ残ったOF1コレクションのうち、1,982セットはNIKEのウォレットに送付し、今後開催されるコンテストの景品やギブアウェイ企画用に保管すること、また残りの7,000セットは今後.Swooshがbeta版から一般向けに拡大する際の販売分として確保しておくことが運営から告知されました。

ちなみに、NIKEの業績に与えるインパクトを試算してみると

NIKEブランドの売上(FY2022)
・年間:444億ドル(≒6.3兆円)
・1日当たり:173億円

IR資料より。1ドル=142円で計算

という感じなので、利益率が高いにせよ、2.7億円という規模はNIKEの規模においては、まだ微々たるものという感じでしょうか。

6月16日:リビール・パーティー!

販売されたOF1コレクションのリビールがこの日に行われました。
ユーザーはリビールしないこともできますが、NFTのユーティリティを利用するためにはリビールが必要になるというアナウンスがされています。

そしてこのリビールとともに、.Swooshのサイト上でOF1コレクションのギャラリーがついに公開されました。

Twitterの.Swooshアカウントより

こうして、.Swooshとして初となるNFTコレクションの販売は一旦終了することとなりました。次なるコレクション、マーケットプレイスの開設はいつになるのでしょうか。今年中に次なるコレクションが出るでしょうか。

さて、次は少し時間が前後しますが、新しいパートナーシップについて。

新たなパートナシップ:.Swooshの次なる挑戦

6月1日:次なる大きなニュースとは?

OF1コレクションの販売がひと段落し始めた6月1日、次なる大きなニュースが発表されることがTwitter上で告知されました。

そして、その数時間後、EAスポーツとのコラボレーションが発表されました。具体的な内容は数ヶ月後に発表するという前置きで、あまり多くは語られていませんが、プレスリリースの内容を二点ほどご紹介します。

この取り組みは、スポーツとエンターテインメントの世界で最も有名な2つの企業が協力し、NIKEの新しいデジタルコミュニティ体験である.SWOOSHのメンバーとEA SPORTSのファンが、プレイを通じて自分のスタイルを表現するための新しい方法を提供するもの

NIKEとEA SPORTSの新たなパートナーシップは、EA SPORTSのエコシステムの中で、新たな没入型体験を構築し、まったく新しいレベルのカスタマイズを解放することを目指します。EA SPORTSとNIKEは、今後のEA SPORTSのタイトルにおいて、.SWOOSHのバーチャルクリエイションを利用できるようにする予定です

EAは2021年ごろからNFTの活用に前向きであることが報じられてきましたが、その後具体的な動きは発表されていなかったと思うので、NFTの具体的な活用を示すだけでなく、NIKEとコラボして行うことは驚きがありました。

一方のNIKEも2020年前後にeスポーツチームとの提携など、ゲーム領域への取り組みも行っていましたが、近年は影を潜めていた印象です。

世界的にゲーム人口は引き続き拡大している状況でもあるので、当時の文脈と関係あるかは定かではありませんが、若年層へのマーケティングという観点も含めたゲーム領域へのアプローチを再び強化するのか、気になるところです。

6月20日:今度はあの人気ゲームとコラボ

EAスポーツとのコラボレーションを発表してからわずか3週間弱、今度はEpic Gamesが手掛ける人気タイトルFortniteとのコラボレーションを発表しました。

この取り組みは.Swooshとのコラボということで、NFTなどトークン化されたデジタルアイテムの活用に期待が集まりましたが、現時点ではNFTを活用する予定はないと言われています。

では、一体何をするコラボなのか?

<Air Maxをテーマにしたスニーカーハント>

  1. Airphoriaという島をFortnite上に構築し、その島の中でユーザーはAir Maxの聖杯を取り戻すことに挑戦します。

  2. この島を10分以上プレイすると、6月28日以降にバックアクセサリー Air Max 1'86を入手することができます。

  3. また、Fortnite上のアイテムショップにおいてAirieやMaxxed Out MaxなどのAirphoriaアイテムが、NIKEのECサイトNike.comではコラボ限定のコレクションが発売されています

<アカウント連携によるアチーブメント獲得>

  1. Epic GamesのアカウントとNIKEアカウントを連携させることで.Swooshのアチーブメントをゲット

  2. このアチーブメントを保有する.Swooshメンバーは将来的に.Swoosh上で発売されるAir Maxのバーチャルコレクションのファーストアクセスの権利を手に入れることができる

NIKEはRoblox上にもNIKE Landを構築したり、若年層が好むエンターテイメントとのコラボも非常にうまくやっていると思います。実際に、米国の調査会社が実施した10代が好むブランド調査において、アパレルとフットウェアの両部門でNIKEが圧倒的な1位を獲得しています。

Piper Sandler社の調査より

また、詳細や規約を読んでいるわけではないので推測ですが、今回のアカウント連携によって、匿名化などの加工はしながらも、相互のファン・ユーザーの重なりやその特徴など、マーケティングのための顧客分析にも活用されるのではないでしょうか。

長くなりましたが、この3ヶ月の間だけでも非常に多くの取り組みがありました。まだまだ事業の規模からすると小さなポーションですが、ここからどのように取り組みを大きく、深くしていくのか、引き続きウォッチしたいと思います!

余談ですが、.Swooshもリリース当初はWeb3という表現を用いていましたが、最近はNFTに限らず、Web3という表現もNIKEは使わなくなってきたので、このタイトルもそろそろ変えたほうがいいでしょうか?

ご意見やコメントあればお気軽にご記載ください。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

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