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独自トークン、DAOを取り入れ、Web3時代の人材マーケットプレイスを目指す「Braintrust」

本記事は過去に「Block Post」で取り上げたものとなり、Honest株式会社 久野亮平と、余頃沙貴(よごろ さき)との共同制作です。(昨年作成した記事のため、一部情報は古い可能性がある点はご了承ください)

はじめに

今回は、Web3時代の人材マッチングプラットフォーム「Braintrust(ブレイントラスト)」について深堀りします。Braintrustは、2021年9月にCoinbaseに上場したことで注目されているサービスです。

昨年2022年5月の暗号通貨のチャート急落をきっかけに、「冬の時代突入」とも言われているクリプト・Web3界隈。Web3を起点としたサービス創出はまだまだ時間がかかるだろうと、懐疑的な言説も増えている今、トークンエコノミーやDAOなどWeb3要素を取り入れながら、新しい事業モデル構築に取り組むケーススタディとしてご紹介します。

”Ownership Economy”をビジョンに掲げるBraintrustがアップデートするのは、人材マーケットプレイスのビジネスモデル。そのサービスの仕組みとBraintrust DAOについて、3回に渡って紹介していきます。まずはBraintrustの概要とそのプラットフォームの仕組みについて深堀りしてみましょう。

すでに6万人の求職者が利用する、分散型タレントプラットフォーム

Braintrustは、企業とフリーランスをつなぐ人材プラットフォーム。Upwork(日本国内におけるランサーズやクラウドワークス)と近く、売り手(タレント)と買い手(企業)をつなぐマーケットプレイス型のビジネスモデルです。2020年にACMEやBlockchangeから約33.5億円(2,500万ドル *1)を調達。その後自社トークン $BTRST を発行しており、2021年9月16日にCoinbaseに上場したことで目にした方も多いのではないかと思います。
設立されたのは2018年5月。Adam Jackson氏 と Gabriel Luna-Ostaseski氏の2人によって創業されました。比較的新しいサービスですが、2022年8月時点で実際にサービスを利用している求職者のユーザーが6.4万人、2021年12月時点から約2倍に増えており、人材プラットフォームとして急成長しています *2。2021年12月時点で、プラットフォーム上の累計流通総額は約115億円(8,544万ドル)を超えているそうです。

プロジェクト規模が1,000万円を超える、ハイクラス人材領域にフォーカス

BraintrustのWebサイトを訪れてまず驚くのが、見たことのある企業ロゴの数々。NASAやNIKE、ネスレなどなど。グローバルの一流企業が実際に利用先として挙げられています。先程比較対象としてUpworkを出しましたが、Braintrustはターゲットをハイクラス人材にフォーカスしており、これらのサービスとは差別化しています。
実際に求人を見るとデザイナーやエンジニア、プロダクトマネジャーなどのデジタル人材が多く、大企業のDXや新規事業関連プロジェクトの人材需要を捉えているのだと思われます。実際にBraintrustのプロジェクト規模は79,170ドル(日本円で1,093万円)、約7ヶ月(212日)が平均となっています *3。
マーケットプレイス型であるBraintrustは、マッチング時に企業側から手数料を10%取っています。それでも上記のような企業がBraintrustを利用するメリットは、求職者とのマッチングのスピード、手数料の大幅カット、そしてBraintrustコミュニティに集まる有能なフリーランサーの質が挙げられます。
従来ハイクラス人材はエージェントやコンサルタントなどの中間業者を介して採用するケースが多い領域です。このような従来の採用手法だと、人材マッチングに1〜3ヶ月かかるのが普通。ただBrainTrustの場合、マッチングの速度は48時間という数字が出ています。またスピーディーな採用だけではなく、手数料10%というモデルにより従来と比較してコストが50〜75%カットできるそうです *4。さらにユーザーの質についても、本記事の後半で触れる「リファラー」の存在や、現時点ではWeb3型プラットフォームに集まるのはアーリーアダプター層であることで担保できていると言えます。

Web2.0モデルのアンチテーゼ。タレント手数料0%

企業にとっては人材の質やコストメリットがある一方で、フリーランス(以下、タレント)の人材にとっての魅力とは何か。ここがサービスの根本部分となりますが、Braintrustはタレントサイドからは一切の手数料を取らない、つまり手数料0%であることを最大の特徴としています。

企業であるクライアントからは、契約時にプロジェクト総額の10%を手数料として取得する一方で、タレントサイドからは一切手数料を取っていません。そのため仕事を探すタレントサイドにとっては、大手企業の単価の高いプロジェクトに参加でき、かつ収益も100%そのまま懐に入れることができる魅力的な設計になっています。

“Owenership Economy”の実現を目指す

Braintrustも強調していますが、この手数料0%モデルがWeb2.0型のマーケットプレイスと最も異なる点です。
従来のマーケットプレイスビジネスでは、創業者や投資家等のステークホルダーが利益を追求し、投資リターンを求める以上、双方のユーザーから手数料を取らざるを得ませんでした。その結果、(初期段階はユーザー獲得のために手数料を取らないケースもありますが)双方から20〜40%の手数料を取っているケースが多く、Uberのような搾取構造を生んでしまうのだと、Braintrustの共同創業者であるAdamとGabrielは話しています *5。
創業者の2人は、この価格決定権をはじめとしたオーナーシップが投資家等の外部のステークホルダーにあることを問題視しており、Braintrustについてはオーナーシップをユーザー、つまりコミュニティに取り戻すことを目指しています。これを彼らは”Owenership Economy”と呼んでいます。
実はこのAdamとGabrielの2人、もともとWeb2.0型マーケットプレイスでのベテランでもあります。特にAdamはこれまでECや中古車販売、遠隔医療と複数のマッチングプラットフォームのシリアルアントレプレナー。実際に自ら手掛けるなかで、利用ユーザーではなく、投資家や創業者に利益が生まれるモデルに疑問を持ち、人材領域で新たなモデルにチャレンジすることにしたと話しています *6。
以上が、Braintrustのサービス概要でした。次回はBraintrustにおける、トークンエコノミーやマーケットプレイスのビジネスモデルについて解説していきます!
*1 ドルと円レートは、134円で計算。2022/08/11時点
*2 https://www.theblock.co/linked/126938/web3-job-platform-braintrust-raises-100-million-in-private-token-sale
*3https://info.app.usebraintrust.com/
*4 https://coinmarketcap.com/alexandria/article/what-is-braintrust-brtrst
*5 https://www.notboring.co/p/braintrust-fighting-capitalism-with
*6 https://mirror.xyz/web3b.eth/9vEpiB1K8Da1j4YSTeYoDixkBNid4VlhzM_5SUOtSxc

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