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LVMHグループが進めるNFTの旅。「トレジャー・トランク」を紐解く

こんにちは。今回は(実は?)デジタル投資を積極的に行なっているLVMHグループ、その中でも中核となるLouis VuittonブランドのNFTの取り組みについてご紹介したいと思います。


本論に入る前に少しだけ脱線して、「最近NFTってどうなの?」と言う疑問について、つい先日リリースされたレポートをもとに見てみましょう。

NFTは未だ冬の時代?

先日alchemy(ブロックチェーン開発のインフラを提供する有力スタートアップ)からリリースされた「Web3 Development Report」ではNFTの取引額、利用者数がそれぞれ減少傾向であることが示されていました。

Web3 Development Reportより
Web3 Development Reportより

クリプト系のメディアなどで見かけるのもこのダウントレンドの情報が多い印象ですが、その一方で、同レポートでは“開発”は引き続き成長トレンドにあることが伝えられています。(ツール提供する企業なので、開発が活況なことをアピールしたいという側面もあると思いますが)

  • Ethereum SDKのインストール数は昨年から +37%

  • Wallet SDKのインストール数は昨年から +196%

  • EVM互換のスマートコントラクト作成数は昨年から +1,106%

Web3 Development Reportより

このように、2022年前半にかけてのバブルから調整フェーズに入りユーザー数は減少傾向にはあるものの、その一方で開発活動は引き続き手堅く推進されていそうです。

上記の開発は、いわゆる消費者向けのサービスというよりもセキュリティなどインフラ関連のものが多そうですが、消費者向けのサービス開発もまだまだ続いています。

ゲームや金融以外の領域での大手企業の取り組みとしては、これまでのnoteでもご紹介してきたNIKEやスターバックス、ロレアルに加えて、LVMHグループやGucciなどを要するKeringグループ、メルセデス・ベンツ、BMWなど、強力なブランド・顧客基盤を持つ企業での取り組みが継続されている印象です。

本日取り上げるLVMHグループは、その売り上げ規模(2022年の年間売上げは11兆円超!)もさることながら、デジタル投資にも積極的で近年NFT関連のプロジェクトをいくつも発表しています。

ちなみに、今回は深掘りしませんが、LVMHグループは2021年に「Aura Blockchain Consortium」と呼ばれる高級ブランドの製品の履歴情報や真贋の検証を消費者が可能にすることを目的としたコンソーシアムの立ち上げも主導しています。(補足:このコンソーシアムには、リシュモングループやメルセデス・ベンツなどが参画)

上記のように商品の真贋や流通履歴を残すような動きは、近年ラグジュアリー領域でも注目を集める「再販ビジネス」への繋がりもありそうです。

さて、話を戻しましょう。

LVMHグループのNFTプロジェクト

現在、LVMHグループは「ワイン・スピリッツ」、「ファッション・レザーグッズ」、「パフューム・コスメティクス」など6つのカテゴリで75のメゾン(ブランド)を抱えています。

ざっと調べてみただけでも、中核となるLouis Vuittonをはじめ、2021年以降に以下の6つのブランドでNFTを活用した取り組みが実施されていました。

各種リリース資料より作成

今日はこれらの取り組みの中でも、「Louis Vuitton」が今年6月に立ち上げたトレジャートランクの取り組みを紐解いてみたいと思います。

そのお値段、5,863,000円

今回リリースされた「トレジャートランク」はLouis Vuittonの象徴的なトランクをモチーフにした限定シリーズとなっています。そして、そのお値段なんと、5,863,000円(この金額は、この限定シリーズが特別に高いというものではなさそうです)

同社HPより

販売個数

数百個限定で販売すると発表されていましたが、現時点でOpenSea上での同コレクションのオーナー数をみてみると「114」となっていました。

発売当初、Twitter上でも「抽選に当たるかな〜」といったコメントが見受けられましたが、「当選した!」という声も多く、想定ほどは応募が集まらなかったかもしれません(と言っても、わずか数日で500万円以上するトランクが100個以上売れているだけでもそのブランド力の強さを示していますね)

発売からの流れ

少し前後しますが、発売から現在までの流れをおさらいしておきたいと思います。

  • 6月8日

    • 「VIA トレジャー・トランク」の申し込みがオープン

    • 地域は米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本に限定されていました

  • 6月12日:招待

    • 当選者への連絡、招待状の送付

  • 6月16日:出発

    • 「VIA トレジャー・トランク」NFTの提供

  • 7月17日:最初の目的地

    • Louis Vuittoのアイコニックなバッグ「Speedy」をベースに、ファレル・ウィリアムスがデザインした特別版を「VIA トレジャー・トランク」NFTホルダー限定で販売

  • 今後

    • 「VIAコミュニティとともに創り上げる旅行記」という記載がHP上でなされており、今後新たな取り組みが続いていくことが示唆されています

Soulbound Tokenとしてリリース

6月にリリースされた「VIAトレジャー・トランク」NFTは、SBTとなっており、OpenSeaなどのマーケットプレイスを通じた売買や個人間での取引はできないようになっています。

その一方で、7月に最初のプロジェクトとして発表された「Speedy40」はSBTとなっていません。現在その保有者は62名で、2つのNFTがそれぞれ15ETHと20ETHでOpenSea上でリストされています。

Speedy40のイメージ(OpenSeaより)

この「Speedy40」は、2024年1月から実物のバッグをClaimできるようになることも発表されています。また、このNFTはクリエイター手数料が10%に設定されているので、取引される度に10%がLVMHグループに入ることになりそうです。

このプロジェクトの面白いポイント

以上の通り、まだリリースから間もないこともあり、そこまで多くの情報はありませんが、今回のプログラムの面白いと感じている点の一つは、これが単なる単発のキャンペーンではなく、一つの会員プログラムのような形で、継続的に実施していくことを前提に企画されている点です。

何かイベントの来場者にNFTを記念にプレゼントして終わり、と言うものではなく、プロジェクトの名前に「VIA」とあるように、「トレジャー・トランク」という旅のシンボルとなる旅行鞄を軸に、様々な目的地を経由(via)して旅をしていく、その経由地で様々な取り組みが行われる、と言うのは個人的にもとても面白い取り組みだと思います。

この旅の参加証となるトレジャー・トランクはSBTとなっており他の人には譲渡できません。一方で、途中で購入できるお土産?戦利品?はきちんとマーケットプレイスで販売でき、尚且つそこからしっかりとクリエイター手数料をゲットする設計までなされています。

現在はOpenSea上で取引されているようですが、今後このプログラムがもっと盛り上がってくると、独自のマーケットプレイスを作っていくことも考えられます。

現状のNFTはあくまで実物とセットのものとなっていますが、今後、物理商品の制約もないデジタルアイテムの販売をしていくとなると、それはデジタルのゲームアイテムや金融商品などのような非常に収益性の高い商品となります。さらにはその取引手数料まで獲得するとなると、規模がどこまで拡大するかは未知数ですが、収益性の観点では魅力的な事業になっていくのではないでしょうか。

まだ114名と旅の参加者はまだ少ないですが、今後の展開を楽しみにしていきたいと思います。Bon Voyage!

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