令和6年司法試験再現答案 経済法第1問

感 想
とりあえず第1問のみ。今年の問題は過去問と比べても分量が多く感じた。当日時間が無いと感じ焦りつつ解答したため内容の評価は薄くなったのが反省点。ところどころ記憶が抜けてるなかで再現に着手したが、本番で書いていないことをねつ造してはないはず。課徴金の条文(基本金額)はおそらく誤った。7条の3第2項2号の15パーセントについては合っているのではないか。B相当で耐えていただきたい。

以下、再現答案↓

1 令和3年4月頃以降におけるメーカー9社、Y社及び販売業者9社による各行為が独占禁止法2条6項(以下、「法令名」省略)に該当し3条後段に違反するか。
(1) 同条の名宛人は事業者である。「事業者」とは、何らかの経済的利益の供給に対して反復継続して反対給付を受け受ける活動を営む者をいう。甲製品の製造販売メーカー9社、甲製品の卸売りを行うY社及び販売業者9社は事業者に当たる。
(2) 「他の事業者」とは形式的競争関係のみならず実質的競争関係にある者も含まれる。メーカー9社は甲製品の製造販売を行い競合関係にあるといえる。販売業者9社も互いに競合関係にあると言える。またY社は指名資格を有していないものの、メーカーから甲製品を仕入れこれを55団体に販売しており販売業者9社と競争関係にあるといえる。メーカー9社、Y社及び販売業者9社はそれぞれ取引段階を異にしており、これらが「他の事業者」といえるか問題となる。この点、各人に市場の競争を実質的に制限できるような関係があれば業種が異なっても他の事業者と考える。メーカー9社、Y社及び販売業者9社は異なる取引段階を経て甲製品の価格を維持することが可能であるし、実質的競争関係にあり他の事業者といえる。
(3) 「共同して」とは意思の連絡をいう。意思の連絡は明示または黙示のものを含み、複数の事業者が相互に、同内容または同種の対価(価格)の引き上げを実施することを認識・予測し、これと歩調をそろえる意思があることで足りる。
ア まずY社は、入札一覧表を作成しており、これをメーカー9社に提供している。そしてメーカー9社は令和2年以前にも甲製品の入札に関して直接に連絡交渉し合い、受注調整を行うことがあり、Y社からの入札一覧表提供を契機として、メーカー同士が直接に連絡交渉し合う必要がなくなると考えるようになり、Y社はメーカーとの取引の間に卸売業者として入り利益を上げると考えるようになっている。そして、Y社がメーカー9社と個別に面談し、入札一覧表を提供することにより、これをメーカー9社は参考にしてY社に受注の有無を伝え、Y社が供給予定者を決定して販売業者9社の提示する各入札価格を決定するとともにそれをメーカーに伝えてメーカーが販売業者にその入札価格を提示させることを行っているのであり、メーカー9社が一堂に会して個々に連絡を取り合わないとしても、かかるY社を中心とした上記の取り決めにより黙示の合意があるといえる。そして各メーカーによって、販売業者9社も指示に基づいた入札を行ったといえ、各販売業者は落札に必要な価格や協力価格を知りつつこれを行っているのであるからメーカーを通じて更に販売業者にも意思の連絡が認められる。そして、メーカー9社は過去の調整もあって概ねどの範囲の者が合意に参加しているかを認識しているし、販売業者も同様である。そして、通常、落札を競い合う業者が業者間で価格を決定し合い入札することはありえないといえ、現に200件中180件もの落札結果が存在することからすれば同社らの合意による公道の結果と推認できる。よって、上記の者らに意思の連絡があると言える。
(4)  「相互にその事業活動を拘束し」とは拘束の相互性と拘束内容の共通性をいう。メーカー9社、Y社及び販売業者9社はそれぞれ、甲製品の入札に関して、受注者を決定し、かかる受注者が確実に落札される入札価格で入札するという各事業者の相互の拘束があり、また、内容の共通性は合意を遵守する関係にあり目的の共通性があればよく、上記の者らは供給予定者を決定し、また、メーカーが指示する販売業者にその入札価格を提示させ、落札予定者に落札させるという共通の目的を有していると言えるから目的の共通性も認められる。
2(1)ア 「一定の取引分野」とは、取引の影響を受ける範囲、すなわち市場を指す。市場は商品の範囲、地理的範囲、需要者の代替性を基準として判断し、必要に応じて供給者にとっての代替性の観点から判断する。
イ 商品の範囲は甲製品となり代替する商品はない。地理的範囲及び需要者は55団体の甲製品の指名競争入札となり、「甲製品の入札市場」が確定する。
(2) 「競争を実質的に制限する」とは競争自体が減少して、複数事業者らで価格品質数量等の各般の事情をある程度事由に左右できる支配状態をいう。メーカー9社は、令和3年4月頃から令和6年6月28日までに実施された甲製品の入札200件のうち、本件取決めに基づいて決められた供給予定者の指示する販売業者が落札し、同供給予定者が甲製品を供給したものは180件であったことから、「甲製品の入札市場」で落札された甲製品のおよそほとんどが、同社らによって定められた価格での落札を左右できている支配状態が存在すると言える。またアウトサイダーにより落札された件数は20社にすぎず、メーカー9社、Y社及び販売業者9社の行為によって市場の支配状態が存在することは、その9割という落札比率等からも明らかと言える。
(3) 公共の利益に反してとは、自由競争秩序に反することをいうが、行為の目的が正当であり、手段が相当といえ、独占禁止法の究極目的に反しないと言える行為はこれを除外する趣旨であるが、本件では価格の維持等のみを目的とするものであり正当化する余地はない。
よって、同社らの行為は2条6項の不当な取引制限にあたり、3条後段に違反する。
3(1) 不当な取引制限の既遂時期は、基本合意の成立により競争の実質的制限の危険が生じたときである。そして、違反行為がなくなった時期は、各事業者が合意から解放されて自由に事業活動を行えるようになった時期である。
(2) X2は、メーカー9者間で対立し令和5年10月13日に実施された甲製品の入札において、独自にZ2に指示した価格で落札しており、同年12月7日、自社以外のメーカーとY社の各担当者に対し、今後は自社で独自に定めた価格で、対応していく旨を伝えている。合意からの離脱は、離脱者が離脱の意思を表明し、他の者がこれをうかがい知るに足りる状況が必要である。そうすると、X2は他のメーカー9社に離脱の意思を表明しており、それ以降本件取り決めに基づく行動を行っていないから離脱を翻意する事情もなくメーカー9社もこれを了知したと言える。そしてX2はZ2が専門の販売者であり、独自の価格を同社に伝えることを介して、販売業者9社にも離脱の意思を表示し、これが販売業者をしてうかがい知れるものといえる。よって、X2社は、令和5年12月7日に違反行為からの離脱をしたと言える。そして他のメーカー、Y社及び販売業者は令和6年6月28日に公正取引委員会の立ち入り検査を受けており、これ以降、Y社は本件取り決めに基づく行為を行っていないからこの時点をもって、自由な事業活動を行うことができるようになったといえるから同日に違反行為が終了したと言える。
(3) Yは前述のとおり不当な取引制限(2条6項、3条後段)を行っている。そして、7条の2第1項1号において違反行為者の課徴金として売上額10億円の10パーセントが基本金額となる。もっともY社は入札一覧表をメーカー9社に提供することを契機として不当な取引制限を行ったものといえ、Y社が各社と調整し、また、価格の決定等を行ったという事実から、Y社の存在無くしてはこれらの取引制限を行えなかったと言える。そうすると、Y社は中心的な役割を果たした者といえ、違反行為に主導的役割を果たした者として、7条の3第2項2号により、15パーセントに加算される。よって、Y社は10億円の15パーセントの1.5億円を課徴金として支払う必要がある。
                               以 上

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