初期研修病院の決め方ー自身の経験と共にー
先日初期研修医のマッチングが終了したというTLをXで見かけました。
初期研修は10年以上前の遠い昔ですが、懐かしい記憶です。
ここで、私が初期研修病院で見るべきところ、重要視するべきところを改めてあげていきたいと思います。
これは私が大学病院などにいるときも、自身の経験を元に実習に来る学生や部活の後輩に話していたことです。
医学生の方々に何かしら参考になれば幸いです。
自分の譲れないポイントを決めよう
まず、病院を実際に見学したりする前にできれば行っておきたい作業があります。
それは、研修病院を決める際に自分が大事にするポイントを洗い出しておくことです。
これをせずに適当に病院見学に行くと、「何となく良さそうだから」、「先輩研修医が楽しそうだから」、「優しそうだったから」など明確な決め手も無いままに雰囲気で自身の中で決めてしまうという事態が発生します。
具体的な作業としては、雑多に「こういった条件を満たしていると良いな」というのをノートや紙に書き出していきます。その中で取捨選択し、多くとも10項目くらいに絞ります。その後最終的には優先度の最も高い3-4項目くらいに絞りましょう。それを満たす病院があなたが行くべき研修病院と言えます。
条件?ポイントとは?
では、条件やポイントとはどういった部分を見るべきでしょうか?
例えばよく言われるのは、研修医室の有無、ローテートの周り方、救命センターのレベル、病床数、研修医の人数、給与、寮の有無、当直の回数、何科の当直を行うか、長期休暇の取り方、大学病院×市中病院のタスキがある、などでしょうか?他にも色んな条件があると思います。
もっと、前提条件の大枠で言えば研修する地域や病院のカテゴリ(大学病院、公立病院、私立民間病院、小規模病院)などもあると思います。
このあたり、自分の大事にしている条件を決めていきましょう。
ソフト面ではなくハード面を重視
また、基本的に研修病院にいる各科の先生方に関しては、部長以外はいつでも代わりうると思っていた方が良いです。
また、色々な制度や指導方法や指導医なども容易に変わる可能性があります。なので、私は研修病院は基本的にソフト面ではなくハード面で決めた方が良いと思います。
やはり、簡単には変わりにくいハード面を重要視すべきだと思います。
特に初期研修医レベルで理解することや、到達すべき手技のレベルというのは専門の先生でなくても教わることは十分可能です。
同期の研修医同士や一つ上の研修医に教われば良いのです。
その方が教わる方が何が分からないか、を知っているので教わりやすいですし、相手も教えやすいのです。
つまり、専門科の先生が多いことなどよりも重要視すべきなのは、研修医同士での勉強会や教え合いが当然のように行われている研修病院は安心できる研修病院と言えるでしょう。
上級医をあてにしない
研修病院にいる先生は、大学から派遣で来ていたり、技術の習得や手術件数を稼ぐために来ていることあります。大学派遣の先生は派遣期間が終了したり、大学の人員の関係で予告なく変わる可能性は容易にあります。
また、大学所属ではなくても、技術の習得や手術件数を稼ぎにきている先生も、目的を達成するとキャリアアップのため他の病院に移ることがあります。
このあたりの事情は初期研修医や学生にはもちろん伝わらないため、研修病院選定の基準には入れない方が良いと言えるでしょう。
100%希望通りの病院はないと考えよう
また、研修病院は山ほどありますが、自分の希望を完全に満たす病院はないと思った方が良いです。
どこか、妥協する部分があるものです。
もしくは、完全に満たす病院があったとしても、恐らくその病院は競争率が高くマッチする難易度が高いと思いましょう。
私が重要視したポイントは?
では、私が重要視したポイントはどういった部分だったか振り返って挙げていきたいと思います。
*前提として独立して生活していけること
これは、学生時代に下宿をしていたため(仕送りはもらっていた)、その流れで就職後は親の援助なく過ごしていこうと考えていたからです。大学病院の給与では都内で下宿先を借りて一人で生きていくことはそこそこ難しい条件でした。
大学を研修先にした場合は仕送りを継続してもらっている友人も多かったです。
そのため、私は自然と非大学病院でそれなりに給与を出してくれるor寮があり家賃がかからない病院から割り出すのが前提となっていました。
その中でポイントとしたのは以下の点です。
①研修医室があること
これは結構重要です。やはり精神的にも肉体的にもハードな研修医生活(ある程度ハイパーな病院を選びました)が想定されたため、息抜きができる場所もしくは逃げられる場所が必要だと考えたからです。
これは、正解でした。
また、研修室で研修医で鍋をしたり、ピザを頼んだり、時には涙を流し慰め合い、上級医の愚痴を言い合って過ごすことができました。
そうした中で早くから研修医同士で絆も生まれ、辛い時でもみんな一緒の思いをしているんだ、という気持ちで踏ん張れたのをよく思い出します。
②三次救急をやっていること
これは、医師としてのスキルや知識、度量の問題です。
元々、外科は考えず内科志望だったため、ある程度内科疾患は見ておきたいという希望はありました。
その中で、研修病院としては三次救急、二次救急と救急がどのレベルまでやっているかが異なるため選択する必要があります。
特に余程拒否することがないならばやはり三次救急を見ておく方が良いと、私は勧めます。
恐らく、多くの人にとって研修医としては二次救急まで見れれれば事足りるとは思います。
が、やはり三次救急を自身が経験しているかしてないか、ではその後の医師人生での急変時などでの落ち着きが変わってくると思います。
特に専門に入ってから責任が出てくると、突然救命や急変の現場に立ち会うことが訪れます。
その時に咄嗟に色々な判断ができたり、バイタルなどを見て安心したりできる度量というのは、やはり三次救急を通して培った経験なのだと思います。
③研修医の人数が全員把握できる程度の人数
これは少し変わってるポイントかも知れません。
研修医の1学年の人数が10〜15人くらいが良いと考えました。
これは、多すぎるとまとまりが無くなり、よく知らない人がいる可能性が出てきます。研修医は時に何人かで、同時に同じ科をローテートすることがあります。その時に、全く知らないor気が合わない人がいると精神的に削られると感じたからです。
また、少なすぎる場合は、気が合う人がいなかったり、仲が悪くなった時にとてもきまずく逃げ場がなくなるので、それも避けたいと思いました。
なので、研修医の一学年の数が5人以下や20人以上のところは外すようにしました。
さらに、研修医が病床に比べて多すぎると手技が回ってこない可能性もあります。そのため、100床あたりの研修医数が2学年合わせて4-6人以下くらいの方が良いと思います。500床であれば20-30人というのが目安でしょうか。これも大事なポイントかもしれません。
大事なポイント次点
上記の点以外に大事にしていたポイントを列挙し一言簡単に理由をつけます。どれも捨て難い条件ではありました。
結局マッチした第一志望の研修病院は以下のポイントもほとんど満たしていました。
・研修医用の当直室がある
上級医の先生と当直室が近いことほど嫌なことはありません!取り合いも避けたいですよね。
・内科ERの当直ができるor多い
内科のトレーニングの基本はER当直だと私は思います。たくさん学べて一番の勉強になったと記憶しています。ヒヤヒヤする思いもします。みっちりと指導医がついてくれると尚良いです。
・ローテーションの自由選択が多い
初期研修の理想は早めに進む専門が決まることです。その場合、自由選択が多い方が、専門科にシナジーのある科を多く回ったりできるので良いです。進路が決まっているのに、正直あまりためにならない科を回るのは苦行です。
・勉強会が定期的にある
人は怠け者です。初めはモチベも高く勉強する気は十分あるのですが、余程出ないと怠けてしまいます。そのため、定期的に勉強会を開くことになっている研修病院は刺激にもなり、勉強する習慣がつくので良いです。
・研修医二年目が一年目を指導する土壌がある
屋根瓦方式などと言われますが、やはり研修医同士で特に一つ上の先輩は、後輩が困る部分をわかっています。そのため教え方も上手いです。何より聞きやすいですよね。また、翌年には自身が教える立場になります。そこで、さらに知識が磨かれるのもとても良い循環となります。
まとめ
今回初期研修病院の決め方を自分なりにざっくりとまとめてみました。
大事なことは、自身の譲れないポイントを決めることです。
まだ、はっきりしない方はできれば知り合いの研修医や先輩に色んな病院の話を聞くのが良いと思います。それも難しい場合は、仕方ないのでひとまず病院をたくさん回ってみて、良かった点を記録しておくことです。
そうすることで、「自身の譲れないポイント」、「大事にする条件」、または「絶対に避けたい条件やポイント」が決まってくるはずです。
また、見学に行っている友人とも情報交換すると色々な見識が深まると思います。
最後になりますが、ここまで来て元も子もないことを言います。
私は実は、初期研修病院は余程変なところでなければどこでもあまり変わらないと思っています。
(一方で後期研修病院はちゃんと選ばないと一生後悔すると思います。)
なぜかというと、、、
これは途中でも述べましたが、研修医が到達すべき知識やスキルというのはどこの病院でも大抵身に付くからです。
本人のやる気さえあれば正直300床以上くらいあればどこでも良いと思うこともあります。
ただ、症例の経験数やフィードバックの質、手技の量や研修中の過ごしやすさ、などを求めると上記のようにこだわって選んだ方が良いとはもちろん思います。
医学生の皆さんは是非後悔のないように研修病院を決めてください。
今回は以上になります!!
お読みいただきありがとうございました。