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『きいろい ばけつ』      もりやま みよこ 作     つちだ よしはる 絵     あかね書房

 

ある日、黄色いきつねのこが、黄色いバケツを見つけたことから、話は始まります。

名前も書いてないし、友達のうさぎちゃんとくまさんに聞いても、誰のだかみんな分かりません。

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同じ場所に置いたままにしていたら、誰か落とし主が持って帰るかもしれないと思ったので、そのままにしていたけれど、、

あくる日も、そのまたあくる日も、、黄色いバケツはそのまま、その場所にあります。

一日中、黄色いバケツを見守る、黄色いきつねの子。友達は、“持って帰ったら?”と、けしかけるけれども、きつねの子は持って帰りません。  誰かのものだから。ときつねの子なりに、考えているんでしょうね。

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ある日は、黄色いバケツに、名前を書く“ふり”をして遊んだり、ある日には、黄色いバケツに水を汲んで、水面に映る景色で遊んだり、黄色いバケツの横で、寝てみたり、、、

健気で愛らしくて、微笑ましい、光景。 

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持って帰りたい気持ちもあったかもしれない、、けれど、自分のものではない。だから、そこに在る、黄色いバケツと黄色いきつねの子の時間。

大風が吹きあれ、バケツが飛んでいく夢を見た、きつねの子。心配で心配で、黄色いバケツをみにいくと、いつもそこにあった黄色いバケツは、ありませんでした。

7日間ずっと黄色いバケツと共に過ごした、きつねの子。悲しい気持ち、寂しい気持ち、何とも言えない気持ちが、伝わってきます。夢か現実か、、黄色いバケツはどこかへ飛んでいってしまったのか、持ち主が持って帰ったか、誰もわからないけれど、黄色いきつねの子は、こういいます。

“もう、いいんだ。”

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その言葉に、いろんな感情が含まれているように感じます。

無くなってしまっても、そこに居なくても、一緒に過ごした思い出は、ずっと心に有るものです。

物を大切にする気持ちや、誰かを想う気持ち、 一つのものから繰り広げられる物語。

その人にしか分からないストーリーが、何にでもあるということ、そこに寄り添える心の余裕を、日々保ちたい気持ちでいっぱいになります。

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