『無敗営業』から考える効果的な営業リソースの配分

本の紹介者:江草 嘉和 https://note.com/yoshikazuegusa

こんな人に読んで欲しい!
・ 営業、とくに営業戦略に携わる人
・ 何となく、既存の営業スタイルを繰り返している人
・ 「勝てる営業」になりたい人

 私は2019年の秋にタイに法人を設立してゼロから事業を始めました。事業運営の要諦はいくつかありますが、「営業」は最も重要なポイントの一つです。言わずもがな、営業して、受注して、納品しないと、売上もたたず、キャッシュも生まれません。

 前職でも10年以上の営業経験がありますが、今、あらためて営業の難しさを感じております。私が一番難しいと感じるのは、リソースの配分です。営業活動は、顧客訪問のためのアポどりや資料作成、実際の訪問といったPush型のものや、Webサイト作成やメルマガ送付等のPull型のものなど、多種多様です。簡単に言うと、キリがありません。

 あれもこれも貪欲に追い求める姿勢は大事である一方、組織を動かすことを考えたとき、リソースは有限であり、Aを実行すれば、Bは実行できなくなることは多々あります。つまり営業の責任者は、戦略的に、効果がでるところに営業リソースを配分することが極めて重要になります。

 この一見、当たり前のようなことが、私の目下の課題です。既にビジネスモデルが出来上がっている状態ならまだしも、ゼロから始める時、力の入れどころをどこにするか、その感覚をつかむのに苦労する方も多いのではないでしょうか。私がこの本を手に取った理由は、このような背景がありました。

 本書は、8年間コンペで負けなしという著者が、その営業ノウハウを「3つの質者」と「4つの力」を中心に紹介しています。その中で、私が特に気になった箇所をいくつか紹介します。

①  案件や商談を「楽勝」「接戦」「惨敗」でわける

 全ての案件に全力で取り組む、というのは、心がけとしては立派ですが、それでは、戦略とは言えません。先に述べたようにリソースは有限であり、それをどこに投入すべきかで、自社の全体の成果が変わってきます。

 その視点から、案件を大きく「楽勝」「接戦」「惨敗」に分けたときに、いかに勝率を上げるかは、いかに「接戦」を勝ち切るかに掛かってきます。社内のエースを投入すべきは、安定的な「楽勝」案件ではなく、「接戦」案件にする方が、より戦略としては理にかなっていることになります。

 もっともエースを外した結果、「楽勝」案件が「接戦」や「惨敗」になるようでは元も子もありません。案件をうまく回せる仕組みをつくって「楽勝」化した上で、エースのリソースを別の「接戦」案件に移せることができます。

② 営業フェーズを「質問」「価値訴求」「提案ロジック構築」「提案行動」でわける

 これは本書では「4つの力」として紹介されているものです。私は現状の自社が、この中のどのフェーズに力を割くべきかを考える、ヒントになりました。

 私にとって最もイメージしやすいのは、「質問」と「提案行動」です。とにかくアポをとって訪問しまくり、提案書を出しまくる、というイメージです。しかし、そこが力の入れどころなのでしょうか。

 明確な答えが自分の中に出ているわけではいですが、何となくそれではまずい気がしています。つまり、訪問件数を減らしてでも「価値訴求」や「提案ロジック構築」にリソースを割くべきではないか、という考えが強くなってきています。ただ、営業にとって「弾数=訪問先」を減らす決断は容易にはできません。踏ん切りをつけるのが難しい。。。

③「決定の要因」ではなく、「決定の場面」をきく

 最後は、リソースの配分とは異なりますが、直ぐに活用イメージが持てたポイントを紹介します。私も失注した際に、お客様にその理由を聞きます。大抵の場合、お客様は、「価格が高かった」とか、「スペックが他社」に劣っていたとか、何らかしらの理由を答えてくれます。

 本書では「決定の要因」以上に、「決定の場面」が重要と紹介されています。なぜなら「決定の要因」は、相手の主観であるのに対して、「決定の場面」はより客観な情報が得やすいからです。

 本書でも紹介されていますが、決定の場面が、例えば「御社のプレゼン直後」だったら、自社のプレゼン内容に問題があったことがわかりますし、「上司の一言で」でだったら、上司の評価ポイントとずれていたことがわかります。

 同じ失敗をせずに次回以降の受注確度を上げるためには、「要因」よりも「場面」を訊くことが肝要です。

 

私は営業戦略におけるリソース配分という課題を持って、本書を読み進めましたが、本書で紹介された内容は具体的に活用できそうな戦術論も多々あり、参考になりました。

 戦略、戦術両面から、営業の成果をあげていくことにつなげていきたいとおもいます。




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