くつ
まさか、そんなことになっているとは微塵も知らず、
中学2年生の僕は学校指定の真っ白い運動ぐつを履き続けていた。
しかし、あるときクラスメイトたちに指摘されて知ってしまった。
学校指定の運動ぐつをはいているのが学年で自分だけだということを。
すごく勉強のできない奴も、だれより足の遅い奴も、
そのとき、僕をわらった。
急いで家に帰り、クラスメイトが履いているような
バスケットシューズを母にねだった。
急な希望は母によりあっさりと却下された。
それでも食い下がってねだった。
しかし、却下された。
目が潤んできた。
泣きながらもねだった。
しかし、当然ように却下された。
するとその様子をそばで見ていた妹が言った
「おかあさん、私は欲しがったりしないから、
おにいちゃんに買ってあげて」
その後ですぐに僕はくつを買ってもらった。
そういうわけで、僕には個性がどうとか、表現がどうとか、
センスがどうとか、そういうことを言う資格は
生涯、一切ないと思っている。
(了)
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