ゆび

僕が生まれたのとほとんど同じ時間にもう一人、

同じ病院で赤ちゃんが生まれた。

そして僕とそいつは隣同士のベッドに寝かされた。

その後生まれてから数日のうちに

僕はそいつに劣等感を感じるようになった。

そいつはすごく自然に自分の指をくわえることが出来る、

実に赤ちゃんらしい赤ちゃんだったのだ。

僕はどこか気恥ずかしくて、どうも指をくわえることができなかった。

あいつは目が覚めているときばかりか、

寝ているときでさえすんなりと指をくわえているのだった。

僕はその自然な赤ちゃんらしさがとてもうらやましかった。

しかし僕はいつも隣のあいつの横顔を、

ただただ指をくわえて見つめることしかできなかった。

(了)

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