#今日のそよ風 舌切り小学生
小学生5年生だったか
4年生だったか
夏休みに知人の家族と
2組で北海道旅行に行くことに
なっていた。
北斗星という寝台列車で
青函トンネルを通っての旅行である。
私にとってはじめての
北海道旅行の予定だった。
しかし、旅行の数日前に
祖父が亡くなり、
私の家族は旅行に
行かないことになった。
知人の家族は
1組で北海道へ行き
お土産を買ってきてくれた。
まるまる一本の牛タンの燻製。
それを真空パックしたものだった。
牛の舌を抜いたままの
その形を私の家族は気持ち悪がり
誰も食べようとしなかった。
だから私がそれをもらい受けた。
学校から帰ると真っ先に
冷蔵庫から牛の下をひきずりだし
4、5枚スライスして
おやつとしていただいた。
牛の舌一本を
1人で平らげるには
なかなかの日数を要した。
私はそれ以来
牛の舌に感謝している。
あの夏立ち消えになった
北海道旅行の残り香りは
燻製の牛の舌のスライスとして
1日、また1日と
時間をかけて私の体に
吸収されていったのだから。
(完)
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