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辺境のプレイリスト 一挙放送スペシャルを見た。

どこから見て辺境なのだろうか。

NHK 福岡放送局制作のドキュメンタリー「辺境のプレイリスト」を見た。以前、NHKの宣伝番組「どーも、NHK」でも取り上げられていて、これは良い番組のはずだ…と気になっていたのだけれど、なかなか全国版で放送されなかった。

今回ついに、2024年3月26日にこれまでの「福岡編」、「韓国・釜山編」、「台湾編」の一挙再放送があった。相変わらず九州・沖縄地域のみの放送にとどまったが、NHK+のアプリで1週間見逃し配信されていたのですかさず視聴。その余韻のままにメモもかねて記事を書くこととした。
(なにより、なにかしら全国放送なりNHKオンデマンド入りなりしてほしい!)

街ゆく人のスマホには自分を鼓舞し、慰め、時にかけがえのない思い出へといざなうプレイリスト(音楽)がある。音楽を入り口に「人」と「世界」を見つめるドキュメンタリー

NHK 「辺境のプレイリスト」

日本や世界の様々な場所で懸命に生きていく人々に、お気に入りの「人生の一曲」を聞いて、インタビューでこれまでの人生を重ね合わせながら、その曲がBGMとして流されていくという構成。その人の人生観や家族・友人への想いを紐解く形で、どことなくドキュメント72時間にも通じる余白を感じさせてくれる番組だ。

舞台は福岡・釜山・台湾と国境を越えていて、第一回の福岡編でも、話を聞く人たちは日本人だけでなく、ミャンマー・ネパールなど国籍も様々。だからこそ、”辺境”というタイトルのネーミングにもなっているのだろうが、話を聞いてみると、その人生観や想いを馳せる相手への感情は国境を越え、普遍的。それぞれの「人生の一曲」も個性はありながらも、誰もが染み入る音楽ばかりで、出てきた人たちの人生物語を増幅していく。辺境と言いながらも、「アジアの玄関口」と呼ばれる福岡のグローバルな側面に始まり、お隣の韓国・釜山や近くて文化的親和性のある台湾など、国境は超えながらも東アジア一帯の文化的結びつきが強調されており、東京からみた辺境と見せかけたカウンター感があるように思えて、むしろあえてこの言葉を使っている気もしてくる。

ただし、とりあげられる人々の置かれた環境はその場所の表面的なステレオタイプではなく、社会的にはマイノリティで、だからこそ厳しい経験を経ている。決して画一的ではないし、全てのカットからエキゾチックさが漂ってくる。それでもたくましく、飄々とした生き様で、どことなく自分にも同じような境遇だったり、普遍的なしみじみとした想いを抱かせる。3編全部がその連続でまさに圧倒された。もしかしたら、音楽に造詣が深い人はその選曲に対してより構造的に批評できそうだが、残念ながら自分は「ええなあ」という味わいだけだった。だけど、それでも十分。
ぜひ、そのひとつひとつは番組を見て、実際に「人生の一曲」をバックグラウンドに染み入ってほしい。

ひとつ例をあげると、福岡編で出てくるネパール人留学生のチャンドさん。日本語専門学校で勉強しているが、セブンイレブンの夜勤のバイトもしながら日本企業で働く目標を持つ。彼のルームメイトも「バイトしない 生活ができない。勉強しない 日本語が話せない」ともらすほどに日々の大変さがうかがえる。そんな彼が選ぶ人生の一曲は、なんと自作のラップ。しかも夜勤前に公園でネパール人留学生の仲間たちと歌う。歌詞はネパール語と英語と日本語が入り混じる。「一歩ずつ着実に進む俺たち」という歌詞で仲間たちと声を上げる。ちなみに、この無頼でちょっと攻撃的な歌詞のラップの源流に、チャンドさんが日本を知るきっかけとなった大好きな映画「クローズZEROⅡ」があげられていて、自分は思わず笑ってしまった。

これはかなり好きな番組なのでシリーズ化してほしいし、まずはぜひ全国放送で流してほしい…。とりあえず気になった方は24年4月9日まではNHK+のアプリで視聴できますよ。



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