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その自信はどこから?

日本の小型無人探査機「SLIM」が月面の着陸に成功した。
純粋にエンジニアでもあり、航空宇宙にもかかわったことがある身からすると大変喜ばしいことです。まずは第一歩としてはめ、でたしめでたしです。
JAXAは60点の合格点と発表しています。
ただ、今探査機は動いていません。どうも着陸の際に太陽電池のパネルが思った方向に向いていないのか充電出来ずにバッテリーの寿命で休眠中です。
実際に展開望遠鏡でも状態が見えないのでどうなっているかはデータを分析するしかないのですが、どうも着陸の時にこけちゃったみたいです。今回は新しい技術を使ってちょっと変わった着陸を実施しています。一本足の部分に弾性体が付いていてその部分でエネルギーを吸収してから他の足も着地するようになっているようです。おそらく何回ものシミュレーションと呼びテストを実施し、採用に至った技術だと思っています。だから無事月面に到着出来たと思って良いでしょう。
が、エンジニアからすればこれでは不合格です。というより初めてのトライで一発できちんと立つという自信があったのでしょうか?おそらくこけてしまった探査機は姿勢を変える機能を持ち合わせていないのです。これにはかなり驚きました。最近の技術の多くは実機テスト回数を減らしたりするためにシミュレーションをしっかり実施しそのうえで本番を行います。が、自分であればいくらシミュレーションで100発100中であったとしても万が一を考えてこけたり、傾いた場合にワンチャンスであっても修正出来るバックアップ案は考えて搭載していたと思います。もちろん打ち上げのために重量は最小限でコンパクト、安価であることが望まれるのは言うまでもありません。それで出来たらすごいです。が、実際には出来ませんでした。あとは運よく太陽が当たるときがあれば充電して動くかも・・・です。これから何度も月面に行くことを考えているのであれば初品は絶対成功させてかつ様々なデータを次のために取得し徹底的に検証する必要があります。それが着陸までのデータは取れたので60点だそうです。その甘さが問題ですね。着陸することが主でありその先は運が良かったらというレベルの考え方です。お金と時間は無限ではありません。次はいつ?と言っても答えられないぐらい先だと思います。であればミッションは限りなく100点を目指すべきでそこに対して色々な策があれば何か出来たはずですし、この先も日々データの取得とか出来たはずです。研究者の目からみたら60点であっても自分の目からみたら30点です。想定内の範囲の失敗だからです。事前にリスクを抽出するリスクアセスメントでもすぐに出てくる項目なのでなおさら残念です。
日本の航空宇宙は技術的にも資金的にも遅れています。だからこそ確実に成果を刈り取る必要があると思います。そのためには無駄であっても様々なことをいかに早い段階でテストし信頼性をあげるかです。最近日本のものづくり品質がボロボロになっていますが、ここで書くと長くなるのでそれはまた改めて書くとして、自分達のレベル認識からしっかり行い、無駄なことも考える余裕をもって確実に進めてもらいたいと思います。それが出来なければ何度でも失敗する可能性がありますし、忘れた頃に失敗する可能性が出てきます。技術というものは失敗の積み重ねですが初品には必要以上のセンシングやデータ取にて次のためにしたいものです。今後何度も新技術を投入して飛ばすようになるかと思いますが、次はしっかりバックアップ案を搭載し確実なデータを取得するようにしてもらいたいものです。月に到着してうれしかったのかもしれませんが、あの60点と説明した時の顔に失敗したなって感じが全くなかったのが気になります。

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