アナログ/二宮和也 波留
タイトルの「アナログ」に作り手の想いが集約されている。
1人1台のスマホが当たり前でラインやSNSで他者と簡単につながることができるこの時代に、「毎週木曜日に、同じ場所で会う」約束を交わす。
連絡を簡単に取ることができないため、お互いに行き違いや思い違いも生ずる。
「会えない時間が愛育てるのさ」よろしく哀愁。まさにそんな感じだろう。
もちろん、直接会って、言葉を交わして、お互いの思い入れのある場所を訪ねる、などの「二人の時間」は素晴らしいものであろう。
しかしながら、それ以上に「会えない時間に互いに相手に思いを馳せる」、その時間こそ甘美なものではないだろうか。
脱線するが、ライン等のリアルタイムのコミュニケーションツールが発達した現代、良くも悪くも、相手のことを想像(妄想?)する余地が少なくなってしまった。
恋は盲目。人は相手の見えない部分を自分の都合の良いように想像(妄想?)するものである。そういった余白がないと、今風に言うと「蛙化現象」みたいなことが起きやすいのではないか。
時間をかけて相手のことを理解していく過程で、自分の想像(妄想?)と多少違っていても、それも面白い、もしくはそれもアリか、と受け容れることができる。
悟がみゆきの想いを知ることになるツールが日記である描写はたまらない。号泣。
最後のシーンである、悟の覚悟、みゆきへの想いが本物であることを示す場面では、悟は「オンライン会議システムによる在宅ワーク」を活用しており「アナログ」ではないツールがカギとなっていることも興味深い。
迫力のあるCGや複雑な伏線回収などの派手な演出は全くなく、演者の会話シーンを主として展開されていく昔ながらのアナログな映画で秀作でした。
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