「世界は笑う」という(狂)喜劇
「どうしようもなく泣いた。近年稀に見る最高傑作だった。世界一好きな舞台かもしれない。」
観劇後、そう呟いた熱のまま書き殴った感想をそのまま載せています。読みにくさと同時に熱を感じてもらえれば、「観劇、興味あるけど高いなあ、1人で行くのもなあ」と思っているあなたが舞台へ足を運ぶ燃料となれば、幸いです。
やはりKERAさんの脚本が素晴らしかった。笑いと哀愁のバランスがうまい。顔を歪めて皮肉に笑いながら号泣せざるを得なかった。
キャストが神配置すぎる。
緒川たまきさんの長い手脚と透き通る声、コメディに使うとこう成るのか。松雪泰子さんの演じる凡人も魅力的。結局凡ではなく一番怖い人だったのだけれど。誰よりも大倉孝二さんが最高だった。あんなに怒れるんだ、知らなかった。「真面目に狂ってお笑いをやっている」真面目さから来る怖さのほとんどを大倉さんの芝居が担っていた。最高。
本当はスタンディングオベーションしたかった。
勝地涼さんは安定に間の撮り方がうまくて、幕開けから観客が安心して「これはコメディなのね」というスタンスを取れる空気を作ってくれた。温水洋介大暴れ。舞台の方が映える方なんだなあ、知らなかった。銀粉蝶さんの狂いっぷり。瀬戸康史さんの方言遣いが間抜けすぎて最高。
千葉雄大さんは逆ギレ役が増えてきた印象。良くも悪くも、イメージ通りというか想像の中にあった千葉雄大さんだった。でも、もちろん演技は最高だった。
シアターコクーンはやっぱりどこから見ても神席ですごい。来月の血の婚礼も楽しみ。
やっぱりKERAさん監修なのか?わからないけど、光と音の使い方がとても良かった。前作「室温」のときも似たような演出があったので、KERAさんのやり方なのかもしれない。「ここでそう来る!?」という超効果的な音とライティングの使い方をしていて、それだけで劇場に足を運ぶ価値があった。
4時間の長尺だったんだけど、それを全く感じさせない=展開や山場を観客に予想させない舞台づくり。
「ヒロポン」が蔓延る殺伐さとテレビの台頭などによる明るさを同時に感じる空気感にあっという間に溶け込む一方で、千葉雄大・大倉孝二ら演じる喜劇役者たちの狂気には徐々に徐々に違和感を抱く。その不気味さ、じわじわ来る不安感はホラーのそれと似ている。狂いきった人、狂いきれなかった人、狂ってもたくましい人、ずっとまともなようで一番狂っている人。様々な狂気の行く末を、時代の変化と共に描いたホラーコメディ群像劇だった。
あれ、前作「室温」の時も「ホラーコメディだ!」と絶賛した気がする……。(筆者の語彙の無さが光る。すまない。)
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シアターコクーンの次回作「血の婚礼」はまだチケットが手に入るようなので、これを機に「舞台いいかも」と思ってくださった方は是非に!♡