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「色彩の性質。わたしの本では一切は青色だ。」

 最初から最後までこんな夢見るような気持ちで読める本って、一体この世に何冊あるのでしょうか……!
 18世紀のドイツロマン派の代表的な詩人・ノヴァーリス(1772〜1801年)が、その短い生涯の最晩年に書いていた小説『青い花』は、未完ながらも存分に「本を読みたい!」という読者の欲求に応えてくれます。なぜならば、「ロマン主義」の名にし負う類い稀なる感受性のもと、人ひとりが想像し得る限りにひろびろと羽ばたいていく思考の道すじを、まぎれもない「詩人のことば」で綴っているからで、しかもそれが「献詩」から「遺稿」に至るまで(※)徹底しているために、一文、一文を読む贅沢な愉しみに溢れているから、未完であることはさほどに問題にはならないのです。
(※岩波文庫版では、「献詩」に始まり「『青い花』遺稿」で終わる)

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