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ほんのくいちらかし

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ほんのむしの読書記録 ときどき古本市
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#読書感想

読書感想『パリ警視庁迷宮捜査班』

"Poulets Grillés” by Sophie Hénaff 『パリ警視庁迷宮捜査班』 ソフィー・エナフ 著 山本知子・川口明百美 訳 エリート警察官としてのキャリアを築いてきた元射撃オリンピック選手でもあるアンヌ・カペスタンは過剰防衛による容疑者殺害のために6ヶ月の停職となり、夫に離婚され、落ち込んでいたところを呼び出され、問題警官たちを集めて作られた特別捜査班の指揮を命じられる。 与えられたオフィスは古いアパートメント、迷宮入り捜査の書類の山、廃棄品のよう

『ナチの亡霊』読書感想

“Black Order” The Sigma Force Series 2 by James Rollins 『ナチの亡霊』シグマフォース2 ジェームズ・ロリンズ 著 桑田健 訳 シグマフォース・シリーズ2作目。アメリカ国防総省の秘密組織、科学者てしての頭脳を持つ軍人たちからなるシグマフォース2代目司令であるペインター・クロウがヒマラヤで見たナチの遺産「釣鐘」とは? コペンハーゲンで行われたオークションでダーウィンの聖書を入手しようとしたピアース隊長は狙われ…

『オックスフォード物語ーマリアの夏の日』感想

“The Warden’s Niece” by Gillian Avery 『オックスフォード物語 ーマリアの夏の日』 ジリアン・エイブリー 著 神宮輝夫 訳 19世紀のイギリス。両親を早くに失い、老いた叔母に育てられたマリアは寄宿制女子校に入学させられるが、厳しい指導に耐え兼ね、オックスフォード大学で学寮(ウォーデン)を務める大伯父の元に逃げ込む。 研究のために始終思索に耽り、浮世離れしたところはあるものの、学者らしく、偏見のない考えである大伯父はマリアの知的好奇心を

読書感想『リトル・チルドレン』

“Little Children” by William Saroyan 『リトル・チルドレン』 ウィリアム・サローヤン 著 吉田ルイ子 訳 サローヤンを憧れの吉田さんが訳した!しかも表紙は和田誠さん!と、1人で図書館の棚の前で興奮して借りてきた。いいの、わかってもらえなくても。 サローヤンが自分と同じアルメニア系移民たちを主人公に書いた短編集。主人公のほとんどは子どもや若い人だが、『農夫の幸せ』『猫』『ピンボール・マシーン十字軍』などは、これはもう大人になった人独特の切

読書感想『図書室からはじまる愛』

“Climbing The Stairs” by Padma Venkatraman 『図書室からはじまる愛』 パドマ・ベンカトラマン 著 小梨 直 訳 第二次世界大戦と独立運動で揺れるインド、教養高く、理解ある医師の父、やさしい母、穏やかでひょうきんな兄に囲まれ、何不自由なく育った15歳のヴィドヤの夢は結婚ではなく、大学進学だったが、独立運動デモの最中、イギリス軍兵士からインド人女性を守った父は頭を割られ、廃人となり、家族は父方の祖父が統べる、古い因習を守って暮らす大家

読書感想『僕は上手にしゃべれない』

『僕は上手にしゃべれない』 椎野直弥 著 中学生になった悠太は、吃音を隠したいために自己紹介も仮病を使って逃げ、自発的に人と関わることができない悩みを抱えていたが、「しゃべることが苦手な人でも大歓迎」と書かれた勧誘チラシに心惹かれ、放送部のドアを叩く。 ご自身も吃音でいらっしゃるという椎野さんによる、吃音者のリアルな苦しみを描いた青春小説。 FBの読書グループでもお勧めされる方がいらしたのと、息子の友だちや、自分の職場にも吃音のお子さんがいるため、他人事に思えず読んだ

読書感想『ブルーバード、ブルーバード』

“Bluebird, Bluebird” by Attica Locke 『ブルーバード、ブルーバード』 アッティカ・ロック 著 高山真由美 訳 テキサスの小さな町で2人の他殺死体が発見される。1人は都会で弁護士をしていた黒人男性。もう1人は地元のバーでウェイトレスをしていた白人女性。友人から依頼され、しぶしぶ調査にやってきた停職中の黒人テキサス・レンジャーであるダレンは、事件に関わる内に自分の抱える問題にも対峙せざるを得なくなるが… ハヤカワミステリ、そして翻訳