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たれさん、ふたつめの家を買う【第4話】社長と対峙
気になる物件の内見を終えたたれさん夫婦は、鍵を返却するために893開発に来ていた。
そこに居たのは、70歳ぐらいの貫禄があるおじさん。
(さすが893開発の社長、その筋の人かも知れん・・・)
スキンヘッドに無精ひげ、正に社長の風格があった。
たれさん夫婦は応接室に通されると高級そうな椅子に座る。
(座席代請求されないよな・・・)
怯んでいる場合じゃない。たれさんは、中古物件について詳しく話を聞きたいと思っていたが、口を開いたのは社長の方だった。
開口一番、
社長「よくこの物件がうちの物と分かったね」
たれ「失礼かもしれませんが、登記簿謄本を確認させて頂きました。」
ハッキリと答える。
社長「ほお。やるなぁ。仲介手数料が要らなくなるから、表示価格より100万円安くするよ。」
一瞬、マジか!!と思ったものの焦らずに質問を続けた。
たれ「この物件はどういったいきさつで購入されたのですか?差支えない範囲で教えて頂けると。」
社長「ここに住んでた老夫婦がね、
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・・・・・だったんだよ」
1聞いたら10返ってくる話が長い人のようだ。(個人情報もあったもんじゃないな)
どうやら、老夫婦は息子夫婦にお世話になることになり、早いうちにこの物件を売却し、まとまった現金が欲しかったと。
(事故物件では無さそうだ)
たれ「建物自体も古かったですが、庭木、庭石、倉庫、車庫、狭い入口など
外観を整えるのに費用が掛かりそうですね。」
率直に、気になることを申し上げた。
社長「あんなのは、ショベルカーがあれば一気に片づけられるよ。
ガガガガガガーーーっとやれば一発だ!
うちの社員にやらせる。取っ払えば、見違えるようになるぞ!ガハハハッ!」
(考え方もやり方もきっと豪快な人だなこりゃ)
廃棄物処分費なども気になったが敢えて触れなかった。
だが外観はすべてやってくれるようだし、悪そうだけど悪い人じゃ無さそうだ。(これはかなり朗報だ!)
社長「ところで何に使うんだね?」
たれ「インターネット販売用の倉庫と作業用の事務所にしようと思います。」
社長「ほほー!それはピッタリじゃないかハハハッ!店舗部分は、賃貸にするといいぞ!あそこは絶対に借り手がいるからなぁ。
この前もラーメン屋をやりたいだの、塾を開きたいだの言ってきたぞ。
賃貸は面倒だから断ったんだよハハハハハッ!
8万円ぐらいで借り手がいるんじゃないか!
あっそうだ!・・・・
・・・
・・・」
(やっぱり1聞いたら10返ってくる人のようだ)
最初は、賃貸なんて頭になかったけど新たな可能性を感じた。(社長がすれば良いのに・・・)
たれ「ところで、893開発は不動産屋さんなのにどうしてS不動産に物件売買の依頼をかけたのですか?」
社長「めんどくさいだろう?うちは、土地を買って整地して販売するのがメインなんだ。仲介なんてやってられない。
その筋のプロに任せて手数料払った方がましなんだよ、ハッハッハッハ~。」
たれ「そういうことだったのですね。同じ物件でも複数の不動産屋さんが紹介しているのは、その分見られる可能性が増えるってことですね。」
(僕たちの物販同様、同じ商品でもAmazon、楽天、ヤフショなど様々なプラットホームで販売した方が、お客さんの目に留まる可能性は高まるってことだ。)
とにかく話好きな社長なようで、不動産売買について色々教えてくれた。
即決はできませんが、資金について検討する旨を伝えて不動産屋さんをあとにした。
最初、恐る恐る上がっていた階段を下りるたれ夫婦の足取りは軽くなっていた。
1,500万円の物件が1,400万円か。あの場所でこの価格は安い。
通常不動産取得する際に必要となる経費は10%と言われているが、、、それよりも安くつきそうだな。
リフォーム代に500万程度か。既に頭は資金調達に向かっていた。
たれ夫婦の夢のふたつめの家を買う話は、急ピッチで展開した。
そして、資金調達の大きな壁にぶち当たることになる。
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