たれさん、ふたつめの家を買う【第5話】妻の行動力と新たな壁
(第1話からは、こちらからご覧いただけます)
893開発からの帰り道、妻が口を開いた。
「何か怖そうなおじさんだったけど悪い人じゃなさそうだね。」
妻にとっても悪い印象はなく気持ちが前に向いていると感じた。
「その筋の人かも知れんけど、ご縁を感じるよね」
とたれさんは妻に話した。
妻は人を信じやすく疑わないことを知っているたれさんは、
「撤去については費用内で確実にやってもらえるよう確約欲しいね」
妻は?な顔をしていたが、ビジネスにおいて口約束は危険だ。
社長さんともっと話をして、うまく話を進めていきたいなぁと思っていた。
後日、妻は早速資金調達に動いた。
最初、町の商工会議所に行ったもののうまく話が進みそうにないとの事だった。
そこで浮上したのが日本政策金融公庫。
妻が珍しくスーツに身を包み早速打ち合わせに出向いた。
妻はこれ!と決めたら行動力が凄まじい。(自分で納得しないとだけど・・)
そして仕事が丁寧である。足元にも及ばないと思う。
先方が納得いくように徹夜で書類を作成し、無事に融資の許可が得られそうだとのことだった。
行動が早いのは、妻だけではなかった。
ある日、物件の前を通るとショベルカーとトラックが止まっていた。
書類もクソもない。既に社長は庭木などの撤去に動いていた。
唯一の社員さんは解体のプロだった。
こちらの意見も汲んでもらい、とにかく不必要なものを撤去してもらった。
みるみるうちに庭が広くなり、こんなに広かったのか?というほど土地が広がっていた。
気付いたころには、砂利が敷かれ土地の中心に大きな古い家と店舗が堂々と座っていた。
恐らく発注すれば、70~100万円は掛かるだろうと後に知った。
廃棄物処分についても心配無さそうだった。(一部は社長の山に)
このまま融資が下りれば、あとは最終価格交渉だ!と気持ちを新たにしていたが・・・
新たな問題に直面する。
たれさんが取得しようとしている物件は、家屋に店舗部分が後に継ぎ足された構造だった。
ここで問題が発生してしまう。
通常、建物に新しく店舗部分を継ぎ足す(増築)場合は、登記申請をする必要がある。
(車庫、倉庫も条件次第で必要)
この物件は登記申請をしていない物件だった。
融資を受ける上で、登記されていることは必須条件である。
と言うのも、土地建物を担保にして低い金利で貸し付けを行うため。
もし、たれ家が支払いができなくなったら、その土地建物を返上して払ってください。となる。
ただこの土地建物を担保に入れることができることによって、低金利で融資を受けることが実現できる。(0.3~0.56%程度)
ただし、登記が条件であると。
登記をしたうえで物件販売するのが一般的ではありますが、
社長が扱う不動産は、土地が多く建物はあまり経験がないとのこともあり
全くその辺は考えていなかった。
(これで商売成り立つから凄い・・・)
じゃあ、なぜ社長は物件を購入できたのか?
それは現金一括払いだったからだろう。
社長に登記申請について相談することになった。
登記するには、土地家屋調査士に依頼する必要がある。
そこにもちろん費用も発生するわけだ。
20万程度は見ておかなければならないだろう。何とかならないだろうか?
社長に交渉だ・・・
ただ一般的には、物件を購入する場合融資を受けることがほとんど。
だから、登記は済ませた上で販売する。この部分を推してなんとか社長に費用を持ってもらおう。
妻との作戦会議で決まった。
社長に直談判すると意外な答えが返ってきた。
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