病院と読書

今年は新しい事にチャレンジしよう、と決めた矢先に新規開拓の病院が２つも出来てしまった。
そんなつもりで言ったんじゃないのに、とべそべそ泣きながら病院に通っている。

しかし、当方が子供の頃と比較して病院は綺麗になった。
田舎だったからかもしれないが、耳鼻科と歯医者はお化け屋敷の方がマシなくらい怖かった思い出がある。
蛍光灯がついてるのに薄暗いし、高齢の医師は声が大きく人話を聞かないし、そして大体両方とも行くと痛い思いするし。

それに比べると今の病院、クリニックというべきか。
ビジネスホテルのフロントの様に清潔でこざっぱりとして、場所によってはウォーターサーバーなんか置いてあってちょっと洒落てる。その上ネット問診や予約なんてサービスも嬉しいではないか。薬だって院内で受け取れる所もあって便利。

ただ、問題として、たっぷり三十分以上は待つ。

これに関しては当方のクリニック選びの問題なのか、はたまた全ての病院がそうなのかは分からぬが、予約しようが事前にネット問診をしようが初診だろうが再診だろうが薬だけだろうが関係なく待つ。何故か雨の日は三割増で遅いような気がする。　

最初は時間潰しにスマホゲームの周回とタスクをしていたのだが、それもなんとなく勿体無いような気がしてきた。

なんてったって数日前に日時予約して部屋から出て服を着替えて電車に乗って病院に来ているのだ、これはもう当方にとってはデートに近い。
書いていてこんな寂しい文章あるのだろうか。

通院をデートみたいって思ってる中年。
端から見たら寂しいどころか恐ろしいだろう。
しかも待ち時間にスマホゲームしてるし。

そもそも体調不良で病院に来ているので、どんなに清潔に整えられている場所でも、やっぱり気分は重いしなんとなくそわそわする。

それに（自意識過剰かもしれないが）平日の昼日中にいい大人がパーカージーンズスニーカーで（大体皆オフィスカジュアルかスーツである）スマホゲームしながら病院で時間を潰す、という図は客観的に見てぞっとしないのでは？と思い始めてから、スマホを触るのを止めた。

その代わり本を読むようにした。
こういう時、紙の本の心強さは（自分の心に）効く。なんとなく真っ当な人間に擬態できた気もするし。

仲間内では『ファッション読書』等と揶揄されたが、ファッション読書、上等ではないか。
折角なので【読み返したかったけど忘れていた本】で組んでみた。

■桜庭一樹
少女七竈と七人の可愛そうな大人

GOSICK、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない、少女には向かない職業、青年のための読書クラブ、私の男などで有名な桜庭一樹。
特に世代で言えばGOSICKは（当方の周囲5メートルは）皆読んでいたように思う。
私の男が発売された時は魂消たが、相変わらず好きな作家の一人。そしてジャケが美しい。

■伊坂幸太郎
オーデュボンの祈り

伊坂作品はタイトルがとにかく美しく、文体は風のようだ。
すっきりと整頓されてあるべき順番が守られている、そしてしっかりと驚かされる。
読む度にジンの様な本だと感じる。
実写映画になっている作品も多いが、アヒルと鴨のコインロッカーは是非一度本で読んでほしい。

■甲田学人の
MISSING 神隠しの物語

中学の時に部活の先輩に借りてから買い直した懐かしい思い出の一冊。
断章のグリムでもお馴染みの著者である。
現在は新装版で販売されているが、当方は初期の表紙が好きである。大体の紹介文に書かれている通り、伝記ホラーの傑作。

■森博嗣
スカイ・クロラ

スカイ・クロラ、ナ・バ・テア、フラッタ・リンツ・ライフ、クレイドゥ・ザ・スカイ、スカイ・イクリプスのスカイ・クロラシリーズ。
これについてはどうしてもハードカーバーで揃えたかったので、鬼の様な店主のいるラーメン屋で泣きながらバイトをした事を覚えている。
森博嗣作品は全部好きだが、当方が森博嗣を知る入口になった思い出深い一冊。

■奈須きのこ
空の境界

月姫が好きだから、という理由で手を伸ばしたら驚くくらい綺麗にハマってしまってDVDは全部買いました。
今読み返しても鮮やかに面白いし、病院の時間だけでは飽き足らず、帰りの電車で読んで乗り過ごした。

■辻村深月
冷たい校舎の時は止まる

元々メフィストが好きだったので手に取ったのだけど、厚みに恐れをなして『読めるかな……』とビビっていたら中間テスト前にも関わらず全巻読みきってしまった苦い思い出のある超面白いミステリ。
大事な用事が控えている時に頁を開くのは勧めない。当方はその週徹夜して次週の記憶がない。

病院通いは今年いっぱい続きそうなので、本もまだまだ増えていくと思うが、久しぶりに読み返してみると相変わらずスゲー面白くて驚いてしまった。
こうやって学生時代の本を読み返してみるのも良いなと思った所存である。お勧めがあれば是非是非教えてくだされ〜〜
以上本の防備録でした！