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PERCHの聖月曜日 101日目

1 鴻、まず、「暗黒」についての考えをききたい。「暗黒舞踏」……なぜ君のダンスはそう呼ばれるか。

鴻 暗黒舞踏は五十年代のおわりに土方巽がまずそう名付けた。当時、全ての芸術分野をおおう攻撃的な動きにまきこまれ、まきこみながら、彼はパフォームした。それは伝統的日本と近代的(アメリカナイズされた)日本に反対するマニフェストだった。彼は私のダンスの師だが「なぜ新しいダンスを彼が「暗黒舞踏」と名付けたのか正確には知らない。私個人としては、「暗黒」の意味を日常感覚をこえる何か説明しがたいもの、我々を原初的な、又、別の状態(アルタード ステーツ)に押し出す不可視の力、あるいは我々の世界のかくれた次元と解釈している。私のいう「暗黒」をいわゆる「オリエンタリズム」、「アジア神秘主義」、自然食、ヨガ、クリシュナ、集団瞑想、占星術、なんかと混同しないでほしい。私が今言った「暗黒」はそういう(ヨーロッパ人の心にとって)「エクゾチックな」テクニックや哲学––、そういいたいなら––ではなく、人間の普遍性、普遍的態度の、ある原初的基盤なのだ。例えば、変身への、法悦への、トランスへの、錯乱への、誘惑への、愛への、そして最後に死への欲望なのだ。

ーーー細川周平「舞踏子守唄」『室伏鴻集成』2018年,p386

I saw a flash of light, large and pale
Odilon Redon
1896


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