スクリーンショット_2019-12-18_12

相談件数28万件──「よりそいホットライン」は最後の砦。

本日、Yahoo!ニュース特集で、「「生きづらさ」抱えた人たちの“最後の砦”に──「よりそいホットライン」の寄り添い方」が公開されました。

企画を立て、取材を依頼してくれたのは、デスクの森健さん。写真は長谷川美祈さんと山本マオさんです。

まずは、「よりそいホットライン」の説明を、森さんがFBで的確に書いてくれているので、引用します。

「よりそいホットライン」というのは、「命の電話」のように困った人が駆け込みで電話できる相談窓口です。そういう相談窓口はほかにも複数あります。でも、ここはそうした電話相談とは、じつは相当違います。
何が違うのか。
相談者が「本当に何に困っているのか」(お金、暴力、心身の不調などなど)を突き止めたうえ、具体的な支援対策として、自治体(生活保護、社会保障制度全般)、医療(精神を含む)、住居(シェルターなど)、法的手続き(弁護士=借金の弁済)などを、寄り添ってナビゲートしてあげるからです。
要は、「傾聴」にとどまらず、実践として本当に相談者を助け、自立できる生活にもっていける活動をしているのです。

……取材は6月にスタート。10月に第一稿を書き、本日ようやく日の目をみました!(笑)本文5,000字程度なので、読んでくださると本当に嬉しいです!

*****

さて、この取材で私が学んだことについて、少し(いや長いか(笑))書きます。

今回の取材では「よりそいホットライン」を実際に利用した相談者と、その相談者を直接支援するコーディネーターを3組取材した。
3人の相談者(20代女性ふたり、50代男性ひとり)は、どなたも本当に深刻な人生を生きていた。共通するのは家庭内暴力。親との関係が破綻していた。精神科で病名がはっきりしている人が2名。もう1名も薬を飲んでいた時期が長い。
3人は、「仮名で、顔を出さないでいいなら……」と、勇気を出してこの取材を受けてくださった(50代男性は最後に顔出しを許可してくださった)。そして3人とも取材後に(それぞれ言葉は違うけれど)、「取材を受けてよかったです。話を聞いてくれてありがとうございました」というようなことを言った。
私はそのとき、取材を受けてくれた彼らが完成された記事を読んでも同じことを思ってくれるようなものを書かなければ、と思った。

だが、その道のりは決して平坦ではなかった。

夏に会った3人は、自分の厳しい経験や体験をきちんと言葉におきかえていて、ときには笑顔もあったし、涙を落とすこともなかった。輝く未来を信じ、その一歩を踏み出した人たち、に見えた。
しかし、第一稿が10月にできあがり、デスクと編集長の修正依頼に応え、11月に取材を受けてくれた人たち全員に提出したところ、あるコーディネーターから「(相談者)本人の精神状態がよくなくて、掲載を非常におびえています。写真と本文の掲載はなしにしてください」と言われたのだ(それでSWITCH時代の田中裕子の原稿のことを思い出して書いた)。
「よりそいホットライン」側は相談者のことを第一に考えるために、こちらの都合は考えない。当然だろう。でも、さすがに1パート丸ごと削除はできず、こちらも粘りに粘った。「本人とわからなければ掲載可能なんだ」と開き直り(笑)、読者が知りたいことと相談者が知られたくないことのポイントを探し、ぎりぎりまで原稿を直した。

大変だったけれど、いつでもデスクの森さんが話を聞いてくれ、励ましてくれた。編集の伴走ほど、心強いものはない。

それから、こちらの粘りを最終的には受け入れてくれたコーディネーターと相談者の皆さんにも心から感謝する。取材を受ける義理などないのに、企画を理解して受けてくださり、自分たちの守るべきもの(相談者)を守りとおしたコーディネーターさんたち、そして絶望の底から這い上がっていま新しい人生を踏み出そうとしている相談者さんたちを、本当に、心から尊敬しています。

取材後に「顔を出してもいいです」と言ってくれた高野さん(仮名)は、コーディネーターを通じて、こんな言葉を寄せてくれた。

「この記事や写真が、誰かの力になるのであれば、光栄なことです」

この言葉を、デスクの森さんとふたりで喜びとともに噛み締めた。大変さが吹っ飛んで、また取材したい、書きたいという気になる。さあ、今日も原稿を書こう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?