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透明なのかな

透明なのかな
そらのむこうは
とりわけ、まっすぐ続くそらのむこうが
透明かもしれない(わたしひとりぶんの、気圧の範囲)

朝焼け
うつくしいあか だいだい うすもも 群青
淡い夜のオーガンジーを透かして
朝の輪郭は橙色をしている
ひむがしの のに かぎろい
東の大気はあかとだいだいとうすももと群青の色をしている

まひる
透明なのかな まひるのそらの色
青い空と白い雲とやわらかな緑の木々を
ひとしく投影する透明の光
まひるに見る景色は真実?
あるいは白昼夢
なに色にも染まれないまひるの紫陽花
(もうすこし夕暮れに歩み寄れば、哀愁をまとうことができるのに)

夕焼け
薄い青の夕暮れのそら
ぼんやりと浮かぶ雲は夕焼けを反射している
積乱雲が反射する白い光
光のあたる雲って、うつくしいよ
夜を宿す雲の影も、うつくしいよ

ほら、陽は翳る
翳り、やがて射す

透明な午後の光は
ゆるやかにうつろう
うつろい、色をおびてゆく
(おわってしまった、と思う)
(透明なひるのまどろみはついえて)
(やがて夜をめざす斜陽が)
(わたしに手を伸ばす)
さらってくれるなら、この手を掴んでくれるなら
どれほど救われたのだろうか

あわい夕暮れの色
はちみつを溶かした色
古い写真と同じ光をしている
(もしかしたら、それは、おなじ温度なのかもしれなかった)
(おなじ色の記憶だった)
(あなたとわたしのめにうつる)

山なみを克明に描写する午後四時
正午の透明ではあらわし得ない丘陵と溪谷
幾重にも横たわる予定調和

透明なのかな
透明なのかな
透明になれたのかな
きよらかで在りたいな

わたしが わたしと 呼ぶ 意味でありたい

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