影響

叔父が死んだ。数年前に他界した叔母の旦那だ。

父方母方合わせて20人近くいる叔父叔母たちの中で自分のお気に入りだったし、唯一、一方的に心を許していた。当人たちにとって、自分はたくさんいる親戚の一人だっただろうが。

自分の両親は祖母の介護をめぐって、叔父と絶縁状態にあったし、それ以前に意見の合わないことがおおく、決して良い関係を築いてはいなかった。仕方のないことだ。叔父が亡くなった連絡を受けて、本当は母に電話したかったのだけど、ここ最近の関係悪化のせいで、叔父の名前を出すだけで母は不機嫌になっていたから、ただ胸の中にそっと収めたのだけど、仕事から解放された今夜は叔父や先になくなった叔母のことを思っている。

自営業をしていた叔父夫妻は、仕事が順調だったころは派手な暮らしをしていて、思春期だった自分はずいぶんと刺激を受けたのかもしれない。質素で地味な我が家と正反対な暮らしをしていた。トイレには本棚があって松下幸之助の言葉や、経営にまつわる著書などが並んでいて、壁にはモロッコ旅行の写真が飾られていたのを覚えているし、実家のトイレにキリスト教徒の母が飾っていた聖書の一説が書かれた置物とのコントラストは強烈だ。

大学一年のころ遊びにいって、夕食をごちそうになったとき、ワイン飲みながらガイアシンフォニーの話をしていた叔父と叔父の友人たちは、自分とは明らかに異質で別世界の住人のような印象だった。その異質さを両親は忌み嫌っていたけど、自分は面白く感じていた。

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