豊橋駅前交番がもたらしたもの

朝、倉敷を出て、JR在来線の各駅停車で東京に向かったことがある。途中神戸で友人と会い、食事をしたり観光をしたり、暗くなってからまた米原行きの新快速に乗り東へ東へ。

20代のころで、仕事も定職につかず、人生ってなんなんだろうって茫漠とした世界でただぽつんと生かされているような、心もとなさで日々を過ごしていた。その時倉敷にいたのも期間契約の仕事で数か月滞在して、契約満了を待たずに逃げ出してきたのだったし、所持金たいしてないからとりあえず実家に向かうため上りの山陽本線に乗り込んだものの、実家に帰ってからの予定だってなにもなかった。

神戸で会った、医療関係の仕事に就きいわゆるまともに生きている友人とのすれ違い続ける会話や、あわただしく乗り降りする会社員たちとの隔たりに必要以上気をとられまいと、暗い窓の向こうを見ていた。流れていく街の灯りと自分とを紐づけることのできない寂しさがあった。

米原で乗り換え、大垣を過ぎ、名古屋を通り、乗っていた電車は豊橋駅で止まってしまった。真夜中前で、もうその先に進むことはできず、精算をすまし、改札を抜け、豊橋の町に出てみる。何も知らない、誰も知らない町をうろつき、朝が来るのを待つにも、どこでどうすればよいのか見当がつかなかった。幸い、季節は夏で、どこでも寝ることはできたけど、蚊が寄ってくるのが嫌で公園で寝るのも嫌で、ただやみくもに歩き続けた。

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