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初代「開封大好きパイオニア王」への道

【はじめに】

「これで本当に良かったのか・・・?」
優勝が決まって最初の一言は、とても優勝者のそれとは思えないものだった。

2022年5月5日
ゴールデンウィークも最終日を迎える中、開封大好きイベント史上最大規模の大会が開催された。
参加者82名、スイスラウンド7回戦の後、トップ8による決勝シングルエリミネーションにて行われた「パイオニア」構築フォーマットによるマジックの大会『第1回開封大好きパイオニアグランプリ』である。

なぜ一参加者である僕が「開封大好きイベント史上最大規模」などと語っているかというと、普段は同イベントの運営側の人間として、長年サポートに携わってきたからである。
優勝が決まった瞬間、まず最初に喜びよりも困惑が勝った理由もここにある。

開封大好きイベントは、構築済みデッキを持っていなくても、誰でも気軽に参加できるよう「シールド」や「ドラフト」といったリミテッドフォーマットでの大会を中心に開催してきた。
初心者や復帰組の人でも楽しめるカジュアルなイベントを心掛けてきた背景がある。

そんな中、より競技性に焦点を当てた大会を初めて開催する運びとなり、主催のよしひろから、運営ではなくプレイヤーとして参加して欲しいとの依頼があった。

プレイヤーとして出場する以上、本気で勝ちに行くつもりではいたが、まさか優勝するとまでは思っておらず、今でも少し困惑している。
しかしこれほどの人数規模の大会で優勝するのも久々なため、せっかくの機会に大会レポート的なものを今回初めて書いてみることにした。

【デッキ選択】

今回使用したデッキは、昨年末頃から使い始め最近特に気に入っている『ラクドス・ミッドレンジ』

晴れる屋デッキ登録画面より引用

このデッキは王道のフェアデッキのため、良くも悪くもプレイスキルがそのまま勝敗に直結する。
使い始めた当初はあまり勝てなかったが、各デッキとの戦い方を理解していく内に徐々に勝率も伸びていった。

フェアデッキ故、倒したい相手に対し適宜チューニングを行うことが可能な点も気に入っている。
現在のパイオニアは、実に多種多様なデッキの活躍が見込める良環境と認識しているが、今大会ではクリーチャーを主体としたデッキを持ち込む人が多いのではないかと事前に予想した。
コントロールやコンボデッキなど、比較的プレイングが要求されるものは選ばれにくいと思ったのと、コロナによる久々の大会出場により、今回新たにデッキを組む人も何人かいることが予想された。
その際に手を出しやすいのが、昨年秋に発売された『パイオニア・チャレンジャーデッキ』から派生させた各デッキだ。
発売された4つのデッキの内、赤単・スピリット・オーラの3つはクリーチャーデッキである。

『ラクドス・ミッドレンジ』は元々クリーチャーデッキに対し強く構成されたデッキではあるが、サイドボードでも更に厚めの対策を取ることで、より安定したマッチ勝率を確保しようと考えた。
結果は見事にはまり、予選スイスラウンド初戦と準決勝以外は全てクリーチャーデッキと相対することとなった。

【対戦レポート】

R1 イゼット・コントロール 〇〇
最近よく見かけるようになったイゼフェニではない青赤のデッキ。
ナーセットによる手札破壊コンボを内蔵したコントロールデッキである。
初戦からメタ読みを外し、しかも流行りのガチデッキと当たり困惑する。
ポイントは如何に盤面にクロックを展開し、ナーセットの定着を阻止できるか。
1ゲーム目は先手スタートということもあり、それを維持できたためそのまま押し切り。
2ゲーム目は最速でナーセット着地から、次のターンに[集団的抵抗]で手札を枯らされ、その後に展開したクリーチャーも[焼けつく双陽]で流され完全に詰んだかと思われたが、相手のその後のドローが続かず、こちらの更なる後続クリーチャーとミシュランで削りきって勝利。

R2 青単スピリット 〇〇
今度は想定していたクリーチャーデッキとマッチング。
このマッチのポイントはハンデスで前方確認をし、適切なタイミングで除去を当てること。
ソーサリータイミングの除去は弾かれやすいので、それを如何に通すかが勝敗を分ける。
両ゲームとも後手ながら、2ターン目にクロックであり除去にもなる[税血の収穫者]が着陸。
ハンデスを通し、理想的なゲーム展開を作れて勝利。

R3 バント・スピリット ×〇〇
このマッチも基本的には青単スピリットとの戦い方と同じにはなるが、バントスピリットはマナ基盤の影響でライフペイが多くなることもあるため、除去よりもクロック展開を優先してライフレースで差し切るというプランにも意識が必要。
1ゲーム目は後手スタートによりライフを削られながらも、相手のクリーチャーと除去カードを順当に交換していく展開。
最後に残ったカード1枚に対し[思考囲い]を撃つのを躊躇しクロック展開を優先した結果、その残った1枚がカンパニーで負け。
ここのプレイングは正直今でも正解が分かっておらず、状況としては残った1枚がカンパニーなら[思考囲い]で抜かなきゃほぼ負け。
それ以外ならライフ2点保持とクロック展開を優先してライフレースに持ち込むべき盤面。
確率的にはカンパニー以外の方が高いためクロック展開を優先したが、相手の手札の動き的にカンパニーである可能性は比較的高いとも感じていた。
唯一の負け筋を潰しに行くべきだったとする考え方はあるのかもしれない。
2ゲーム目・3ゲーム目は、マリガン分の手札差も効いて難なく勝利。

R4 青単スピリット 〇〇
同じデッキということもあり、2ラウンド目とほぼ同じゲーム展開。
1ゲーム目・2ゲーム目共に[思考囲い]→[税血の収穫者]と動くことができた。
違った点としては、今回はハンデスで前方確認することをカウンターで阻止されたが、しっかりと相手のタップアウトのタイミングを見計らって除去を当てることができたため勝利。

R5 黒単ゾンビ 〇×〇
このマッチも基本的な戦い方は他のクリーチャーデッキと同様にはなるが、最後に[変わり谷]で押し込まれないようにするため、インスタント除去の温存が課題となる。
相手もソーサリータイミングの除去が効かない[変わり谷]は大事にしたいと考えているため、起動されてフルパンされたら困る状況であれば、除去を持っている“顔”をすることも時には大事になる。
1ゲーム目は後手スタートながらも[思考囲い]で覗いた相手のハンドがあまり濃くなく、適当に除去を重ね、墓地から戻るクリーチャー達も[墓地の侵入者]で掃除して勝利。
2ゲーム目も同じく[思考囲い]から入る展開となるが、先程とは打って変わって相手のハンドがかなり濃いめ。
[ラゾテプの肉裂き]が3枚あり、全体除去が入っていないこのデッキとしては相当な苦戦を強いられる予感。
1ターン目に展開された[滅びし者の勇者]が5/5にまで成長し[致命的な一押し]も引けず敗北。
3ゲーム目は序盤こそ順当にクリーチャーと除去の交換が行われるも、相手の後続が土地だらけとなり勝利。

R6 ID(合意による引き分け)
この時点で全勝が僕と対戦相手の2人のみだったため、お互いに決勝シングルエリミネーションへの進出がほぼ確定するIDを選択。

R7 5色人間 ×〇〇
対戦相手の意向もあり、IDせず対戦開始。
1ゲーム目は後手スタートからカンパニーを2回通され、そのまま物量で押し切られて負け。
2ゲーム目は先手[思考囲い]から、除去→除去→[ゲトの裏切り者、カリタス]で蓋して勝ち。
3ゲーム目もクリーチャーを除去で捌いた後、[墓地の侵入者]でライフレースを差し切って勝利。

これで予選スイスラウンド成績が6-0-1となり、1位で決勝シングルエリミネーションへ進出!

準々決勝 5色人間 (R7の対戦相手) 〇〇
つい15分ほど前に対戦した相手とまさかの再戦。
最終戦のID卓が思ったより発生せず、5-2のオポ上位としてベスト8に滑り込んだとのこと。
お互いの手の内が全て分かっている状態で対戦開始。
1ゲーム目は予選1位抜けの恩恵で先手スタートから[思考囲い]で消耗戦に持ち込み勝利。
2ゲーム目も後手ながら、相手1マリガンでカンパニーキープしたハンドを[思考囲い]で崩して勝ち。

準決勝 イゼット・フェニックス ×〇〇
今大会一番の正念場だった。
元々そこまで有利の取れているマッチアップではない上に、今大会ではクリーチャーデッキに対するガードを上げてきた半面、サイドの枚数的にイゼフェニへのガードはかなり下げざるを得なかった。
1ゲーム目は先手2ターン目の[税血の収穫者]と、4ターン目の[反逆の先導者、チャンドラ]がライフを削りにいくも、残り3点まで削ったところで盤面を一掃され、同時に3体のフェニックスが蘇り敗北。
2ゲーム目は、相手の2ターン目[氷の中の存在]の返しに[真っ白]で消耗戦に持ち込み、その後[ゲトの裏切り者、カリタス]が定着して勝利。
3ゲーム目は相手が先手1マリガンからスタートし、まずは[強迫]で除去を落とすことに成功。
2ターン目の[氷の中の存在]に対し、こちらも[税血の収穫者]を展開。
土地を置くだけの相手3ターン目に対し、こちらは[墓地の侵入者]が着陸。
4ターン目に相手が手札2枚を残してフェニックスを通常キャストしてきた返しに、[氷の中の存在]を[血の長の渇き]で除去した上、[真っ白]でハンドと墓地を飛ばしたところで勝負あり。

決勝 青単スピリット (R4の対戦相手) 〇〇
ここでもスイスラウンドで当たった相手との再戦。
予選1位抜けなのである程度は順当なのかもしれないが、決勝SEに残ったメンバーが僕、R3の相手、R4の相手、R5の相手、R6でIDした相手、R7の相手+2名という構成。
この試合に関しては『開封大好きよしひろ』チャンネルの動画内にて、対戦映像付きで解説を行っているため、是非そちらを見ていただきたい。

【おわりに】

こうして初代『開封大好きパイオニア王』となったわけだが、全体的にかなり運が良かったと思う。
大会中の全ゲームを通して、マリガンしたのはたったの1度だけ。
ほとんどのゲームで理想的な1,2ターン目の動きが取れたことも大きい。
次回もプレイヤーとして出場するか定かではないが、もし出る機会があればせっかくだし連覇を狙ってみようと思う。

最後に、このデッキを使ってみたい人(いるか不明だが)向けに、各マッチアップにおける僕なりのサイドボードプランを紹介して終わろうと思う。

【サイドボードプラン】

まず初めに僕自身もこのデッキを完璧に使いこなせているわけではなく、また先手後手によっても微妙に変えていく必要があるため、あくまでサイドボーディングの一例として紹介できればと思う。

対 イゼット・コントロール
IN
2[強迫]
3[真っ白]
OUT
3[致命的な一押し]
2[ゲトの裏切り者、カリタス]
クロックが遅く絆魂も無意味なカリタスと、当て先が少ないプッシュを抜いて各種ハンデスを追加。
[血の長の渇き]はナーセットとニヴ・ミゼットに当てれるのでプッシュよりは有用。

対 青単スピリット
IN
1[レイ・オヴ・エンフィーブルメント]
2[強迫]
2[軍団の最期]
2[コラガンの命令]
OUT
2[死の飢えのタイタン、クロクサ]
3[鏡割りの寓話]
2[反逆の先導者、チャンドラ]
極力タップアウトしたくないマッチアップ。
常にマナが起きているだけで相手は戦い辛い。
除去を構えながらクリーチャーを展開できれば勝利は近い。

対 バントスピリット
IN
1[レイ・オヴ・エンフィーブルメント]
2[害悪な掌握]
2[軍団の最期]
2[コラガンの命令]
OUT
2[死の飢えのタイタン、クロクサ]
3[鏡割りの寓話]
2[反逆の先導者、チャンドラ]
基本的には青単スピリットと同じだが、[強迫]の的はカンパニーしかないため追加では入れない。
対戦レポートでも書いたが、除去構え一辺倒ではなくライフレースを意識することも大切。

対 黒単ゾンビ
IN
2[軍団の最期]
2[コラガンの命令]
OUT
1[強迫]
2[死の飢えのタイタン、クロクサ]
1[反逆の先導者、チャンドラ]
あまり経験の無いマッチアップだが、[変わり谷]に対する立ち回りさえ意識できていればそう難しくはないはず。

対 5色人間
IN
1[レイ・オヴ・エンフィーブルメント]
2[害悪な掌握]
2[軍団の最期]
2[コラガンの命令]
OUT
2[死の飢えのタイタン、クロクサ]
1[強迫]
4[鏡割りの寓話]
トークンは[反射魔導士]等で消されるだけなので[鏡割りの寓話]は全抜き。

対 イゼット・フェニックス
IN
1[強迫]
3[真っ白]
OUT
4[思考囲い]
明らかにサイド枠が足りていない。
[思考囲い]はライフを失うは、相手の墓地が肥えるはで何も強くない。
ハンド確認なら[強迫]で事足りる。
クリーチャーを落としたいことはまずない。
[墓地の侵入者]と[真っ白]を何枚引けるかが勝負のカギ。

ここからは今回当たらなかったが、良く見かけるデッキに対するサイドボードプランの一例

対 ナヤ・ウィノータ
IN
1[レイ・オヴ・エンフィーブルメント]
1[大群への給餌]
2[害悪な掌握]
2[軍団の最期]
2[コラガンの命令]
OUT
1[強迫]
2[死の飢えのタイタン、クロクサ]
4[墓地の侵入者]
1[不笑のソリン]
一般的には不利マッチとされることもあるが、正直そこまで苦手意識は無い。
相手もキープ基準が厳しいため、ハンデスや除去といった1:1交換は突き刺さる。
ウィノータの能力さえ誘発させなければ負けることはまず無いため、ミッションは非人間生物の殲滅。
消耗戦から[トヴォラーの猟匠]をトップされるのは確かに脅威だが、事前にマナクリをしっかりと消しておけば6マナはそう簡単に出るものではない。

対 赤単
IN
2[強迫]
1[大群への給餌]
2[軍団の最期]
2[コラガンの命令]
OUT
4[思考囲い]
2[死の飢えのタイタン、クロクサ]
1[反逆の先導者、チャンドラ]
サイド後は向こうも除去やPWを増やしてくるので[強迫]は有用。
2点ペイが痛いので[思考囲い]は基本全抜き。
[大群への給餌]はライフペイが痛いが[乱動する渦]が破壊できるなら払う価値はある。

対 緑単信心
IN
1[強迫]
2[軍団の最期]
2[害悪な掌握]
OUT
4[墓地の侵入者]
1[不笑のソリン]
かなり厳しいマッチアップ。
基本的にはハンデスや除去を駆使して消耗戦に持ち込む形になるのだが、如何せん相手の方がトップしてインパクトのあるカードが多く採用されている。
[老樹林のトロール]を1枚で対処するカードが[思考囲い]しかないのも辛い。
消耗戦から如何に早くクロクサを脱出させて殴り切れるかが勝負の分かれ目。

対 青白コントロール
IN
2[強迫]
3[真っ白]
OUT
1[血の長の渇き]
2[致命的な一押し]
2[ゲトの裏切り者、カリタス]
基本的な考え方はイゼット・コントロールと同じ。
[血の長の渇き]が放浪皇やテフェリーに通ることはまず無いため、インスタントタイミングで出てくるサメトークンや侍トークンに効くプッシュの方が有用。

対 ロータス・コンボ
IN
2[強迫]
3[真っ白]
2[屍呆症]
OUT
1[血の長の渇き]
4[致命的な一押し]
2[ゲトの裏切り者、カリタス]
メイン戦は絶望的なマッチアップの為、サイド戦2本を取り返すことが必須となる。
基本的にはハンデスで手札を飛ばして殴りきるか、[屍呆症]でコンボパーツを抜くか。
除去は全抜きしてしまうと、リーアやウギンに蹂躙されるため最低限は残すように。

対 ラクドス・ミッドレンジ
IN
2[軍団の最期]
1[大群への給餌]
2[コラガンの命令]
OUT
1[強迫]
4[思考囲い]
「フェアデッキミラーはトップして弱いカードは入れるな」の教えに従い1マナハンデス全抜き。
太いカードをより多く引いた方が勝つ。

以上。
これら以外にも今のパイオニアでは、他にもたくさんのデッキを目にすることがあるが、全部を挙げていくとキリがないため今回のところはひとまずこの辺で締めようと思う。
ここまで読んでくれて本当にありがとう。
それではまたいつかどこかで!

★番宣★

YouTubeの『実況大好き』というチャンネルにて、MTGアリーナの実況プレイを中心に配信中!

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