宙「そら」を読む

 新しい街での生活が始まってから数日が過ぎた。
 転職に伴い地方都市へ移り住んだ私は、まだ荷物の整理もままならず、少し寂しさを感じていた。
 そんなある日、街角に佇む一軒の書店を見つけた。

 今では珍しくなった実店舗型の大型書店。
 扉を開けると、古き良き雰囲気漂う大型書店が広がった。本の香りが漂い、迷路のように入り組んだ書架が目に飛び込んできた。
 私はSF小説のコーナーへと足を運び、その中で一人の女性を見つけた。

 彼女の名前はβ。
 ショートカットの髪が風に揺れ、大きな瞳が本を覗き込んでいた。

 私は思わず声をかけた。

「あの、その作品、好きですか?」

 彼女は驚きながらも微笑んで答えた。

「はい、大好きです。
 この作品の世界観が好きなんです。」

 それが私たちの出会いの始まりだった。
 SF小説への情熱を通じて意気投合し、二人は書店内のカフェでコーヒーを飲みながら、時間を忘れて語り合った。
 βは想像力に富み、知的好奇心旺盛な人物で、その話術に私も引き込まれていった。

「βさんって、SF小説でどんなところが一番好きですか?」
と私が尋ねると、彼女は熱く語り出した。

「絶体絶命のピンチを乗り越える主人公たちの勇気に惹かれます。
 彼らの希望を見つける姿勢には、本当に勇気をもらいます。」

 その言葉に私も共感し、
「特に○○△△のシーンは、本当に胸が熱くなりましたね」
と答えた。

 二人はSFの世界での思い出やお気に入りのシーンについて語り、お互いの心をより深く知ることができた。その日、私は街に馴染めるか不安だった気持ちが、少しずつ和らいでいくのを感じた。

「SF小説って、本当に奥深いですよね」
と私が言うと、βは微笑みながら同意した。

「未来の可能性を考えるきっかけにもなりますし、新しい知識や考え方を学ぶこともできます。」

 時間はあっという間に過ぎ、別れ際、βは優しく言った。

「今日は本当に楽しかったです。またお話ししましょうね。」

 私は彼女の笑顔を見送りながら、心の中で思った。

 この街での新しい生活、本当に良かった。

 書店という名のオアシスで、私は想像を超えた出会いを見つけた。これからβと過ごす時間は、きっと私の生活を彩ってくれるだろう。

(了)