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壁画を描く前の下地剤について

今回は3月に佐賀県多久市で行われたウォールアートプロジェクトでの経験を活かして、壁画の下地剤について、他のアーティストさんとも情報共有したので、ここに記録しておきます。シーラー、プライマー、キャンバスならジェッソ、壁画もジェッソでしょ?という人、いると思います。なんなら、人によっては下地剤塗った事ない、なんて人も中にはいると思うので、それも踏まえて、今回は屋外の壁画製作(屋内にも適用するがおそらくここまでの強度は必要ないので補足程度)について、説明します。

アーティストとは言っても、こういうのがわからないと本当困ることがあります。結局現場に放り投げられるのがアーティストなので、なんでも勉強しておくと◎。

前回 (壁画塗料は何を使う?) について


前回は、近年壁画専用塗料が数多く販売された事で、どんなものが良いのか?油性じゃなくても良いの?アクリルじゃないの?外壁塗装ならシリコンでしょ?最近はラジカル制御型ってのもあるらしい....なんてのも、説明させて頂きました。
壁画はあくまで絵画として制作したい、デザイン画として制作したい、広告的に文字デザインを重視されてる。など用途が、一般外壁塗装とは違うものの、基本的には屋外で耐久性のある、色褪せない、汚れたら洗えるのか?など共通する部分も多くありましたので、読んでもらえた方には、その恐ろしさや大切さも含めて分かってもらえたのではないでしょうか。自分も失敗して、また失敗に気づかずに経年劣化した壁画にショックを受けたり、直したり、もっとこうすれば良かった....と反省して、今ここに記録しています。前回のリンクも貼っておきますね。

https://note.com/holhy/n/nc947f8fdd929

長くなりましたが、今回はその塗料のさらに大切な部分、「下地」塗料についてです。

下地剤の重要性と種類
やり直したり修復したり、本当に相手が優しいクライアントさんで助かりました。精神的にかなりきました。って経験があるので、今回は、自分的にですが、超重要回です。ほとんどのベテランアーティスト、プロの塗装屋さんは「下地7割!」というほどです。ではまず下地剤はどんな種類があるのか、から見ていきましょう。

①シーラー
②プライマー
③ジェッソ
④塗らない場合
この4つからいってみます。また塗装の下塗りの下地の素材がなんなのかについて、⑤モルタル、⑥サイディング、⑦鉄部、⑧木部、という流れで説明していきます。

まず①〜③まではそのものの説明、⑤からは相性について説明します。

(※なお今回はインターネットの文章、youtubeを見て調べたものです。前回の塗料のように、各種メーカーに問い合わせた訳ではありませんので、値段や優れたメーカーなどについては都度お調べいただけますと助かります。今回は、前回の反響で下地剤の質問が多かった為、簡易的ながらも要点だけお伝え出来ればという感じです。)


①シーラー

4kg 6380円(税込)


一番は「シーラー」から説明します。シーラーとは、「密封」「密閉」という意味のSeal(シール)が名前の由来となっており、密着性を高めることに加え、塗料の吸い込みを防ぐことができる下塗り用塗料です。
シーラーは「水性」と「油性(溶剤)」の2種類のタイプがあります。水性タイプのシーラーが最も使用されていますが、コンクリート、モルタル、石膏ボードなどの限定された下地材でしか使用できなため、それ以外の下地材の場合には、油性(溶剤)タイプのシーラを使用します。


②プライマー

4kg  8250円(税込)


プライマーは、基本的にはシーラーと同じ役割を持つ下塗り用塗料で、明確にシーラーとの違いが決められているわけではありません。
様々な材質に対応していて、プライマーとして販売されている商品の中には、錆止めの効果を持つものがあるため、基本的には鉄やステンレス、アルミなどの下地材に使用します。
プライマーにはサビ落としの効果はないので、下塗りをする前に下地材に発生したサビを除去してから、塗装する必要があります。

③ジェッソ

4kg 13376円(税込)


ジェッソはアクリル絵の具でキャンバスに描く場合に使われる下地剤です。この後説明しますが、壁画を描く場合に、キャンバスが貼られていて整った下地であれば問題ないですが、壁画となると、下地のもともとの素材がなんなのかが重要となります。下地剤としてジェッソを使って、剥がれてしまうケースは多いはずなので、屋外で描く場合はこれから説明する下地の素材がなんなのかを調べてから下地剤を塗り、ジェッソはそれらを塗った上で塗る分には問題ないですが、その下地剤を塗った時点で、ジェッソを塗る必要はなくなるので、基本的な歯使わないと考えるべきかと思います。

④塗らない
えー、これも過去めちゃくちゃ自分もやった事あります。素人だったり無責任でも構わない、という場合には良いかもしれませんし、現在の優れた塗料であれば問題ないことも全然あるのですが、剥がれる可能性もあるので、博打を打つのではなく、ここで一度確認して覚えておくと今後の役に立てると思います。

特例フィラー
ひび割れたり痛んでる場合の下地に有効です。微弾性フィラーなるものがありますが、これは外壁塗装業や壁自体の劣化がかなり関係するので、壁画アートをやる、という前提では、これは使わない。使うとしても壁の劣化の責任までは負えない旨を説明してあげると良いかと思います。


以上が、下地剤の説明です。③ジェッソと④塗らないについては、以後やらないようにしてもらえたらと思います。そして全ての壁に必須なのは、高圧洗浄機をかけること。これはホームセンターやレンタル業者で、3泊4日で、6800円とかですので、絶対やるようにしましょう。せっかく描いた壁が汚れてたせいで、剥がれるなんてのはあってはならないことですから。

さて、ようやくですが、「下地の素材」×「何を塗れば良いか」を始めます。ここからが重要です。

⑤モルタルの場合


まずモルタルというよくある壁の下地からいきます。これに適した下地剤は、シーラー or プライマーです。合わせて、その前の処理として、高圧洗浄が必須になります。高圧洗浄なんて、絵描きにはかなりtoo muchじゃない?やりすぎというか、女性アーティストには悲鳴に近いものが聴こえてきそうですが、ホームセンターで簡単に借りれます!そして、水場と電気があれば全然やれる範囲です。近くに男性がいるなら協力して一緒にやってもらいましょう。
その上で、シーラー or プライマーを塗ります。これぶっちゃけどっちでもいいです。上記の説明では、シーラーの方が良い気が....って思いますよね?自分はシーラーの方が良いかなと思ってるので、このように説明してます。ただしプライマーでも全然大丈夫です。

⑥サイディングの場合


ちょっとおしゃれな家にありそうな、ショッピングモールなんかでもよく見かける壁です。これは壁画描く、という意味ではあまりないかもしれません。というか、自分は過去80回くらい壁画描いてますが、一回もなかったです。これは一般外壁塗装の工事の方が詳しいのですが、もともとサイディング自体が12〜15mmで、何層かの膜が張られている為、劣化してくると塗料関係なく、それ自体が剥がれる場合がある。とのことです。これは、壁自体の劣化なので、やる前に改めてこの壁はなんの素材なのか?というのを確認しましょう。

⑦鉄部の場合(トタン)


サビ、が1番の難関です。これもシーラー、プライマーの2度塗りなどでもいいのですが、サビ止めの防止加工がされた下地剤で2液のエポキシを使うのが塗装業では一般的だと言われてましたが、近年は水性で良い質のものがあるので、水性の1液(2種混合してその日のうちに塗るタイプの塗料を2液といいます。混合せずにその日のうちに使わなくても使えるタイプを1液といいます)を使うと良いでしょう。可能なら油性の方が密着は高いですが、2液の油性は上に水性塗料で塗れない、はじいてしまう場合もあるので、ここら辺は塗装屋さんレベルじゃないと分からないと思うので、オーナーさんに断って、1液の水性エポキシを、しっかり高圧洗浄とサンディングでサビを剥がした上で塗る。というところまでで良しとすべきかと思います。

これだけでも鉄部(トタンも含む)って大変だな、と思うかもしれませんが、そうなんです。大変なんです。なので、下地が鉄部の時は要注意です。

⑧木部の場合


これもあまりないとは思いますが、例えばコンパネに絵を描いてそれを屋外に飾る、というケースは過去何回もありました。しかし、木部はどうしても剥がれる、腐る、という可能性が一番高くなります。なので、木部用下塗り剤、サビ止め、シーラー、プライマー、これ色々いけるんですが、塗料メーカーは木部用下塗り剤、というのが各種出てますので、こればっかりは都度メーカーに確認するのが、一番持ちが良いはずです。ただし、それでも木は剥がれやすい、腐りやすい、ので、それを理解した上で制作するようにしましょう。

以上が、基本上塗り塗料が水性塗料(シリコン、アクリルなど)前提の下地剤の説明となります。

今回の説明の上で、鉄部や木部を塗るとして、油性の塗料を使ってくれ。と言われた場合は、油性の下地剤を使うようにしてください。

今回はメーカーなどの下調べはなく、ざっくりとしているかもしれませんが、何も知らない....という方には参考になれば幸いです。近年は本当に技術革新が早いので、上記も踏まえた上で、塗料メーカーさんに下地剤については問い合わせてみてください。


次は、ついにラストです。コーティング剤について説明します。
せっかく描くなら失敗しないように、誰かの役に立てれば幸いです。たぶん壁画アートやる人の人口はめちゃくちゃ少ないからこそ、聞けないし教えてもくれないし知らない人がほとんど。しかも大きなプロジェクトになればなるほど、やらかしたらやばい。ってことで、過去80回くらい壁画描いた上での反省も活かす為にあえて
自分も自分のためにこれを書いてます。結構、壁画描く仲間と、こういう話で飲み会やっても、結論出なかったりして、悶々としたこともあったので笑 
今後はミスのない、相手にも自分にも納得のいく施工が出来るように、壁画アートの基礎知識として遵守していこうと思います。ではまた!


HOLHY

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