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粉じんとは何ですか?

小さな土ぼこりや金属の粒などの無機物または鉱物性の「粉じん」(石綿も粉じんに該当します)の発生する職場において、労働者が長年にわたり仕事をしていると、その粉じんを長期間にわたって大量に吸い込むことがあります。この結果、吸い込んだ粉じんに対し、肺が反応し、変化を起こして病気になることがあります。この病気を「じん肺」といいます。

粉じんはどのような健康障害を引き起こしますか?

粉じん作業やじん肺に関する法令には、労働安全衛生法、労働安全衛生規則に加えて、じん肺法と粉じん障害防止規則等があります。じん肺法第2条で
は、じん肺とは粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病と定義されています。「線維増殖性変化」というのは、肺が異物である粉じんを吸入し続けてしまった時に生体の対処能力を超え、結果として肺に不可逆的な変化が発生した状態を意味します。この状態がじん肺であり、発症まで10年以上の経過をたどることもある上、根本的な治療法は現在においても確立されておらず、ひとたび発症すれば悪化させないことが治療の目標となります。そのためには、さらなる粉じんばく露の回避に加えて、禁煙と感染予防が大切です。
 また、じん肺と密接な関係のある疾病を合併症と呼び、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺がんの6種類の合併症が認定されています。これらの疾病はじん肺と因果関係があり、労災認定との関連とともに、治療の対象となります。

じん肺検診とはどのようなものですか?

現在も雇用する「常時粉じん作業に従事する労働者(過去に常時粉じん作業に従事したが、現在は非粉じん作業に従事する労働者も含みます)」の健康管理のため、事業者は次のとおり、じん肺健康診断を実施しなければなりません。

じん肺健康診断の検査項目 〔じん肺法第3条〕

じん肺管理区分はどのように決定されますか?

じん肺はどのように健康管理されますか?

粉じん作業の健康管理は、じん肺法によるじん肺健康診断、じん肺管理区分により行います。事業者は常時粉じん作業に従事する労働者に対して、定期に実施するじん肺健康診断を、じん肺の所見がない場合は3年に1度、じん肺の所見がある場合には1年に1度実施します。
 次に、じん肺健康診断を実施した結果、じん肺の所見のある労働者については、事業者はX線写真とじん肺健診結果証明書を労働局に提出し、地方じん肺診査医による診査を経て、じん肺管理区分が決まります。

粉じん対策として保護具はどのように使用しますか?

作業環境管理の徹底により、発生・浮遊する粉じん量を抑えこむことが最も望ましいわけですが、なかなかゼロになるわけではありません。そのため、粉じんを吸入しないために防じんマスク等の呼吸用保護具の適切な選択と使用は必須となります。
 呼吸用保護具には、酸素濃度18%以上で使用するろ過式と18%未満で使用する給気式があり、酸欠の危険がある作業場ではろ過式は使用できません。また、ろ過式では対象となる物質の状態により使い分ける必要があります。
 粉じんのように微小な固体の場合は防じんマスクが必要ですが、例えば有機溶剤等の気体となる有害物質も同時に存在する場合には防じんと防毒の両方の機能を持つマスクが必要です。このように、作業状況に応じて適切な呼吸用保護具を選択します。呼吸用保護具は国家検定品を使用する必要があります。
 さらに、呼吸用保護具の適切な使用の注意点として、マスクのフィットテストがあります。マスクは顔面に密着しているかが非常に大切であり、サイズや形状が合わない場合や、労働者がタオルや接顔メリヤスをあてている場合、さらに労働者の髭や前髪等の髪が間に入っている場合にはその隙間から粉じんを吸入してしまうことになります。このため、フィットチェッカー等を用いて、密着性のテストを行います。なお、マスクの保守管理を適切に行うことも必要です。予備の防じんマスクやろ過材を常備し適宜交換すること、使用後は清浄な環境下で破損や亀裂、ゆるみ等を点検すること、保管は清浄な場所を確保すること等に留意します。
 また、近年は電動ファン付き呼吸用保護具が普及してきており、防じんマスクよりも吸気抵抗が少なく呼吸が楽であること、有害物質の吸入防護に高い性能を有していることから使用が強く求められています。

特定粉塵じん作業とは何ですか?

粉じんは、その大きさ(特に粒径が5μm以下)が小さいほど空気中に浮遊しやすく、かつ見えにくく、吸入した場合に肺の奥の細い気管支まで届くため、じん肺になりやすくなります。このことも考慮して、粉じん障害防止規則では作業内容、態様、発生源等から「粉じん作業」や「特定粉じん作業」を定義しています。特に、粉じん濃度が高くなる発生源や作業を「特定粉じん発生源」、「特定粉じん作業」といい、より厳しい措置が規定されています。その代表的なものとしてずい道(トンネル)等建設工事に関連した作業や屋内の粉じん作業等が含まれます。


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