クリスチャン・アストロロジー1巻7章

ずいぶん前になりますが、集合知によって『キリスト教占星術(Christian Astrology)』(William Lilly, 1647年)を日本語訳しようというCA projectを立ち上げたことがあります。このプロジェクトは1巻7章(Book I Chapter VII)の翻訳を終えて後が続きませんでした。しかし筆者自身にとって中国占術の解釈の幅を大きく広げてくれるものでした。

既に『クリスチャン・アストロロジー 第1書&第2書.』という訳書が出ているので、今更公開するのもなんですが、私蔵しているだけなのも勿体無いですし翻訳の違いを楽しむのも良いかと思います。原文はデボラ・ホールディングさんのサイトから許可を得て使用しました。以下、本文です。

12のハウス(室)の性質と象意

既に語ってきたように天には12のサインがありますが、12のハウスもあります。ハウスについての正確な知識は必須で、ハウスについての正確な理解抜きで、惑星とサインの性質を学ぼうとする人は、まるで軽率な人物で、置く場所もないのに色々な家財道具を持とうとする人の様です。この世界の人生で、人体の一部であるような12のサインと関わりがあるが、天の12のハウスのどれとも関わりが無いなどというものは一つもありません。
12のハウスは人の幾つかの部分を象徴するだけではなく、人の行動とその人の人生や生活の質をも表します。占星術の先師達の興味と見解は、ある特定の象意をそれぞれのハウスに割り当てるといったものでした。それで人に起こる出来事を12のハウスすべてに分類したのです。というのは、問題がそれらの室のどれに属するかを知る者は、全ての偶然の出来事やその結果について、理知的な答えを判断しまたは与えるのに必要な根拠が足りないということがないからです。

1室とその象意

1室は天の全てを含んでいます。1室は第1のカスプから2室が始まるカスプの直前までを占めます。質問者もしくは生まれた人の人生、背の高さ、色、顔色、身体つき、顔を現わします。
蝕やグレートコンジャンクション(北斗柄注:木星と土星の合)、その年での白羊宮への太陽の入宮が発生した時刻において、1室はチャートを作成した場所にある王国の一般的な状態やその国の民衆を意味します。そしてそれが最初の室なので、この1室は人体の頭部、や顔面をあらわします。
質問を受けた時刻や、出生時のチャートにおいて、1室に土星や火星、ドラゴン・テールがあると、顔にいくつかの汚点?(黒子やシミ、傷)といったものを観察することになるでしょう。例えば白羊宮が上昇宮であるとすると、間違いなく頭か顔にしるし、ほくろ、または傷跡があります。そして、もし上昇の度数が小さい場合には、そのしるしは頭のより上の部位にあります。もしカスプがサインの中間にあるなら、ほくろ、マーク、または傷跡が、顔の中央部かそれに近いところにあります。もし上昇の度数が後の方であるなら、あごの近くとか首のあたりで顔に傷があります。これについて私(William Lilly自身のこと)は、数百の実例を見ました。
色についていうと白です。この白の象意を持つ1室に天体が回座していると、天体の象意でしめされる人の顔色はより血の気がなかったり、白かったり、青白かったりします。もし誰かの服の色を問われたとき、誰かを象徴するものが1室にありサインについても一致していた場合には、問われた服の色は色が白かグレーもしくはそれに近い色であると主張します。またもし家畜について質問された場合に、家畜を象徴するものがこの1室にあれば、これは牛の色は白かそれに近いことをしめします。
この1室は男性格です。この室は白羊宮と土星で象徴されます。何故ならこの室が最初の室で、白羊宮は最初のサインで土星も最初の星だからです。であるので、土星がこの室で適度によく強化されていて、木星、金星、太陽または月と情け深いアスペクトを持つ場合には、身体面で良好であり通常は長命であることが約束されます。
水星はこの室のJOYでもあります。なぜなら水星は、頭や彼の舌、空想、および記憶を表しているからです。水星がこの1室にあって品位が高い場合には、水星は良い演説者をしめします。
1室は上昇宮と呼ばれており、そのため太陽がこの1室のカスプにくると、太陽は地平線に上昇して現れ見えることになります。

2室に関連した質問

この2室からは、質問者の地所や富についての必要な判断、つまり、質問者が問うところのお金持ちか貧乏か、動産、お金の貸借、利益、お金の増加、損失、損害といった事柄を判断します。訴訟では友人またはアシスタントを意味しています。私的な決闘においては質問者の介添人です。
蝕やグレートコンジャンクションが発生した時刻でのチャートにおいて2室は、人々の貧窮や富裕を表します。太陽については、太陽が白羊宮に回座する時刻でのチャート(つまり春分図)では2室は、国家の武器弾薬や軍事同盟、援助をあらわしています。また弾装を意味することもあります。
人体においては首や肩とそれの後ろの部分を表しています。
2室の現わす色は緑です。
上記のようなものについて必要がある場合には、2室の意義に基づいてこの室で探さなければなりません。
2室は女性格で、何人かのラテン語文献の作者から『未昇室(anaphora)』と呼ばれ、サクシーデントです。
2室は木星と金牛宮で象徴されます。なので、木星がこの室にあるかこの宮の支配星である場合には、地所または富についての質問です。
太陽と火星はどちらも2室でよい位置が無く、太陽や火星の2室への回座は、質問者や生まれた人の能力の大きさや質にもよりますが、潜在的に拡散することを表しています。

3室

3室は同業者、姉妹、いとこまたは親類関係、隣人、小さい旅、または内陸旅、1つの場所から別の場所への移動、書簡、手紙、噂、メッセンジャーを象意に持ちます。
3室は、肩、腕、手、および指を支配します。
色については、赤、黄色、橙色?または栗毛の色を支配します。
3室は火星と双児宮によって象徴されます。そのため3室の火星が土星と座相をもってないなら、あまり不運ではありません。
3室はケーデントであり、月がJoyです。なので、もし月が3室にあって、しかも3室が移動の宮(カーディナル)なら、質問は多くの場合、旅行や駆け足、重い足取りでの歩き、またはほとんど静かではないことについてです。
3室は男性格です。

4室

4室では父親についての一般的な事柄や質問者や生まれた人の父親についての事柄を判断します(北斗柄注:リリーの時代の英国では父親が家庭を支配していた。晩餐において肉を切り分けるのも父親の役割であった。)。他には領土、家、共同住宅、継承、地上の耕作地、隠された宝物、何かを決定することもしくはその終わり、周囲を囲む城壁の有無に関わらず、町、都市または城、すべての古代の住居、庭、畑、牧草地、果樹、購入する土地がトウモロコシ畑なのかブドウ園なのか、それともそうでないのか等の土地の質や、樹木が多いのか石ころだらけなのか不毛なのか、それともそうでないのかといった土地の自然をあらわします。
4室のサインは町や君主、知事といったものをしめします。
4室は胸、肺を支配します。
色としては赤です。
4室は巨蟹宮と太陽で象徴されます。
私達は4室を地の軸、またはImmum Coeli(天底)と呼びます;
4室は女性格で、北のアングルです。
出生の占いもしくは問いに対しての占いでは、この4室は父親をあらわします。昼のチャートでは太陽が、夜のチャートでは土星が、それぞれ父親をあらわしますが、もし太陽が4室にある(夜のチャートでも)太陽の状態が悪くないなら、父親は高貴といっていい地位にあることがしめされています。

5室

5室を使って、子供、大使、妊娠中の女性の状態、宴会、ビアホール、居酒屋、劇・演奏・遊びを、あるいは共和国の広報官、代理人についての判断をします。また父親の財産を、そして城壁で囲まれた都市の弾薬についての判断をします。
もし妊娠中の女性が男の子または女の子を生むなら、子供のまたは質問者の息子か娘の健康または病気を判断します。
5室は、人体の胃、肝臓、心臓、側面、および背面を支配し、男性格です。
色については、黒と白、またはハチミツ色と判断します。5室はサクシーデントです。
5室は獅子宮と金星で象徴されます。金星はこの5室のJoyで金星が5室にあることは、楽しみ、喜び、陽気さをあらわしています。
5室は火星や土星によって全く悪い運勢となり、火星や土星が5室にあることは手に負えない反抗的な子供をしめします。

6室

6室は、召使と女中、召使としての料理人、豚、羊、ヤギ、野ウサギ、ウサギ、より小さい家畜の気質、などに関係し、それらがもたらす利益や損失にも関係しています。さらには病気に関係していて、その種類、原因、人体を傷つけること、治療可能か、または治療可能でないこと、長期にわたって闘病するのか短期ですむのかをしめします。
6室は日雇い労働者、テナント、農夫、羊飼い、豚飼い?、牛飼い、兎飼いに関係しています。
そして、6室は叔父または父の兄弟姉妹を意味しています(北斗柄注:4室父親から見ての3室兄弟宮であるから。)。
6室は下腹部、腸から尻までを支配します。
この6室は女性格でケーデントです。不運なことに上昇宮と座相を持ちません。
関係する色は黒です。
火星はこの室で再度JOYとなりますが、6室は処女宮と水星で象徴されます。
私達は、この6室で火星と金星が合していると、通常よい医師であると見ます。

7室

7室は質問者の男女や未婚、既婚に関わらず結婚についての判断を与えます。他には、全ての愛情問題、公衆の敵、訴訟での被告、戦争における反戦派、口論、決闘、訴訟、占星術における占星術師自身、投薬における医師、男女の別なくまた実際に盗んだかどうかとは無関係に泥棒と窃盗、妻、恋人、そして妻や恋人の顔かたち、人となり、状況、生まれが高貴なのか下賎なのかといったことについての判断に使用します。
その年の春分図における7室は、戦争か平和なのかに関わらず、戦争に勝利するのか、誰が乗り込んでくるのか、亡命、逃亡、消滅、国外から起こす訴訟といった事態に陥る最悪の誰かを表します。
7室は天秤宮と月で象徴され、土星と火星が7室に入室することは結婚において良くない意味を持ちます。
7室のあらわす色は、暗黒です。
7室は臀部、へそからお尻までを支配します。7室は男性格です。7室は西のアングルと呼ばれています。

8室

8室では死亡したか死んだ人の地所、その地所の自然、死んだ人の遺志、遺産、遺言を見ます。他には妻の才能(おそらくは財産と訳すべき)や(遺産の)女中の取り分の多寡、入手が簡単か困難か等を見ます。
決闘において、8室は相手の介添人を表しています。他には訴訟における被告の友人を表します。
それ以外に人の死の状況を表します。そして精神的な恐怖と苦痛も表します。(遺産を受け継ぐことで)喜ぶであろう相続人も表します。
8室はプライベートな部分を支配します。
色についていうと、緑色と黒です。
8室は天蝎宮と土星で象徴されます。痔疾、結石による疾患、排尿時の痛み?(デボラ・ホールディングの注釈による)、毒、膀胱は8室が支配しており、8室はサクシーデントで女性格です。

9室

9室から、航海または海を渡る長い旅について判断します。また、その位階に関わらず宗教人についての判断も行います。他には夢、幻視、外国、本、学習、教会生活、または寺に与えられた禄、聖職授与権についても判断します。(デボラ・ホールディングの注釈によれば)(妻を表す7室から3番目の室であり、その配置から)逆に、妻の親類関係を判断します。
色でいえば、緑色と白です。
人体では、お尻、腰周りと太腿を支配します。
9室は人馬宮と木星で象徴されます。そのため木星がこの9室にあることは、普通は信心深い人や謙虚な人であることを表しています。不運にもドラゴン・テール、火星、土星がこの9室にあると、質問者は無神論者や極端なセクト主義者より少しましな程度でしかないということが、しばしば観察されました。
この9室は男性格で、ケーデント、そして太陽が再度JOYとなります。

10室

一般的に10室は具体的に王、王子、公爵、伯爵、裁判官、首長、都市か軍隊かに関わらず最高司令官を表します。すべての種類の長官、権威のある士官、母親、名誉、昇進、威厳、オフィス、弁護士、人が使うものの取引、または取引をする職業、等を表します。また10室は、王国、帝国、公国、郡を意味しています。
色でいうと赤と白を色で、膝と太ももを支配します。
10室は Medium Coeli(天頂)または Midheaven と呼ばれていて、女性格です。
10室は磨羯宮と火星で象徴されます。木星か太陽が10室にある場合は、この室に大きな幸運をもたらします。
10室に土星またはドラゴン・テールがあると、通常は名誉を否定することになりますが、それは高貴な身分の場合です。庶民であれば世間から評価されないことですし、職人であれば自分の仕事に喜びを見出せないということになります。

11室

11室は、友人、親交、希望、信頼、信用、他者からの賞賛または非難を表しています。友人の忠実さ、または間違いも表しています。王についていうと、11室は王のお気に入り、評議員、召使、王の仲間または同盟国、王のお金、国庫または宝物を表します。戦争についていうと、11室は弾薬と軍人を表します。11室は廷臣その他を表し、貴族と少数の民衆より制御された社会的富についていうと11室は議会による補助を表します。ロンドンについていうと、10室が国王を表しているので、11室は議会を表し、ASCはその都市の民衆を表します。
人体でいうと11室は足首を支配します。色でいうと11室はサフラン色または黄色を支配します。
11室は宝瓶宮と太陽で象徴されます。
木星は11室でJOYとなります。
11室はサクシーデントで、男性格であり、美徳では11室は7室、4室と等しい。

12室

12室は、私的な敵、魔女、馬、雄牛、ゾウ、その他の大型家畜、悲しみ、苦難、投獄、全ての苦悩、人生をの取り消し等を象意に持ちます。そして12室は隣人を意地悪に徐々に蝕むような人、また隣人を密告する人を表しています。
12室は双魚宮と金星で象徴されます。
土星はこの12室のJOYです。それで土星はイタズラの作者となります。
12室は人体では足を支配します。
色でいうと緑です。
12室はケーデントで女性格です。ケーデントの室がそう呼ばれるように、12室も時々『既昇室(cataphora)』と呼ばれることがあります。

これが(テトラビブロスに記された)プトレマイオスの教義と私自身による数年かけての実験による、幾つかの室(house)についての正しい特性です。私はここで、アラブ人が幾つかの異なるハウス分割法を作り出したということを告白しないわけにはいきません。しかしながら、異なるハウス分割法で私が説明することがなかったものは私の実占において全く使用する必要はありませんでした。

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