何度でも、同じ速度で 2024年9月22日の日記
2024年9月22日、日曜日。午前9時。堕落しきった生活のせめてもの歯止めのようにけたたましく鳴り響くアラームを止めれば階下から家族の声と微かに焼き鮭の香りがした。
夜中のラジオの多幸感を引きずったまま、夢にカラオケが出てきそうだなんて思いながら眠りについたような気がするが、なんの夢も見なかった。そんなもんかとまだ働く気のない頭で考え、いつものようにタオルケットにくるまってTwitterを開く。クリアでない思考の中で少しずつ朝のツイートに追いつき始める。昨日のゆごじゅり深夜カラオケ良かったよな~、あ今日冠の放送日か楽しみだな~、北斗くん映画単独初主演か~…ん?北斗くん映画単独初主演ですか!?!?!?!?
一気に目が覚めた。ベッドから跳ね起き、しばし画面を見つめる。好きな映画29本発表アイドルのアー写の北斗くんがこちらを見ている。心なしか震える手でニュースの記事をタップする。まだ覚醒しきらない脳がキャッチした情報は「秒速5センチメートル」「新海誠」「北斗くんで見たいですね。」の3つで、夢なのかもしれないと思った。好きなひとのお仕事やライブが決まっているなんとも都合の良い夢を見ることがよくあるので。それを掻き消すように鳴るスヌーズを止め、夢見心地のままいつもの5倍速で相変わらず服をびしょびしょにしながら顔を洗う。焦って出した冷水でいよいよ目が覚めた気がする。
すごいひとを好きになったんだなぁと洗濯されてふわふわになったタオルに顔を埋めながら実感する。はやく記事をちゃんと読まなきゃと雑にスキンケアを済ませて階下に駆け下り、家族へのおはようもそこそこにまたスマホを開く。記事に目を通してどうしようもなく好きだという感情が込み上げるあの感覚にはいつまで経っても慣れることはないのだろう。というか慣れたくはないな。各社の記事に書いてあることはどれも似たり寄ったりだけど、ふわふわとした幸福感に手を引かれるように幾つも読んだ。
どうしたって食欲が湧かないこの季節にしては珍しく、朝からパクパクといつもより美味しい心地のする鮭と白米を軽快に口に放り込んだ。
北斗くんが繋いだ縁の話をしよう。北學を読んだあとだからというわけではなく元々自分の思想にあることとして言うが、これは「北斗くんがこういう道筋を辿ったからこの作品がこういう風に出来上がるんだ!」という話がしたいというわけでは全くなく、「北斗くんのことが好きな者として、北斗くんのアイドルとして表現者として表舞台に立つ歴史の話をして勝手に浸りたい」というだけであり、北斗くんの功績にコメントするわけではない。松村北斗という人生の物語の美しいところを読者視点で語りたいだけだ。
新海さんは「人生の不思議さ」という表現をしているけれど、私はそもそも縁って不思議なものだよなぁと思う。目には見えない繋がりをよすがにする、ということは信頼であり期待であり、なんだか大きな愛であるなと感じるから。それが北斗くんを取り巻くようにいろんな方向に伸びていて、点在していたよすがが少しずつ繋がって星座を描くように北斗くんの人生を彩る。ともすればひとつの小さな星として北斗くんの周りにぷかぷかと浮かぶだけになりそうな縁が大きな星座を描き続けるのは、やはりその真ん中にいるのが北斗くんだからなんだろう。目に見えないからどこまでがそのよすがが描いたものなのか分からないけれど、それでも北斗くんが今まで作ってきたものが無関係なわけはないと思うから、だから私にはあなたとあなたを取り巻く星座がいっとう愛おしく思えるんだ。
私は北斗くんのアイドルとしての歴史を途中からしか知らなくて、それは時々すごくもどかしい。こんなに好きだけどもうどうしても巻き戻せない時間があって先人の言葉からしかそれを感じることができないことは少し寂しい。
だけどそんなのどうだっていいかと思えるのは北斗くんが丁寧に、まっすぐに、時々心配になるほどに無防備に、こちらにその豊かな胸の内から言葉を選んで伝えてくれるからだ。私が大好きな素敵なアイドルはいつだって言葉にすることを蔑ろにしない。伝えようとたくさんたくさん言葉を紡いでくれる。誰と比較してというわけでは全くないけれど、北斗くんがくれる言葉の量はとても多くて、かつそれが煮込み料理のような丁寧さをもって私たちに表れているんだなぁと思う。
きっと北斗くんの立場になったら当たり前に誰でも感じるであろう避けようのない、重くのしかかって目を逸らそうにも逸らせないものからの圧に、柔らかに怯えを見せる北斗くんが、それでも踏み出す人だということがとても好きだ。私は何度だって北斗くんに「自分なんか、みたいなことを思わないでください!!!!!!」と叫ぶ用意はあるけれど、北斗くんが色んなものを前に頭を抱えて迷ってそれでも最後にぐいっと顔を上げて歩み出すところが大好きで、そうするためにはきっと過ごしたであろう悶々とした時間が不可欠だったと思うから、だから私はその迷いまで含めて愛おしいなぁと感じる。
自分の中の宝物みたいな存在について言及するとき、いつも得体の知れない感情が胸をチクチクと刺す。好きなアイドルの話をするときも、好きな作品の話をするときも、仲のいい友達の話をするときも。自分が言葉にすること、自分のフィルターを介して大切な存在を象ることでその存在が少しでも歪められてしまうことが怖いから。だけど好きだなと思うことは素敵なことだから、なんとか言葉にしてみたい、そう思う。上手くいくことは少ないけれど、そのチクチクとした痛みのような刺激は嫌いではない。願わくば同じ宝物を一緒に覗いて一緒に喜びたいじゃん、と思うからだろう。だから相手が興味を持ってくれたらとてつもなく嬉しいし、チクチクが緩やかに溶けるような心地がする。
だけど私も大概面倒な人間だから、わかったような口を利かれたり、「あ~はいはいあれね、いいよね」みたいな反応をされたりするととてもムーっとする。私はそれがとても好きで、大切で、ちょっと雑に触ったら壊れてしまいそうだからこんなに丁寧に抱きしめていて、それでもそれについて分かることなんてほんの少しなのに、どうして誰かの大切にそんなに土足で踏み込めるのだろう。君が今「いいよね」の四文字にぞんざいに詰め込んだ「良さ」が私の脳内にはもうずっと掴めそうで掴めない位置にたくさん立ち込めていて、その末端を取り出して慎重に選んで伝えようと思っていたのに。
……いけない。実体験が邪魔してきた。私の運の問題か統計的な問題かは知らないが、世の中には人が好きなものをこうやって扱う人間が結構いる気がする。自分の運の問題だと信じたいのでこういう人に出会ってしまうと「ッッあ~~~ついてない!!」と思うことにしているけれど、だからこそ私は誰かの好きに土足で踏み込みたくないし、なるだけ意識しようとは思っている。同じように自分の好きを誰かに強要もしたくない(私のツイートの主語は大抵「私」でしかない)。
なんの話だ?そうだ、北學。なんとなくここに詳細な内容を書くことは憚られるから書かないが、9月22日1回目のとうこう、「僕はメンバーのこと~大切にします❗️」辺りのお話だ。
圧倒的に「アイドル」なのに、好きなものを慈しみ大切に抱きしめている姿は、私たちと同じようでひとりの人間として素敵だなと思う。北斗くんにとってメンバーやこの作品がそうであることもまたとても嬉しいし、やはり私はその好きに簡単に触れてはいけないと感じる。「アイドルとオタク」としての距離感だけでなく、人間同士の距離感として、適切な感度でいたい。私はこの作品に触れたことがなくて(来年秋までには触れる予定だけど)、たまたま北斗くんが出るから知った作品で、知ったように語ることはきっと原作を読んでもアニメを観てもしたいと思わない。誰かの宝物から漏れ出る光をそっと、私も味わわせていただこう、くらいの気持ちだ。
北斗くんへの好きを綺麗に言語化できる未来なんてきっと来ないけれど、せめて北斗くんのことが好きだという話をするときにあなたに恥ずかしくないように生きたいなと思っている。
ちらっと前述したが、私は今のところこの作品に触れたことがない。私はそういうことが多いなぁと思う。好きなアイドルや俳優さんが他にもいて、彼らが演じる作品について私は基本的にいつも知らない。この世には星の数ほどの作品があって、それを網羅しようというほうが無理な話だが、話題になっていた作品の監督だ、脚本だ、あの原作だ、そういった作品の広がりをいつも掴み損ねている気がする。少しだけ悔しいけれど、それ以上に楽しみになる。まだ知らない楽しいエンタメが待っているんだ、と思うことはとても幸せだ。北斗くんが教えてくれる作品たちもそうだ。どう足掻いても追いつくことのない北斗くんとの9つの歳の差、そこから(だけじゃないけど)生まれる教養や知識の差。もどかしい日もあったけれど、今はそれも嬉しい。もとより付き合いたいとかそういう好きじゃないんだからということも手伝って、先に人生を進むひとが標識のように教えてくれるそういう存在があること、そういう時間に生きていることが、些細なことかもしれないが今の私にはなんだかとてもとてもかけがえのないことに思える。
北斗くんの丁寧さが好きだ。故に不器用なところも、繊細なところも、全部大好き。北學の内容には触れないと言ったけれど、どうしても好きなところがあったからそれだけ。
私が大好きなアイドルはいつだって輝く星なんだなぁ、と脈絡もなくこの言葉を見て思った。「使命」という、ともすれば大袈裟に響きかねない言葉がなんの違和感もなく、まるで彼が産まれたときからそうなる定めだったかのように彼のもとに辿り着いているその美しさに、私は何度でも感電して、何度でもその輝きに目を細める。何度でも、同じ速度で北斗くんのことが大好きになる。
北斗くん、映画『秒速5センチメートル』単独初主演おめでとうございます!大好きなひとにとっての大切な作品は私にとってもきっと大好きで大切なものになるんだろうな。スクリーンで北斗くんが演じる遠野貴樹を観る日を楽しみにしています。今日もすこやかでありますように!
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