クワズギライ__敬遠していたSixTONESに魅せられるまで
【食わず嫌い】
1.食べたことがなく、味もわからないのに嫌いだと決め込むこと。また、その人。
2.ある物事の真価を理解しないで、わけもなく嫌うこと。
まさしく、そう。食わず嫌い。
困るなぁ。ギャップというやつは。
苦手だと思っていたものの美味しさを知ったからには、もう嫌いにはなれないじゃないか。
彼を認知したのはいつだろう。
グループの中でもあまり前に出ないポジション。
性格なのか、それとも自分の役割として敢えてなのか。
はたまた周りのキャラが立ち過ぎていて霞んでいるのか。
某番組で副社長の代わりに工務店の仕事を受け継いだ、ジェシー
かつての推しグループのメンバーの弟、田中樹
幼少期からデビュー組のバックで踊ってきた、森本慎太郎
京本政樹さんの息子、京本大我
デビュー前からなんとなく顔と名前が一致していた4人。
4人からは少し遅れたが、Hey!Say!JUMPの番組に出演している髙地優吾
とまぁここまでは何となく知っていた。
そしてあと一人。
____松村北斗
“認知”したのは彼が最後だった。
しかし、“認識”したのは彼が最初だった。
イケメンというよりハンサム。
アイドル顔というより俳優顔。
最初は『「あんちゃーん」で有名な、あの俳優に似ているな。』だった。
実は、中山優馬 w/B.I.ShadowやNYC boysのメンバーとしてCDデビューしていたこと、紅白にも出ていたこと。
両グループとも音楽番組で何度も見ていたし、彼のことも目にしていたはずなんだけど。まったく記憶にない。
2009年。そうか。ファン卒した年だ。熱が冷めた頃か。
意識してジャニーズの面々を見ることがなくなった頃か。
完全なるすれ違いなのか。
彼の入所から11年。
私がジャニーズから遠ざかって11年。
2020年の1月22日。ついに彼を“認知”することとなる。
2グループ同時という前代未聞なデビュー。大々的なプロモーション。
音楽番組にバラエティー番組に数々の名立たるメーカーの広告塔。
いやでも目に入る“SixTONES”の文字。
その衣装や雰囲気からかつてのあのグループの姿が重なった。
苦い思い出が黒い雫となり、胸の奥に一滴のシミをつくる。
気づけば浅い呼吸をしていた。
6人の中でも、ひと際冷ややかな目元。無表情。無口。愛嬌のなさ。
それでいて、惹きこまれるような甘い低音。特にソロパートの最初の一文字、歌い出しに色香が漂う。
思えばもう、この時にはすでに彼の香りに翻弄されていたのかもしれない。
映画が好きでよく見に行く。
その日も何かの映画を観に行っていて、本編が始まる前の予告で流れた「ライアー×ライアー」少女漫画原作で義理の姉弟のラブストーリー。
初めて彼が演技をしていることを知った。
同じ時期に放送が始まった「レッドアイズ」はたまたま録画したままで見ていなかった。
そういや出てたな。見てみるか。
そんな軽い気持ちで、初めて彼を“認知”したうえで彼の演技を見た。
なんだなんだ。この振り幅は。
歌い手の時とは180度違う顔。
演じている役のキャラクターも相まって、ワンコ感というかなんというか。表情がころころよく変わる。クールな印象が強い彼の“俳優”としての顔を知った瞬間だった。
ドラマは1クール必ず何かは見ていたのに、なぜか彼が出ていた過去作品は綺麗に避けたように、かすりもしていなかった。
その頃「ライアー×ライアー」の公開が近づき、番宣のためにメディアの露出が増え、主題歌となっている「僕が僕じゃないみたいだ」をよく耳にするようになる。
ジャニーズといえば、ドラマや映画に出演しているメンバーがその主題歌のメインを張るという構図がお決まりだったりする。
この、通称「僕僕」も例外なく、映画「ライアー×ライアー」の主題歌であり、主演の彼がメイン。
歌い出し___
思わず顔を覆っていた。これはやばい。
息を吸う音から始まり、憂いを帯びた表情とどことなく儚さを感じる低音ボイス。
力を抜いた伸びやかな高音と息の成分多めの力強い低音。
地声とファルセットのスイッチングが心地いい。
複数の歌い手がいるグループの歌割は、最初の歌い出しを担当する歌声、歌い方がその曲の世界観を作り出すから、安心して任せられる人にソロパートを振るという。
見事に曲の世界観を捉え、自分のものにし歌いきっている。
彼の、甘くどこか人をうっとりさせるような香りがする独特の低音ボイスにはうってつけの楽曲ではないか。
色気、セクシーというより、色香。
色気やセクシーは異性を惹きつける性的な魅力であるのに対して、色香はあでやかな顔や姿という意味がある。
私の解釈は、色気が異性に期待してあえてアピールするもので、色香は相手がその人の内面から感じるもの。
花は自身で子孫を残すことは困難なため、甘い香りで蝶をおびき寄せ花粉を運ばせるように、彼はもちろんアイドルだから、ファンを魅了させるために表情や仕草を演じているのかもしれない。
でも私には、ふわっと香るコーヒーの香りのように、ただ淹れるときに自然と香るだけで。街の中でその香りが鼻をかすめると思わずコーヒーショップに足が向いてしまうような、彼の歌声にはそんな魅力を感じる。
ちょっと気だるい感覚もまたいい。
ただただ楽曲の世界観を届けよう。その純粋な思いが、自然と憂いを帯びた表情や歌声に表れているのだと思う。
彼の歌声にはいつも香りを感じるように思っていたのはこれだったのか。
彼を“認識”した。
そこからはもう早い。YouTubeのチャンネルやSNS公式アカウント、ラジオと彼らの魅力を知る手段が容易く手に入る時代。
“ジャニーズ、SixTONESの松村北斗”の知識が増えていく。
そこで「うやむや」を知り、きょもほくを知り、意外や意外、二枚目だと思っていた彼のいじられキャラを知る。不憫=松村北斗と言われてこれがお決まりのポジションだということに衝撃を受けることになる。
なんなんだ、このギャップは。
彼に限らず、このグループは一体何なんだ。
抜群の歌唱力やパフォーマンスにも驚かされたが、それは序の口で。
歌衣装を脱いだ彼らはあまりにも世間、パブリックイメージとかけ離れているではないか。わちゃわちゃした男子校ノリ。思わず二度見してしまう程のスキンシップの濃さ。距離感。
一人がボケても、それが寒気がするようなスベリ方でも、必ず回収して笑いにする。
決して嫌な思いをする弄り方ではない。弄られるほうもそれを楽しんでいる。誰も置いてけぼりにしない。
相手を尊重する気持ち、信頼関係の上で成り立っていることがよくわかる。
メンバーのことが大好きなんだな、このグループが大好きなんだな。
そして、teamSixTONESのことを大切に思っていることをちゃんと言葉で伝える誠実さ謙虚さ。
自信と謙虚。
相反するようなものを6人が6人とも当たり前のように持っているなんて最強過ぎではないか。
そんな彼らに出逢ってしまった。
食わず嫌いだった。
もっと早く彼らの味を知りたかった。
いや、ここが彼らと私が出逢う最良のタイミングだったのだろう。
これからの、6つの原石が光り輝く世界が、6つの音が奏でる世界が楽しみでならない。