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平和の鐘と唱題 741 死者と生者

■2024(令和6)年8月13日 741 死者と生者
(動画の2:48~)

 今日は8月13日。日本では、多くの地域で盆の入りに当たります。

 お盆というのは、亡くなった方々の霊がそれぞれの家にお帰りになり、各家でその霊をお迎えして数日間を共に過ごして、16日にお見送りをする。そのような、死者と生者が共に過ごすことのできる、不思議な数日間であります。

 ウクライナでの戦争が2年半。ガザ地区での戦争がおよそ10ヶ月。その間、兵士や無辜の市民を合わせて数十万人の人たちが非業の死を遂げました。そして愛する家族を、恋人を、友人を亡くして、悲しみのどん底で苦しみながら今も生きている人たちも沢山います。

 なぜ人は死を悼むのか。それは時間が不可逆だから。常に過去から現在、そして未来への一方向にしか流れないから。だから人は……

(通過する電車の音で12秒間中断)

……この世界で肉体の命を終えたならば、その肉体が再び蘇ることはないのです。

 けれども、仏様の教えでは輪廻転生を言います。肉体は滅びる。しかし、その人をその人たらしめていたもの──ここでは仮に魂と呼びましょう──魂は続いていて、必ずまたこの世に何らかの形で生を受ける。そのように輪廻をするからこそ、私たちは死者を悼み、死者に回向供養をし、その死者がやがてこの世界に生まれ変わる時に、苦しみのない安らかな生を得られますようにと祈るのです。

 仏教とは違う宗教の世界の人たちは、お盆という期間の意味についてなかなか受け入れられず、さらっと聞き流してしまうかもしれません。けれども、愛する人を亡くす辛さ、悲しみ。それは文化の違いを問わない筈なのです。

 この法華経寺は、すぐ庭先にJR山陰本線が走っています。先ほどお話をしている最中に電車が通りかかり、ご法話を中断しました。山陰地方は人口の極めて少ない地域です。ですから電車は大抵2両編成、いつもならあっという間に通り過ぎていきます。しかし、今の電車の音は4両かそれ以上、いつもよりも長い編成であったことに気付きました。お盆には都会に出ていた人たちが故郷に戻ってきてご先祖様をお迎えする、まさにそのような時期であるのだということを、さきほど電車の音を聞きながら深く深く感じていました。

 ウクライナ、ガザ、その他世界中の様々な紛争・戦争の地域で、せめてひとときでも、今生きている者と亡くなった愛する人たちが出会い、共に安らかな時間を過ごすことのできる、そのような日が訪れることを、私は心から願っています。そしてその先に、殺し合いのない平和な世界が訪れることを願って、本門八品上行所伝本因下種の南無妙法蓮華経。

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