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北海道のむかし昔38 釧路湿原の丹頂鶴

釧路湿原の丹頂鶴

丹頂鶴のことをアイヌはサロルンカムイ(湿地にいる神)という。

昔、手負の熊が湿地に逃げ込み、息たえて倒れるときに、一羽の鶴を下敷にして死んでしまった。
下敷きになった鶴は、苦しさのあまり鳴き続けたので、村人が集まってきてみたら、一頭の熊が死んでいたので、熊の居場所を知らせた神として祭りあげサロルンカムイと呼んだ。

この鶴は昔から野生ではなかった。
アイヌの祖先キラウコロエカシ(角を持った長老)が雄雌(おすめす)二羽の鶴を飼っていたが、孫のカネキラコロエカシ(金の角を持った長老)の代には数多く殖(ふえ)ておった。

その時代、千島のクルンセ族が国後、根室を陥し入れ釧路にせめてきたので、厚岸、北見、十勝の部落からも援軍が参戦して激戦となった。
この時、不運にも味方から裏切り者が出て、手薄になってた砦はたちまち攻め落とされてしまった。

いつも湿原で遊んでいる鶴が、夕暮れ砦に帰ってくると、砦を占領していたクルンセ族は手当たり次第に矢を放ち射落し殺して食べてしまった。

砦の堕た知らせに、釧路軍は兵の主力を返してクルンセ族を追い払って砦を取り戻したが、戦が三年もの長きに続いたので、ついに鶴は砦を恐れてこなくなり野生化してしまったということです。

                                                                           更科源蔵 アイヌ伝説より

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