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産業保健師のやりがいを感じた話①

-急病人対応
企業の中ではいつ体調不良者が発生するか分からない。わたしが勤務する企業は社内に1万名程社員さんがおり、軽症~救急車要請・AED使用レベルのケースを入れても非常に多くの対応件数が発生する。多くて月に20件、緊急用PHSが鳴り対応した時もある。ここでは産業保健師として緊急時の対応に難しさを感じたことややりがいを感じたことを紹介できればと思う。

-急病人対応の内容
急病人対応の内容としては、軽症ケースは嘔吐・嘔気・発熱・ケガによる出血。PHSが鳴り電話トリアージをした上で現場へ駆けつけ対応する。
よくあるケースとしては、業務や人間関係による負荷で失神・痙攣・過呼吸なども多い。
重症ケースは心筋梗塞や脳卒中など。実際にAEDを使用する場面も1年に1回程発生している。

-病院と企業の違い
病院に勤務していた時には、必要物品が手元に揃い、患者さんの既往歴など事前情報がある上で対応することができた。
現在はPHSが鳴ったその場で得られる情報のみで現場に駆け付けるため、社員さんの状態把握をし処置・判断する難しさを感じる。「病院だったらあれもできるし、これもすることができるのに・・」というもどかしさを感じる事も多い。実際に急病人対応用のバッグに入っている物はバイタル測定用の血圧計・体温計・SpO2モニター、軽いけがの処置用キット程度である。

-マインドセット
企業での急病人を対応する上で必要とされることが、「しかるべき人に報告をしているか」という点が求められる。看護師としてではなく、保健師としてするべきことのマインドセットができるまで半年程度かかった。
急病人が発生し救急車を要請する場合など、現場の上長・人事・救急隊・警備員などに短時間で連絡を取る必要がある。チャットやメールや電話を駆使し、最も効率よく対応ができた時には保健師として連携の役目を果たせたかな、と感じることができる。

-好きな言葉
大学生の時、看護を学んでいる時に、「看護の”看”という文字は、”手と目”でできており、”護”という文字には”身(人)を守る”」という意味があり、「看護とは、”手と目で人を見護ること”を象徴した言葉である」と学んだ。
大学病院では「見て触れて感じる看護」をモットーに、オーストラリアでAINとして勤務していた時にも、タッチングを心掛け患者さんのケアを行った。

-寄り添うこと
ある日社員さんが急激な腹痛で動けないという問い合わせを受け現場へ駆けつけた。身の置き所のない異常な痛みのためすぐ救急車を要請。バイタル測定をした上で救急隊到着までに社員さんの背中をさすり、アナムネをしながら救急隊到着を待った。当時保健師なりたてのわたしは「もっと何かしたいのに・・」という思いを持ちながら、無事搬送された後も「もっと何かできたはず・・」という不完全燃焼の思いが残った。
後日社員さんとばったりすれ違い、鼠経ヘルニアであったことを聞き、今度オペをするとの事であった。「背中をさすってもらえてすごく安心した」という言葉を頂き、何もできていないという思いでいっぱいだったわたしは救われた気がした。その経験からやっと保健師として企業でするべきことはなんだろうとマインドセットすることができるようになった気がする。

-いまできる事
企業での急病人の対応はできることが非常に限られ、看護師と保健師の間で気持ちが葛藤することもある。しかし場所が変わろうと、寄り添う事や触れる事のパワーはどこにいても感じる事ができる。その思いを忘れず社員さんの気持ちに寄り添った保健師でいられたらと感じている。


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