【裁判例】RKコンサルティング事件④歩合の計算は自由なのか(国際自動車事件)

1.意識高すぎる質問

令和2年3月30日に労使問題に取り組む弁護士であるなら皆注目している国際自動車事件最高裁判決があった。

某顧問先より、「国際自動車事件最高裁判決で、歩合給より一定額控除する給与体系が無効であると判断されたと聞いたが、RKコンサルティング事件でも同様の給与体系であるように思ったが・・」という質問があった。

2.国際自動車事件の概要

国際自動車事件は、歩合給の計算に当たり、対象額から「割増賃金(残業代)」等を控除するという給与体系を採用していたが、この控除の有効性が争点となり、無効であると判断された事件である。

ちなみに、国際自動車事件は、第一審東京地裁判決、控訴審判決、上告審判決まで行き、破棄差戻となり、再度、上告された結果の上告審という極めて異例な事件である(下記経緯)。そして、国際自動車事件は当事者を異にする別事件として、第四次事件まである(本件は第一次事件)。

国際自動車事件

国際自動車事件においては、歩合給の計算において、歩合給の計算から割増賃金を控除することの有効性であり、時間外労働が増えれば増える分、歩合が減るという仕組みであった。

これとは別に割増賃金は払われているが、その分歩合が減ることになる。

つまりは、売上げ(国際自動車事件はタクシー会社なので、「揚がり」)が変わらない以上、一定額まではいくら残業しても給与が変わらないという仕組みであった。

これが、労基法37条の趣旨から、「割増賃金」と「通常の労働時間の賃金」とを「判別」できないとして、無効であると判断された事例である。

3.RKコンサルティング事件との比較と歩合計算の制限

RKコンサルティング事件では、歩合給から控除されていたのは、基本給相当額であり、割増賃金相当額ではない。そのため、国際自動車事件で問題となったような、「割増賃金」と「通常の労働時間の賃金」が判別できるか=「割増賃金が支払われているか」という争点ではなく、あくまで歩合の計算の問題であったということである。

そのため、注意が必要なのは、歩合の計算であるから何を控除してもよいというわけではない。

国際自動車事件で割増賃金相当額を控除する仕組みをとったのは、短時間労働で売り上げを上げさせるインセンティブを与えるためである。

このような仕組みをとるために、歩合給から割増賃金を控除するとなると、実質的に割増賃金が支払われているのか、割増賃金という名目で実質的に歩合給として支払うべき賃金を支払っていないのではないか等という点が問題になる。

その意味では歩合給の計算は自由に行えるものではない。

ちなみに国際自動車事件判決は、固定残業代等の法定外の支払い方法による有効性の指標となる超重要判例である(国際自動車事件自体は固定残業代についての事件ではない。)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?