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Trái đất này nhỏ bé!  1周回って2周目のベトナム(後編)

前編はコチラ 

 さて、その後大学院に入りましたが、結婚・出産をし、育児に追われるうちに「研究」と「家庭」の両立が出来なくなってしまいました。「もう、ベトナム語は無理かな…」と諦めていた時、「社会人教育プログラム」というITと対面授業を組み合わせた授業プロジェクトが立ち上がり、ベトナム語を担当することとなりました。語学を初めて学ぶという履修生も多く、「ベトナム語は難しい。でも、なんか面白い。」そう思ってもらうのに、私の学部時代の華麗なる失敗談の数々はとても役に立ちました。  
 その後、卒論指導のお手伝いをさせていただくようにもなり、同時に佛教大学のお仕事も始まりました。さあ、大変!卒論の題材は多岐に渡り、佛大は会話と文化の授業があります。私は「言葉」は大好きでしたが、それ以外には全く興味無し!!お先真っ暗。覚悟を決めて暗黒の世界に飛び込みました。
 ということで、猛勉強の始まり始まり~~(今さら…)。卒論のレジュメに書かれている参考文献のURLを開きまくり、資料をガサガサあさりました。指導というより、学生たちに新しい知識を教えてもらうというスタンスで臨みました。こっちはマジで必死!その反動で中途半端なレジュメを見ると「イラッ!!」としてしまい、それがストレートに顔に出てしまうので意図せず学生をビビらせてしまいました(;^ω^) 学生たちの興味の向かう先は千差万別、お陰で自分の知らなかったベトナムの様々な側面を沢山見せてもらい、論文を完成させるために私自身も学び、知識と共に「言葉」以外でのベトナムの姿を見つめることができました。そして何より、ベトナムの国、ベトナムの人々がこんなにも面白くて、エネルギッシュで、歴史や文化、民族の様々な色彩に彩られた生き生きとした鮮やかな世界の中にあることを知って、新しい知識を得ることが楽しくてウハウハになりました。それと同時にこれまで「言葉」以外に興味を持たなかったことを後悔しました。いまだに後悔しています。


 そして、その「楽しくてウハウハ」の思いが佛大で生かされることになりました。ベトナムという国のことを知らない学生が圧倒的に多いので、私の任務は「私の授業を受けた学生たちがベトナムに行きたい、ベトナムについてもっと知りたいと思ってもらえたら大成功!」というもの。ベトナムを好きになってもらうには、私がどれだけベトナムが好きなのかを伝えなければなりませんが、思いが強すぎて「授業」ではなく「トークショー」。よくクビにならないものです。ベトナムに興味を持った学生たちがベトナム留学を果たすようにもなり、毎学期の授業の最終日に「ベトナムに行ってみたいです!」「ブンチャー食べてみたいです!」と言ってくれた時は心の中で「よっしゃ~~!」です。

↓↓↓オンライン授業での一幕

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 更にその後、日本語学校の仕事が舞い込みました。ベトナム人留学生に日本の文化を絡めて日本語の表現を教えたりしました。日本人が「国語」として習う文法と、外国人が「外国語」として習う日本語文法は全く違うもので、またまた猛勉強。日本語の語彙を如何に平易な言葉で説明するかということが試されましたが、ここでベトナム語が大活躍。「自分がベトナム語で表せる日本語=自分が理解して使っている日本語」ということで、自らの母語力の確認もできました。生徒たちとは七夕飾りを作ったり、日本の正月とベトナムのテトを比べたり…ベトナムの歴史や文化、民族性を知っていると、それと比較しながら教えることができましたし、逆に生徒たちからもベトナムのことを教えてもらえました。
 ある時、ベトナムで買った好物のbánh phồng sữa(私は「ドリアンクレープ」と呼んでます)を持って行き「一緒に食べよう!」と留学生たちと分けて食べていると、一人の留学生がやって来て真っ直ぐに立ち「先生…。」と声をかけてきました。「先生、ベトナムのお菓子を美味しい、大好きって言ってくれてありがとうございます。」…ビックリしました。言葉と同じで国が違うと味覚も違いますね。私たちが美味しいと思うものでも、外国人にとってはそうではない。その逆もまた同じ。きっと、日本に来て、自分たちの好きな食べ物、美味しいと思う食べ物を理解してもらえなかったことがあったのかも知れません。なんか切ないですね。。そう考えたら、この子たちが日本で暮らせて良かった。日本に来て良かったと思ってもらえるように、もっともっと教えてあげたい、頑張ろう!と思いました。…んんんんんん??あれ???? 私、先生してるわ。あれだけ嫌がっていたのに、なんか教えてるし。「適性」かと聞かれたら、そこは今でも納得はしてないけれど、でも、やっぱり適性検査。侮るべからずですね。


 語学は相変わらず不出来なものの、いつの間にか「先生」と呼ばれることを受け入れられるようになってきた頃、当時大学生で、サイゴンのフン・ヴオン病院Bệnh viện Hùng Vươngで研修していた娘から電話が入り「明日、ドクさんに会うねん。」と言ってきました。は?ドクさん?どこのドクさんよ??「前に話してくれてたドクさん。」…は?いやいやドクさんってベトナム人、どんだけおると思ってるねん。「ドクさんだよ。え~っと、あの…双子で…。」


 うえええええええええ~~~~~~!!!!?????Σ(・ω・ノ)ノ!

 そうです。「ベトくん、ドクくん」のグエン・ドゥックさんでした。たまたま福祉関係の研究をしている学生さんがドゥックさんと会うことになり、「一緒にどうですか?」と誘っていただいたとのこと。何という偶然。「ベトくん、ドクくん」をきっかけにベトナム語の道を選んでから30年余が経ち、まさか自分の娘がドゥックさんに会える機会を得るなんて!ただただ、娘の話を感慨深く聞いていました。娘の話によると、ドゥックさんはとても親切に丁寧に質問に答えて下さり、記念撮影にも快く応じて下さったそうです。どんなお話をしたか…というのは、いつか近藤先生にディクテーションの課題として出してもらいましょうかね(#^^#)

↓↓↓娘とNguyễn Đứcさん(2018年撮影)

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 最近、改めてベトナム語の勉強を始めました。「言葉」は時代の流れと共に変化していく「生き物」ですからアップデートしていかねばと思ったのと、苦手なことに変わりはないけれど、今なら学生時代の頃よりも「言葉」を単なる研究対象や伝達のツールとしてだけではなく、ベトナム人と心から通じ合いたいと思いながら学べると思ったからです。

 …はぁ~~。30年かかりました。これに気付くまで。おっそっ!

さて、2周目のベトナム語学習のスタートです。いつか私もドゥックさんとお話が出来る日がくることを夢見ながら頑張ります。みなさんも長い人生、いろいろ寄り道しながら楽しみや目標を見つけてくださいね!

 …はぁ~~。長かったですね~~。最後まで読んでくれてありがとう!






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