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悩んだらここに戻ること:なぜ数学を選ぶか

この記事は単なる自分の心の整理のつもりで、いつか自分が読み返す用に書きました。(勢いで書いたら3000字くらいになってしまいました)
内容は「なぜ自分は数学を仕事にしたくて、他のことはそれほどに思っていないのか」についてです。


この間まで考えていたこと

僕には、やっていて楽しいことが幾つかあります。中でも際立って楽しいことは、「文字を書くこと」、「絵を描くこと」、そして「数学をすること」です。

今年、僕は24歳になります。干支が2周するのでまあまあな年齢になるんだなあと思いつつ、自分がこれからする仕事についても考え始めています。
現在僕は国立大の修士課程2年生で、博士後期課程に進学、いわゆるD進予定です。
D進する理由は次のようなものです:
・数学の中に今好きな分野があって、その研究をして、もっと分野のことを知りたいと思ったから。
・そしてそれが修士課程の今、全然満足していないから。
・どんな形であれ数学に関わる仕事をしたいと思っていて、そのキャリアとして博士号はぜひ持っておきたかったから。

理由の中に、「数学に関わる仕事をしたい」というのが出ました。
これはぼんやりながらも数学科に入る以前から思っていたことです。
掘れば少し長い話になりますが、ざっくり言えば
・数学をするのが好きだったこと
・(世に様々ある仕事の中では比較的)自分に向いているだろうと思っていた/周りにそう言われていたこと
が根拠にあると思います。

しかし、つい最近、とあることを思い直しました。
上記二つの理由に当てはまるものなら、文字書きとお絵描きもそうじゃないか?
ということです。

なぜ自分は数学を仕事にしたくて、他のことはそれほどに思っていないのか。

昔漫画家を目指していたのを、歳が上がるにつれて家族や親戚にやんわり止められたからか?
姉が通っていた造形美術校に自分も行きたいと言ったら偏差値が見合わない・私立も学費が払えないと断られたからか?
今からではキャリアを積むのに時間が掛かりすぎるし、しかも書道家やイラストレーターといった憧れの職に就くのは狭き門だからか?

多分どれも違います。
なぜなら、上二つのことはやろうと思えば自分で何とか突破できる話だったから(実際、今は数学をするために実家から離れて生活費を稼いで暮らしています)で、最後の一つは今歩んでいる数学の道も全く例外ではないからです。

最近考えて辿り着いたこと

では、なぜ自分は数学を仕事にしたくて、他のことはそれほどに思っていないのか。どれも楽しくて、人に言われなくても勝手にやって、褒められて嬉しいことなのに。

それは、数学とそれ以外の趣味に、僕自身の中で決定的な違いがあったからだと気づきました。

違いとは、「教えることで人の役に立った経験」でした。

僕は小学生のころから、他の同級生や後輩に勉強を教えるのが好きでした。理由はおそらく単純で、「運動やテキパキやらねばならない仕事で全く役に立たない自分が、他者から評価され・かつ感謝される数少ないことだったから」だと思います。
・教えることで、相手は勉強のレベルが上がる(チャンスを貰える)。
・教えることで、自身も理解が深まってレベルが上がる。相手には感謝されるし時に楽しんでもらえる。先生にも褒められる。
今まとめてみたら、なんというWIN-WIN-WINの構図でしょうか!
こんな経験がずっと積み上がって、僕は数学を、学徒としても先生としても楽しむことができるようになっていました。

一方で、文字書きやお絵描きでそういう経験はありませんでした。つまり、人に文字や絵を教えて感謝された経験がありません。
似た経験と言えば、ある人の文字が上手いなあと思っていたら、僕の字を真似しているんだと言ってもらったことがあるくらいで、これは僕が教えたことはないので別の嬉しさです。
こちらはただ単に、プレイヤーとして楽しんでいたのです。
このような「貢献して感謝された・褒められた経験」が原動力になるのは何だか子供っぽいと言われそうですが、それでも僕の中では大きなかけがえないモチベーションになっていました。

そんなことを思い返して、僕は「数学の仕事をしたいというのは、より正確には、自分自身の数学を広げ・深めながら、後続の人に教えていきたいということなのだ!」と思い直すことができました。
これは以前からぼんやりと思ってはいたことですが、はっきりと自分の心に向き合って、心の裡を再認識することができたと思います。

辿り着いてよかったと思うこと

このことに気づから、密かに心に作っていた二つの陰が少々とり払われました。

一つ目は、「数学を仕事にすること」を決断する不安です。
僕はビジネス意識も低くまあまあ呑気に生きている方なのですが、このまま博士号をとる流れに行くとして、それで後悔しないだろうか?という不安が少しはありました。
しかし、色々考えても「やっぱり将来は数学がしたい」と思えるので、今のこの気持ちを大切にして院生生活を続けていきます。
(まあ、もうちょっと危機感を持ってもいいとは少し思います……)

二つ目は、「数学以外を(とりあえず今の段階では)仕事にしないこと」を決断する不安です。
過去長い間漫画家を目指していたこともあり、「今お絵描きに打ち込まないことが将来コンプレックスとして残らないか?」は常々不安に思っていました。
ですが数学を優先したい今、冷静に自分の余裕と相談してみると、文字書きやお絵描きを仕事にできるくらいまで打ち込むのは結構キツいです。
さらに今回モチベーションとも向き合って相談した結果、むしろ数学をおろそかにしたくない!という気持ちが強いです。

これらはひとまず趣味として楽しんで、Twitterなどで投稿していこうかなと思います。
(そうしていく内にスキルアップして、いつか文字や絵のお仕事も貰えたら……とも思いますが、これはまた別のお話です)

振り返り

記事を書く中でなるべく言語化したつもりではいますが、まだできていない部分も多いということが分かりました笑

数学、文字書き、お絵描き、どれも好きなことなので、この先嫌いなこと・コンプレックスにならないように上手く付き合っていきたいとは思っています。
数学についてはなかなか難しいことを選んでしまった以上、苦しくても歯を食いしばって向き合わねばならない日が来ると思うので、その点は今後の課題です。

最後に、僕は人生で「くよくよするなら決断の結果に対してではなく、決断したか否か・決断することにどれだけ向き合ったかに対してする」ことをモットーにしています。
決断の結果は変えることができませんが、その経験の上で、この先どんな決断をするかは変えていくことができます(選択肢が亜光速ベルトコンベアに乗っていたら無理ですが、そんなのが目の前に出てきたら流石に諦めます)。
今回の話も例外ではなく、今よく考えて数学を選び・それを続けたという経験は、きっと数学を(何かしらの意味で)諦めることになっても消えないと信じています。
「あのときよく考えて選んだ道だから、これでよかった!」と胸を張れるよう、今を(のんびりしながらも)進んでいきたいです。

それではまた!


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